1. はじめに
我が国の通信環境の分野が、歴史的大転換を迎えたのは、1985年(昭和60年)のことです。
1980年代、世界を見渡すと、米国のレーガン、英国のサッチャー、ソ連ではゴルバチョフが、いずれも自由主義的政策を唱え、日本でも中曽根政権が、1985年(昭和60年)に通信自由化(次いで国鉄民営化も)を実現しました。
自由化以来、固定式電話が移動式へ、有線接続が無線接続へ、ナローバンドからブロードバンド(高速・大容量)へと、通信環境は進化を続け、インターネットやEメールが一般に普及しました。
そして、2000年を過ぎ、今度は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の時代が幕を開けました。
今後、インターネット、さらにはソーシャルネットがますます広がりを見せていく中で、これからのコミュニケーションは、どのようにあるべきなのかを検証します。
2. 通信環境のうつりかわり~スマートフォンの世帯普及率6割を超える~
総務省が毎年実施している通信利用動向調査によると、通信機器の世帯保有状況として、スマートフォン(多機能携帯電話)の2013年末(平成25年)の世帯普及率は62.6%となり、前々年末の29.3%、前年末の49.5%から、さらに大きく伸びています。
初めてスマホを調査項目に入れた2010年末(平成22年)は、わずか9.7%であり、驚くほど急速に普及が進んでいることが分かります。(図表1)
今でこそ、スマホやタブレットといった端末が珍しいものではなくなりましたが、ひと昔前までは、通信といえば固定電話という時代が、約100年もの長きにわたり続いていました。
それが、通信自由化からわずか30年で、通信環境はめまぐるしく変化し、発展してきたのです。(図表2)
図表1 主な情報通信機器の普及状況の推移(世帯) |
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図表2 通信環境の変遷 |
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3. インターネットからソーシャルネットへ
1990年代後半になると、インターネットの発達により、ヤフーなどのポータルサイトや、グーグルなどの検索サイトが、身近な存在として利用されるようになりました。
職場や家庭にパソコンが導入され、インターネットを使うことが、ごく一般的なこととして定着し始めました。
このときのインターネットの使用感覚は、「コンピュータ」と「コンピュータ」が繋がり合っているイメージ、いわゆる、人格のない機械同士が繋がり合っているイメージでした。
2008年のiPhoneの発売により、スマートフォンの普及が進み、それと前後して、mixi、Twitter、Facebook、さらにはLINEなどの、ソーシャルネットワークサービスが、瞬く間に浸透しました。
インターネットが「コンピュータ」と「コンピュータ」をつなぐサービスだとしたら、ソーシャルネットはコンピュータの中にいる、「人」と「人」をつなぐサービスだといえるでしょう。(図表3)
図表3 インターネットサービスとソーシャルネットサービスの違いイメージ |
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4. 武雄市が、市HPを廃止してFacebookに?
2011年8月、佐賀県武雄市が、市役所のホームページを廃止して、Facebookに移行した! というニュースが全国を駆け巡りました。当初、このことについては、Facebookをやっていない人を排除するのか、などの批判的な意見が大勢を占めていたと記憶しています。
しかし、この表現には大きな誤りがあり、正しくは、市役所の「単体」ホームページを、Facebookページに一体化させたものでした。
Facebookページの中に、市のホームページをきれいに格納し、それまでのホームページの機能は維持しつつ、さらにFacebookの機能を取り入れるという、画期的な取り組みだったのです。(図表4)
図表4 市のホームページが整然と配置された、武雄市のFacebookページ |
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5. Facebookは、コミュニケーションの最強ツール
2014年4月、武雄市のFacebookページが3万いいね! を達成しました。このことが、どういうことを意味するかというと、人口5万人の武雄市に、3万人の口コミ応援団がいるということです。
ホームページの情報は、検索して見てもらわなくてはいけません。誰が見ているかは具体的には分かりませんし、そこから情報が広がることは期待できません。
一方、Facebookページからの情報は、いいね! の応援団に自動的に配信されます。そのうちの誰かが、いいね! やコメントをしてくれることで、それは数珠つなぎに拡散していきます。
Facebookは、実名制ですから、誰がいいね! をしたかも、誰がコメントしたかも分かります。無責任な炎上発言の心配はいらないのです。
Facebookのことをよくご存じないというかたには、Facebookの創始者マーク・ザッカーバーグの「メッセージ」をいくつかお読みいただけると、そのイメージがつきやすいかもしれません。
・僕がフェイスブックをつくったのは、世界をよりオープンで、皆が繋がり合える場所にする、という使命を果たすためです。
・人々が情報をもっとオープンに交換するようになれば、世界はもっと良い場所になります。フェイスブックはその実現を助けます。
・これまでは、人々を繋ぐことが中心だったが、次の5年から10年は、出来あがったこの繋がりの上に何を作れるかが問題になるのです。
・フェイスブックでは、『ハッカーウェイ(ハッカー精神)』という独自の企業文化を育ててきました。これは、『最初から完璧をめざさず、こまめに修正、改善を繰り返すやり方』です。
・シリコンバレーの本社オフィスの壁に書かれた『完璧よりとにかく実行を』という言葉を見ては、この姿勢を忘れないようにしています。
・我々は、『速く動いて失敗せよ』『リスクをとらないことが最大のリスク』という言葉を肝に銘じています。
・『皆が驚くことをしたいね。楽しく生きて行くためにね』
とはいっても、顔写真を載せるのはちょっと……、実名制なんてとんでもない……、という声もあるのも事実です。
そこで私たちは、2012年に、Facebookの正しい理解と普及促進をはかるために「秋田Facebookいいね! 同好会」という市民団体を立ち上げました。(https://www.facebook.com/groups/akita.like/)(図表5)
現在、会員数は1,100人を突破し、地域の繋がりの、一大グループとして地域貢献に尽力しています。
こうした市民団体とも上手にお付き合いすることが、これからの行政には必要なことだと思います。
図表5 「秋田Facebookいいね! 同好会」のグループページ |
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