【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 組合執行部では、これまでの賃金交渉で「自分たちの賃金の一部を地元事業者への消費に向けさせるため、職員に地元商店街で使える商品券などの購入を呼びかけてはどうか」と訴えるなどしてきた。その後、このことを実際に事業化できないか、組合内で本格的に検討を開始。地元商工会議所や市内各地域商店街との提携も視野に入れ、取り組むことにした。



秋田市職連合「組合員手帳クーポン券事業」について


秋田県本部/秋田市職員連合労働組合 佐々木俊樹

1. 本事業の実施に至った経緯

 近年、秋田市当局は組合との賃金要求・交渉の場において、特に賃金水準の維持・向上について「地域民間の現状からして、容易に理解が得られない」という答弁に終始し、水準据え置きにさえも躊躇することが常態化していた。
 組合執行部では、これまでの賃金交渉でも「自分たちの賃金の一部を地元事業者への消費に向けさせるため、職員に地元商店街で使える商品券などの購入を呼びかけてはどうか」と訴えるなどしてきた。その後、このことを実際に事業化できないか、組合内で本格的に検討を開始した。
 事業を計画するにあたり、地元商工会議所や市内各地域商店街との提携も視野に入れ、取り組むことにした。その結果、当組合の趣旨に賛同いただいた「あきた共通商品券協同組合」の協力を得ることができ、組合員の福利厚生と併行した事業として開始するに至った。
(あきた共通商品券協同組合の概要)
所在地:〒010-0921 秋田市大町1丁目2番7号
商品券事業開始:平成6年10月30日
加盟店舗数:446
※ポイントカード「ほっぺちゃんカード」
事業は平成8年5月24日開始
(ほっぺちゃんカード加盟店舗数:229)


2. 事業概要・目的

 秋田市職連合では、2010年から「組合員手帳」を作成、配布している。
 (2014.5.1時点の組合員総数1,828人、組織率98.1%)
 2013年版から、あきた共通商品券協同組合の協賛により、組合員手帳に秋田市内の「ほっぺちゃんカード」加盟店(協賛店)で使える500円分のクーポン券を掲載した(上記参照)。
 目的は、「組合員の福利厚生向上」と、「郊外大型店の買い物客を呼び戻し、地元地域の商店を元気づけ地域経済活性化に取り組む」ことを主眼に置いた。
 また、組織的に、労働組合も地域経済の活性化に積極的な関わりをもっているとの意識づけや、地域を活性化するためのカンフル的役割を担わなければならないこと、地域貢献に積極的な参加を促す動機づけとなることも想定したものである。
 本事業開始にあたっては、地元新聞(秋田魁新報)誌上でも紹介され、「地元商店を訪れるきっかけとなる取り組み」として記事が掲載された。

3. 事業開始後の実績について

 2013年は、利用期間を2月1日から5月31日までに設定。初年度の利用実績は508枚(配布枚数の約26%)であった。
 同年6月13日には、利用実績を踏まえ、あきた共通商品券協同組合役員との意見交換会を実施した。協同組合側からは、「各地域の商店からは感謝の言葉が寄せられている」との報告があった一方、利用実績が低かった要因として「クーポン券が手帳に綴られていて利用しづらいのではないか」「金額が少額」等の意見が述べられた。
 本事業は2014年も継続実施することとし、協同組合側との意見交換内容を踏まえ、①クーポン券(500円)を2枚に増額、②利用期間を2月1日から6月30日まで拡大、③手帳からの切り離しを容易にするためミシン目を入れるなどの改善・充実をはかった。
 また、本事業を事業主・組合員双方に周知するため、ステッカーを各協賛店に配付し、店頭に掲示してもらうこととした。
 事業実施2年目では、協同組合側からも新たな組合員向け特典として「ほっぺちゃんカード(注1)」協賛店での買い物の際「ほっぺちゃん」ポイントを2倍進呈していただくサービスを提供していただいた。
 これらの改善・サービス拡充等の結果、2014年度は利用実績1,680枚(配布枚数の約43%、前年比約17%増)となっている。
 協同組合側からは、各店舗から「普段来店しない組合員がクーポン額面以上に購入してくれ、利用期間中の売り上げアップにつながった」との声も寄せられた。


