【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 八雲町職労では、主に地域イベントの協力や環境美化活動などに参加する取り組みを継続して行ってきています。本レポートでは、そうした取り組みの中で実施したアンケート調査の結果から、私たちが組合員として、さらには役場職員として、どのように地域と関わっていけば良いのか、見えてきた課題について報告します。



役場職員としてもっと地域に関わる
―― 地域活動を通して見えてきた課題 ――

北海道本部/渡島地方本部・自治労八雲町職員組合 中村 達哉

1. はじめに

 八雲町職労の自治研活動は、「できることからやってみよう」を合言葉に、地域イベントの協力や環境美化活動を中心に行っています。
 自治研活動においては、手本となる活動を展開されている単組がある一方で、自治研活動の意義についての理解や具体的取り組みのきっかけ作りで悩む単組も少なくは無いと感じています。八雲町職労においても、地域社会において、市民運動としての労働組合の存在感の発揮や住民との交流を通じた労働組合への理解度のアップをめざすところを理念としています。一方で、これら町職労の取り組みが住民に対してどのように映っているのかなど、具体的に測定する機会も設けていないなど、自己の取り組みへの検証も行ってきませんでした。
 単組では、専門部の一つである政治法対部が自治研の担当部局となっています。政治法対部の主な任務は、反戦・平和の活動、政治闘争関連活動、自治研活動となっており、実際には、政治闘争関連活動へのウエイトが大きくなっています。自治研活動へのウエイトは、決して大きいものではありませんが、前述した「できることからやってみよう」を合言葉に、自身の身の丈に合った活動を継続しています。

2. 実際の活動

(1) 「ドン」の実演
 「ドン」とは、米やトウモロコシなど穀物を専用の過熱圧力機械を用いて作る菓子のことであり、製造過程において大きな破裂音が鳴り響くことが名称の由来とされているようです。地域によっては、ポン菓子、ドン菓子などとも呼びます。
 その昔は、八雲町の農村集落においてドンが家庭向けの菓子として製造されていましたが、現在ではほとんど目にすることができなくなっています。
  八雲町職労では、八雲町内で生産されブランド化の取り組みが行われているもち米「風の子もち」を使い、主に、町内で開催される2つのイベントでの催事としてドンの製造実演を行っています。砂糖で作った素朴な味わいと香ばしい香りに、子どもだけではなく、昔を懐かしむ年配の方々からも好評を博しており、町内の方を中心に地元産品のPR・地産地消を推進する機会としても取り組んでいます。


圧力が一定の高さに達したら、 ストッパーを
勢いよく叩きます。
  「ドン」という大きな音とともに菓子が
完成します。

(2) 「JR八雲駅前花壇」の環境整備・アンケートの実施
 八雲駅前は、十数年前の街路整備事業により、街路環境が飛躍的に向上しました。一方で、花壇を想定して作られたスペースには長年雑草が繁茂し、ハード面での住環境の向上にソフト面が追い付いていない状況でした。八雲駅前は、八雲町のメインストリートの中心に位置する町の玄関口であり、また、町内最大のイベントで北海道三大あんどん祭りに位置づけられた"八雲山車行列"のフィナーレ会場にもなっています。
 数年前から、駅前花壇スペースの荒廃を憂う声が町内で高まり、行政、各種団体、個人がともに協力し、花の苗植えから雑草除去等の管理、開花シーズン終了後の後片付けなど一貫した作業を行っています。
 八雲町職労は、初年度においては資金面での支援としていましたが、2年目以降は、各種団体等とともに実際の作業に参加することとなりました。月に数回、組合員が輪番で苗植え、雑草除去・ごみ拾い、後片付けに参加しており、各種団体等の方々とともに汗を流しながらコミュニケーションを図っています。
 花壇整備作業に当たっては、八雲町職労として参加していることをアピールする媒体(組合旗など)を特に用いていないため、一緒に作業に勤しむ町民は、労働組合の組合員として参加しているという認識を持ってくれていないのではと感じていました。また、八雲町職労という組織が町民にどのように認識されているかについても非常に興味があったことから、参加団体に対し、八雲町職労に対するイメージなど簡単なアンケートを実施することとしました。
 実際のアンケート内容は、難解な設問を避け回答しやすい内容とし、参加の7団体に回答を依頼しました。日頃、町民に対してアンケートを行う機会もなかったことから、形式やサンプル数は度外視し、まずはやってみようの精神で取り組みました。4団体からアンケートの回答があり、回答結果は下記のとおりとなりました。

