1. 3回にわたる検証活動
(1) 平取町自治基本条例(2008年4月1日施行)
① 総合計画で条例制定を謳う
平取町では2005年度策定の「平取町第5次総合計画(2006年から2015年)」で自治基本条例を策定することが謳われました。ほかの町とは少し違うスタートでありましたが、役場内職員の「検討チーム」と住民参加の「つくる会」それぞれで条例策定に熱い思いを持ち作業が進みました。深夜遅くまで白熱した議論を交わしながら1年以上にわたる議論の末、策定にこぎつけました。途中、住民を巻き込んだシンポジウムや地区別説明会などを開催し、条例の実践を行うことで条文を整理していきました。特筆すべきは、役場で行われている業務を「まちづくり住民講座(びらとろん)」として開催されたことでした。「職員のわかりやすい説明と町民の的を得た質問。参加者同士の意見交換」など条例施行に向けて具体的な実践活動が行われました。
(2) 3回の検証活動(自治研レポート)
① 知らない条例(2009年 北海道自治研)
条例が施行された2008年。条例の認知度について不安を持った労働組合が、自治研活動として「知っているか・知らないか」の住民アンケートを実施しました。その結果、職員で32%、住民で56%が知らないと答え、現実の厳しさに残念な結果となりました。この「知らない条例」について、北海道自治研で報告しました。
② 食育計画(2010年 愛知自治研)
具体的な実践活動として新たな計画「食育計画」策定にあたり、条例を意識した取り組みが行われました。住民アンケートの実施、識者による講演会や計画素案でのシンポジウム、関係団体への説明と意見交換会の実施。委員会や講演会開催時の託児所の開設。さらには、計画策定には各委員の発言から文言整理を行うなど条例を丁寧に実践しながら計画が策定されました。この計画は、全道的にも稀な計画として識者からも高い評価を得ております。その愚直な取り組みについて、愛知自治研で報告をしました。
③ 森林整備計画(2012年 兵庫自治研)
担当者の異動に計画策定がついていくような形で、2011年「森林整備計画」の大幅な変更がありました。策定委員に一般公募を入れることが出来ませんでしたが、関係者へのアンケートやシンポジウムの開催。素案説明会での意見を計画に大胆に入れ込むなど、条例をトレースしながら計画の変更が実施されました。しかし、真摯に取り組む職員がいる一方で、条例を無視したような「計画」が決定されるなど、職場における条例の深化の度合いには大きな差があることも事実でした。そのような職場実態について、兵庫自治研で報告しました。
2. 原点に返った運動
自治研活動として検証活動を続ける中で具体的に取り組んだことは、①条例解説本の転入者への窓口配布、②新人職員に対する学習会の実施でした。なかなかうまく進まない状況に2013年度においては、原点に返った運動として条例を全国に広げたニセコ町にあらためて触れる(視察)、民主的な町制運営の継続から条例を生み出した逢坂誠二元ニセコ町長の話を聞く(研修)計画を実施しました。また、推進委員会全員でもう一度条例を声に出して読み直すことにも取り組みました。
さらに、行政側が条例の見直し(レビュー)を行うことに対して、2008年当時策定に関わった職員(検討チーム)と住民(つくる会)のメンバーとの意見交換会にも取り組んできました。見直しのPDCAサイクルを回すということは、まずは最初に関わった人に「現状をどう見るか」話を聞くところからスタートすべきと判断しての取り組みでした。
(1) 職員研修(行政側主催)
例年、総務課が主催する職員研修に自治研推進委員会(労働組合)から要請し、元ニセコ町長逢坂誠二さんに「あらためて自治を考える」と題して講演をしていただきました。過去、職員研修会は8割以上の職員が参加していましたが、最近では3割程度の出席しかなく低迷していました。多くの職員の参加で「触れて・聞いて」から始まる意識改革を期待しましたが、参加率は39%と残念な結果となりました。
逢坂さんからは「民主主義とは、多様な価値の中から結果(結論)を導き出す。そのプロセスが大事。結果として、納得性を高めることである。自治の原点は、自ら考え行動すること。課題解決にはその過程が大事である」と教えられ、参加者はあらためて自治の原点に返ることができました。
その夜、3年目になる「自治基本条例新人職員学習会」(組合主催)にも逢坂さんの出席が得られ、条例の思いについて、新人と推進委員会のメンバーは貴重な話を聞くことができました。
(2) ニセコ町視察(推進委員会主催・行政側参加)
条例第6条で謳う「情報公開」と「情報の共有」のツールとして、「ファイリングシステム」について現場を直に見ることからはじめようと、先進地ニセコ町の視察研修を行いました。この研修は、推進委員会(労働組合)として提案し、総務課職員も参加しました。労働組合と当局が同じ目的で行動を共にするということは、今まで当町では考えられませんでした。条例の実践で「ファイリングシステム」導入が必要であるという認識だけは一致していました。しかし、その後は予算化をすることも無く、研究会を立ち上げる雰囲気も無く、当局の参加はポーズ、「言い訳」でしかありませんでした。
片山ニセコ町長から「ニセコまちづくり基本条例ポケット版」を片手に、①自治体職員の仕事は公共課題の解決、②政策意思形成過程において住民の意見を取り入れる住民参加、などについて90分にわたり講演をしていただきました。特に、職員の資質向上のため、研修に多額の予算を投資している点に、ほかの町との違いをあらためて感じるものでした。
3. アンケート結果や意見交換会で見えたもの
(1) 町民アンケートの結果から
① 認知度の比較
条例施行直後の2008年と、施行6年後の2014年では、「知っている」と答えた割合が45%から26%へと、認知度が低下しました。条例施行直後は、町民の関心も高かった事や、条例の制定にあたり「つくる会」の活動や、各種の住民説明会が活発に行われていた事で、町民の条例(名称や内容等)に対する意識が多かったためと考えられます。その一方現在では、自治基本条例を意識する機会が減少しています。この間、推進委員会では、職員研修の一環として条例を取り上げたり、転入者に対して解説書を配布するなど一定の活動を行ってきました。しかし、全町民に対する啓発普及活動までは実行できませんでした。
年代別では、2008年は50~60歳代で最も高かったのが、2014年は60~70歳代が高いことから、認知度のピークがただ単にスライドしていることがわかります。40歳以下、とりわけ20歳~30歳代における認知度は依然として低くなりました。条例は行政と密接に結びついており、行政への関心度や接点が多い者程、見聞きする機会が増え認知度が高まります。若年層における認知度の低さは、裏を返せば行政への関心の低さとも言えます。 |