4. 地域・組合員へ与えた影響と今後の課題

 本事業により、2014年に秋田市職連合の全組合員がクーポン券を利用した場合は、約200万円が地元商店で消費されることとなる。実質的に「管理職を除くほぼすべての秋田市職員」である当組合員が、少額ではあるものの地元事業者向けに積極的な消費活動を行うことで、地域での新たな消費が生まれ、活性化に向けた事業を展開したことは少なからず影響があったものである。
 また、協賛の「あきた共通商品券協同組合」側からも、事業開始当初から活性化につながる取り組みであり、加盟商店から「ありがたい」との意見をいただいている。
 組合員からは、「自分の住む地域にこんな業種の店があったのか」「せっかくなので行ってみたら以外と良いモノがあった」等々、地域民間業者の認知につながるなどの反響があった。
 取り組みを開始してから2年目の事業であるが、現時点でもまだ全組合員からの利用には至っていない。今後も事業主・組合員双方への周知、理解が行き届くよう引き続き取り組む必要がある。また、同時にクーポン券利用の有無にかかわらず、継続して地域の商店・事業主を積極的に選択してもらうための動機付けを行っていく必要がある。
(文末に本事業の業種別・地域別利用実績資料を掲載)


5. まとめ

 秋田県内をはじめとする多くの地方自治体においては、全国あるいは国外資本の商業施設の相次ぐ進出やインターネット通販等の普及により、地元資本の百貨店や小売り業者が大きな打撃を受け続けている。
 秋田市も例外ではなく、駅前をはじめとする中心市街地での地元商業施設の相次ぐ撤退や廃業がみられる。商店街から店舗自体が消え、店舗跡の空き地がどんどん増え続けていくその様子は「シャッター街」どころかまるで「空襲後の焼け野原」のように感じられる。
 バブル期以後のデフレ経済下において、特に地方では「地域給」の導入によって公務員賃金水準が実質的引き下げを余儀なくされたことにより、この流れがそのまま地域内での経済規模の減退につながったと考えられる。自治労秋田県本部では、この実態を客観的なデータにより視覚化し、地域民間レベルに訴える取り組みを行ってきた。
 その結果、一部の公共サービス民間労組等に対しては、我々の取り組みに一定の理解を得ることができたが、他の民間企業や個々の住民レベルではまだまだ理解が進んでいないとの実感があった。
 当然、秋田市当局側でも地域経済や中心市街地の活性化に向けた様々な施策を講じている。最近では、「エリアなかいち(注2)」整備事業を通じ、中心市街地への集客・にぎわいづくりを行うなどの取り組みにより、一定の成果がみられる。一方で、民間労組からは依然として、「地元商店や中小事業者は景気回復を実感できていない」との声が聞かれる。
 このような流れを生み出したのは、やはり地域全体の賃金水準低下が大きな要因ではないだろうか。
 今回の地域活性化事業が、地域商店を元気にし地域経済好転の一助となり、相乗効果として実感できるようにしなければならない。
 今後は、公・民を問わず、本クーポン事業の取り組み趣旨が地域全体に理解され、広がりが出てくることによって、本格的な公務・民間職場双方の賃金、労働条件の底上げを通じ、地域経済規模の縮小に歯止めがかかる契機となることを期待したい。




(注1)ほっぺちゃんカード
 加盟店での買い物の際、このカードを提示すると、購入金額100円ごとに1ポイントを発行。4ポイントでほっぺちゃん1マークがカードに印字され、400ポイント(ほっぺちゃんが100マーク)でカードがいっぱいになる。
 400ポイント貯まったら、「満点カード」として100円のプレミアムが付き、1枚500円として加盟店での買い物に利用できる。
 詳細はこちらで http://www.hoppe.or.jp/index.html

(注2)「エリアなかいち」
 秋田市の中心部に位置する千秋公園周辺の施設や広場の総称。旧日赤病院跡地周辺を再開発し整備した。秋田市にぎわい交流館AU(あう)、秋田県立美術館のほかに商業施設などがある。各施設の運営は民間事業者(美術館は指定管理者)が管理。
 詳細はこちらで http://akita-nakaichi.com/


(参考資料)
2013年版 秋田市職労組合員手帳クーポン券利用ランキング

業種別回収割合【店舗数】 業種別回収割合【枚数】

 

 