Q1: 八雲町職員労働組合は、八雲町(自治体)で働く職員で構成される「労働組合」です。
    あなたは八雲町職員労働組合が普段どういった活動をしているか知っていますか。

よく知っている まあまあ知っている 知らない

Q2: あなたは、組合員の駅前花壇整備への関わり方(働きぶり等)について、どのように感じていますか。

満足している 不満である(不足している) どちらともいえない

Q3: Q2で「2.不満である(不足している)」と回答された方は、具体的にどのような取り組みを期待しますか。ご自由にお書きください。

回答なし

Q4: 組合では、組合員の賃金や労働条件の維持・向上に関わることだけではなく、組合員もあくまで八雲町民の一住民であるという意識のもと、各種イベントでの「ドン」の実演・無料配布など地域活動にも積極的に関わることとしてきました。また、駅前花壇整備は1回目の整備から参加してきました。あなたはこれまでの組合の地域活動に対して、どのような印象をお持ちですか。

満足している 不満である(不足している) どちらともいえない

Q5: Q4で「2.不満である(不足している)」「3.よくわからない」と回答された方は、今後、具体的にどのような取り組みを期待しますか。ご自由にお書きください。

回答なし

Q6: その他、組合に対してご意見・ご要望などがありましたら、ご自由にお書きください。

・日頃、職務ご苦労様です。全ての労働組合とはかなり変わり、庶民的で受けが大変良いと思います。
・仕事以外の町民との関わりをもっと多くして、町づくりに頑張っていただきたい。
・運動が、活動がよく見えなくなりました(現状に満足しているのかな?)

3. アンケート結果から受け止めたもの

 サンプル数としては極めて少ない結果となりましたが、回答内容で特筆すべきは、内容Q6(その他)に記入された意見です。
 まず「仕事以外でも町民ともっと関わって」という点については、八雲町職労に対する意見というよりは、あくまで「役場職員」として地域に出ていく機会が少なくなっている点への指摘ではないかと捉えています。
 町職員の町内会や青年組織など地域活動との関わりは、十数年前に比べて積極的な参加が薄れているのではないかと感じています。特に、若い世代において顕著であるように感じています。
 原因のひとつには、近年、地元出身者以外の採用が多くなり、一町民として地域活動へ関わるきっかけを作りづらい環境にあることが挙げられます。また、職員側だけではなく、地域活動組織の側も積極的に声をかけてはいないのではないかという点もあることと思います。
 また、ここ数年続けられている職員数の圧縮により、職員個々が担わなければならない業務量が増えている実態から、定時退庁もままならない環境では、地域活動に向かう余裕が無いことも理由の一つとして挙げられます。
 ただ、一つ言えることは、町職員がもっと地域に飛び出して、多くの町民とのコミュニケーションを通じて、町民の幸せのために一緒に汗をかいてほしいとういう素朴な町民の思いを受け止めなければならないことです。町職員である前に、一人の町民である意識を持ち、地域とどのように関わっていくのかを今一度考えていく必要があると感じました。
 また、「運動がよく見えなくなった」という点については、「過去と比べて」という視点で記入いただいた意見であると捉えています。労働組合の活動に対して肯定的な立場が前提の意見と受け止めましたが、言い方を変えれば「昔は運動がよく見えていた」ということになります。
 昨今の景気低迷を背景とし、政治の道具として公務員バッシングが声高に叫ばれる中、特に小規模自治体においては、官公労の活動の見せ方(見え方)について神経質になるあまり、労働組合の地域社会での主体性や存在感が薄れている現状を指摘した声であると認識しています。

