【自主レポート】 |
第36回宮城自治研集会 第12分科会 ほんとうの住民協働とは? ~地元スペシャルになろう! ~ |
労働組合に対する強烈なバッシングの経験をふまえ、市民とともに公共サービスのあり方を考えるため、まちに出てまちの真の姿を知る取り組みを始めた大阪市職。2007年からの大阪市の密集市街地における防災まちづくり活動への市職組合員の参画は、9年間の多様な取り組みを経て「井戸」と「せせらぎ」の完成に至った。その活動の中で見えてきたもの、得られたものは何か。本論では、この約9年間の取り組みについて振り返る。 |
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1. 活動にいたる背景と経過 (1) なぜ労働組合が地域の防災まちづくり活動に? (2) 私たちが"踏み出した"まち |
2. まちで学び・まちを知る(2007年~2010年の活動より) (1) 地域とともに防災まちづくりを学ぶ (2) もっともっとまちを知る これらワークショップの成果については、今里地域での活動開始から約1年間の活動をまとめた冊子(右)に「まちづくりのアイデア集」として掲載し、「このアイデアが、今後のまちづくり活動のヒントになれば……」という願いを込めて、2008年12月に、今里町会へ相当部数を配布させてもらった。 ② 防災まちづくりを目的とした歴史研究(2009年) これまでの活動の過程で、まちづくりコンサルタントの高橋滋彦氏の協力を得ることができた。高橋氏は、「地域のまちづくりを盛り上げるには、まちの歴史などシンボリックな『背景』が不可欠」と言う。そこで2009年より、「防災まちづくり」という目的は持ちつつ、今里のまちの歴史的なシンボルを掘り当てる取り組みを進めるため、高橋氏のアドバイスのもと、市職組合員が中心となって地域で"ゼミ"的な活動を始めることとした。 「ゼミ」では、まちの中から消えてしまった「小字」を探りあてることから取りかかった。小字名は往時の地形を表していることが多く、その位置が復元できれば、昔の土地の形が浮かび上がると考えたからである。また、それと合わせて、今里の昔のまちの姿を掘り下げる取り組みも行った。昭和初期の地籍図に、現在の地図を重ね合わせると、曲線的な道の多くは水路と一致し、いくつかの場所では、池の形状を残したまま宅地化が図られているなど、まちの基本的な形状は今でも大きく変化していないことが理解できた。さらに、このあたりは水路・池が多かったことに加え、旧大和川水系のいくつもの分流が当地付近で合流しているなど、今里のまちはかつて「水郷」であったことが分かった。 この取り組みについては、大阪市政調査会の研究員である西部均氏の協力により、スムーズに進めることができた。西部氏は、歴史地理学の研究者であることから、この手の作業は朝飯前のようだ。 その後、今里のまちの方々を招いて、市職メンバーと西部氏で研究した「今里のまちの歴史」について発表しつつ、2009年11月には、昔の地図と現在の地図を照合しながら"水郷の面影"を探して歩く、通算4度目となる大規模なフィールドワークを実施した。それらの活動の中で、当地の南側にはかなりの湿地帯があって、大正年間に干上がって宅地化が図られたことなど、地域の方からさまざまな"証言"を追加してもらうことができた。 2009年12月には、今里小学校で行われた地域のもちつき大会に、市職でブースを出展した。小字を記した昔の今里の地図を広げ、来場者に「うちの家の小字は何だ?」とやってもらいながら、昔の今里についてあれこれ教えてもらおうというのが目的だ。また、蓄音機で昭和の名曲を聴かせる活動をされている、大阪市市史編纂所研究員の古川武志さんを招き、市職ブースの横で実演をしていただいて、ブースへの"集客力アップ"も図った。このとき、おばあさんが、わざわざ家に戻って昔の写真を持ってきてくれたことが印象深い。 |
3. これまでの"学び"をカタチにする(2011年以降の活動より) (1) 自分たちで井戸を掘り、せせらぎを作ろう (2) いよいよ井戸を掘り、せせらぎを作る
② 想定外 ――「井戸の水量が少ない!」 1か月半かけて掘り進め、深さ12mを越えたところでようやく水脈に達することができた。が、しかし、当初の目論見とは異なり、湧水量が少なく、災害の際に活躍が期待される井戸としては、いささか物足りないものであった。 ③ せせらぎづくり ここまでくると、せせらぎも自分たちの手で作ることについては、誰も疑いを持たなかった。 みんなで大量のコンクリートを練り、煉瓦を積んで、2015年10月、ついにせせらぎができあがった。 2016年6月、仕上げとして、地域の子どもたちの手でせせらぎの流路にモザイクタイルで装飾を施してもらった。 せせらぎを永く大切に使ってもらうことを願い、最大のユーザーになるであろう子どもたちに集まってもらったものであるが、この作業にあたっては「関西をアートで盛り上げるNPO『A-yan!!』」の田中やんぶさんのプロデュースのもと、進めていただいた。 そして、モザイクタイルによって温かさが加えられたせせらぎを囲んで、みんなで盛大に完成を祝った。 (3) 約9年間の取り組みを経て |