店舗数

1

食品【菓子・弁当・茶・酒 他】

20

2

日用品【家電・文具・書籍・雑貨 他】

11

3

衣料品【服・靴・バッグ 他】

6

3

暮らし【クリーニング・生花 他】

6

5

装飾品【時計メガネ・宝飾 他】

5

6

美容【ヘアサロン・化粧品 他】

4

7

健康【医薬品・リフレッシュ 他】

2

 

合計

54

 

 

枚数

1

食品【菓子・弁当・茶・酒 他】

396

2

暮らし【クリーニング・生花 他】

41

3

日用品【家電・文具・書籍・雑貨 他】

25

4

装飾品【時計メガネ・宝飾 他】

18

5

衣料品【服・靴・バッグ 他】

12

6

健康【医薬品・リフレッシュ 他】

9

7

美容【ヘアサロン・化粧品 他】

7

 

合計

508


利用地域回収割合【店舗数】 利用地域回収割合【枚数】

 

 

店舗数

1

土崎・飯島

11

2

大町・通町・横町

9

3

秋田駅前

8

3

牛島・茨島・仁井田・御野場

8

5

広面・手形

7

6

山王・川尻・旭南

5

7

八橋・高陽

3

7

新屋

3

 

合計

54

 

 

枚数

1

八橋・高陽

137

2

山王・川尻・旭南

135

3

大町・通町・横町

91

4

広面・手形

47

5

土崎・飯島

42

6

秋田駅前

40

7

牛島・茨島・仁井田・御野場

13

8

新屋

3

 

合計

508


 

加盟店回収ランキング ベスト10

店舗数

枚数

1

菓子舗榮太楼

5

104

2

ミート&デリカ 一力

1

68

3

酒の英雄

1

55

4

秋田郷土菓子司 勝月

2

39

5

花徳

3

27

6

光月堂

2

23

7

かおる堂大町店

1

18

8

お茶の辻吟

3

17

8

おかしの千秋庵

1

17

10

モン高砂堂

1

15

2014年版 秋田市職連合組合員手帳クーポン券利用ランキング
※支店がある店舗は本店で一括精算。

業種別回収割合【店舗数】 業種別回収割合【枚数】

 

 

店舗数

1

食品【菓子・弁当・茶・酒 他】

19

2

日用品【家電・文具・書籍・雑貨 他】

15

3

衣料品【服・靴・バッグ 他】

7

4

暮らし【クリーニング・生花 他】

5

4

装飾品【時計メガネ・宝飾 他】

5

6

美容【ヘアサロン・化粧品 他】

4

7

健康【医薬品・リフレッシュ 他】

2

7

飲食店【レストラン・居酒屋 他】

2

 

合計

59

 

 

枚数

1

食品【菓子・弁当・茶・酒 他】

1,326

2

暮らし【クリーニング・生花 他】

136

3

日用品【家電・文具・書籍・雑貨 他】

96

4

装飾品【時計メガネ・宝飾 他】

39

4

衣料品【服・靴・バッグ 他】

39

6

健康【医薬品・リフレッシュ 他】

27

7

美容【ヘアサロン・化粧品 他】

14

8

飲食店【レストラン・居酒屋 他】

3

 

合計

1,680


利用地域回収割合【店舗数】 利用地域回収割合【枚数】

 

 

店舗数

1

大町・通町・横町

13

2

土崎・飯島

10

3

牛島・茨島・仁井田・御野場

7

3

広面・手形

7

5

秋田駅前

6

6

山王・川尻・旭南

5

7

新屋

4

7

八橋・高陽

4

9

田沢湖・角館

2

10

河辺

1

 

合計

59

 

 

枚数

1

山王・川尻・旭南

561

2

八橋・高陽

423

3

大町・通町・横町

275

4

広面・手形

151

5

土崎・飯島

124

6

秋田駅前

95

7

牛島・茨島・仁井田・御野場

31

8

新屋

12

9

河辺

4

9

田沢湖・角館

4

 

合計

1,680


 

加盟店回収ランキング ベスト10

店舗数

枚数

1

菓子舗榮太楼

5

307

2

酒の英雄

1

281

3

ミート&デリカ 一力

1

250

4

秋田郷土菓子司 勝月

2

135

5

花徳

3

104

6

おかしの千秋庵

1

69

7

モン高砂堂

1

54

8

光月堂

2

50

9

かおる堂大町店

1

48

10

いせまつ

1

44