4. むすびに~地域活動・市民運動としての労働組合の立ち位置

 アンケートの回答サンプル数から言えば、傾向の把握としての成果と成り得ていませんが、"職員がもっと地域に飛び出してほしい""労働組合の活動が見えにくくなった"という2つの声は、率直に受け止める必要があります。
 少子・高齢化や過疎化が進む中、地域には課題が山積しています。少子過疎化の進行は、担い手不足に直結し、地域の祭や伝統芸能といった文化の継承が途絶えるきっかけとなります。加えて、身近な地域の環境美化にも手が行き届かなくなる傾向が見られます。
 また、少子・高齢化だけではなく、核家族化や共働き家庭の増加により、働き盛りの世代は、仕事・子育てに追われて地域になかなか目が行き届かなくなっている状況にあること、また、高齢世代では、独居高齢者世帯の増加、老老介護、地域からの孤立や孤独死といった課題も以前に比べ顕著になってきたことなど、世代ごとに抱える社会的な課題も浮き彫りになってきています。
 これら課題の解決に向け、自治体職員として日々業務に向き合っていますが、行政の取り組みだけで課題が解決できないことは言うまでもありません。
 八雲町は、2010年4月1日に八雲町自治基本条例を施行し、協働のまちづくりを本格的にスタートさせました。行政だけではなく、自立した様々なセクターが互いに連携し、補完し合うことを通じて、八雲町の自治を発展させていかなければならないところです。職員には、その旗振り役を担うことが求められており、アンケートの意見にもあった"職員がもっと地域に飛び出す"ことを実践していく必要があります。
 自治研活動には、町職労として地域に組合員が飛び出していく、そのことによって、地域課題の解決を促していく可能性を秘めていると感じています。
 もとより、労働組合は、地域社会の中で市民活動・市民運動の担い手としての立ち位置を明確にしてきました。社会経済の構造変化や時代の潮流により、労働組合の運動そのものも変遷してしかるべきと思いますが、今一度、その立ち位置を明確にする必要があります。
 多くの国民は、我が国を取り巻く状況の変化、とりわけ最近では、エネルギー政策や安全保障政策には大きな不安を抱いています。これらマクロ的な課題に対して世論を喚起し、行動することはもとより、ローカルな課題に対しても果敢に立ち向かい、解決に向け行動していく必要があります。
 今回の結果から、自治研活動に対して当初課題であると感じていた「何をやっていけばよいのか」という点は、実はそんなに重要な課題ではなく、むしろ「どういう意識をもってやっていくのか」という点にこそ課題があったのだということに気がつくきっかけとなりました。「なぜ地域に出ていくのか」「地域で何をしていくのか」「地域がどういう姿になることを望むのか」という、つまりは「役場職員としてどう地域で働き続けるのか」という課題を、一人ひとりが意識していかなければ、結果「自治研活動とは何なのか」という疑問から、抜け出すことはできないのでしょう。現状では、一部の役員が汗をかき、事業をこなしている実態にありますが、「意識の面で」大衆的な取り組みに変化させていかなければ、ともすれば「自治研活動を行っている」という既成事実作りで終わってしまいます。「継続は力」を合言葉に、組合員がもっと積極的に地域に飛び出していき、労働組合も協働のまちづくりの一翼を担っていけるよう、工夫を重ねながら粘り強く取り組みを進めることを改めて決意するところです。
 これら活動を政治闘争に振り向けていくことも、自治研活動の大きな果実の一つであると考えます。町民に信頼される八雲町職労組合員というフィルターを通して、私たちが最大限信頼できる政治家を住民に見てもらうこと、つまりは、組合員を通じて町民の理解を勝ち取ることで政治闘争に勝利していくことを視野に入れることも含め、今後の取り組みを進めていきます。
 以上、報告といたします。共にがんばりましょう。