【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 2014年度自治労新潟県本部自治研集会において臨時・非常勤職員課題についての作業グループを作り、新潟県内における各自治体保育園の状況について、中間検証を行ってきた。「保育園職場における臨時・非常勤職員」等の現状・課題・問題点について報告し、今後のあり方について問題提起するものである。



自治体の臨時・非常勤職員の実態とあり方
―― 保育園職場での実態調査における現状報告と課題 ――

新潟県本部/自治研推進委員会・第4分科会

1. 保育園職場における臨時・非常勤職員について

(1) 県本部保育部会組織実態調査結果
 この調査は、県内の各自治体から選出されている県本部保育部会幹事へ調査を依頼し、23の自治体から回答を得ました。
① クラス担任を受け持っている自治体は、1自治体を除き、臨時が20、パートが7です。また、2自治体が無資格者といえどもクラス担任を受け持っています。
② 正規と同様に経過記録などの事務作業を行っている自治体は臨時・パート問わず13です。また、無資格でも何らかの事務作業に携わっている自治体は3です。
③ クラス担任を受け持っているためか懇談会や個人面談などにあたっている自治体は18です。また、無資格でも懇談会に参加している自治体は1です。
④ 臨時が教材発注や伝票整理などを行っている自治体は2です。また、実習生の指導に関わっている自治体は12ですが、パートや無資格も関わっている自治体は2です。
⑤ 仕事のやりがいについての問いでは、「どちらかというと不満である」と回答した自治体は5、「不満足」は2ですが、クラス担任を持たないパートが「どちらかというと不満」を感じている自治体は4となっています。
⑥ 賃金に「満足している」自治体は1ありますが、無資格臨時からの回答です。また、「どちらかというと不満である」は8、「不満足である」は5となっており、合わせて13自治体です。クラス担任を持たないパートも「どちらかというと不満」を感じている自治体は3あります。
⑦ 雇用条件が「当然だと思う」に回答した自治体は1、「制度上仕方がないと思う」は5、記載がないが12、合計18自治体です。
⑧ 仕事の業務量を「現状のまま」あるいは「減らすべき」と回答した自治体は9です。
⑨ 他の臨時保育士との「交流」に前向きな回答をした自治体は8であるのに対し、「参加したくない」と回答をした自治体は0です。意見交換の場があれば参加したいことが伺えます。
⑩ 臨時職員の労働組合が「必要である」と回答した自治体は1ですが、ここはすでに結成されています。また、「必要ない」との回答も1ありますが、同じ自治体の「仕事のやりがい」や「賃金、雇用期間」などの回答を見ると「不満」を感じています。
⑪ 自由記載欄を見ると正規・臨時がそれぞれの立場で間逆の意見を主張していますが、「正規と臨時とのコミュニケーションが大切だと思う。お互い意見を言える雰囲気が必要。」とありましたが、現場のさまざまな実情や雰囲気を的確に捉えた意見であると言えます。
⑫ 自由記載欄に「臨時保育士を募集しても有資格者がいない」とありました。今回の調査では詳しく分かりませんが、多くの自治体で無資格者を採用している要因は有資格者不足であり、隣の自治体同士や公立・私立で有資格者を奪い合っていることが推測されます。
⑬ 今回の調査結果を見ますと、ほぼすべての自治体で非正規雇用といえども正規職員と同様にクラス担任を当たり前のように持たされ、事務作業や保護者対応、実習生の受入れなど行っている状況です。しかし、非正規雇用は保育業務に対するやりがいを見出している反面、雇用への不安や賃金への不満を感じていることが伺えます。政府や自治体は、生命と安全を確保しながら保育する現場に対し、手厚い予算措置を早急に講じ、社会福祉の充実を図る必要があると実態調査をまとめます。


(2) 県本部保育部会の取り組みについて
① 保育部会(正規職員)における取り組み課題(議案書より転記、下線は非正規職員課題)
【保育部会の取り組み】
  ・保育士一人一人が労働組合意識を持ち、運動に参加し学習と交流を深め、労働強化・合理化を許さない闘いにつなげていきます。
  ・部会活動の継続・活性化のため、幹事の任期は2期2年を原則に進め、3役選出は輪番制度を運用し、保育部会幹事体制の確立を図ります。
  ・新たな保育制度導入を見据え、幼稚園を含めた部会のあり方について検討します。
  ・確定期に「保育統一要求書」を作成して取り組むとともに、各単組においても独自要求書の提出を進めます。
  ・非正規職員の実態把握に努め、処遇改善と組織化に向けて取り組みを進めます。
  ・労働時間厳守・連続週休二日制・休憩時間の確保にむけての取り組みを進めます。各単組での保育部(会)の設立を進めるとともに、県本部・単組での保育集会・学習会を開催します。
  ・子育て政策の動向に注視しながら、子どもの権利や育ちの保障を基本とした保育のありようを検討し、公立保育園の存続と充実に向けた運動を進めます。
② 正規職員との関連(保育部会議案書より転記)
  ・幼保一体化や認定こども園への移行課題
  ・質の高い保育を行うための職場改善と正規職員の人員確保
  ・正規職員と同じ任務・業務を担っている非正規職員の実態があり、非正規職員の業務の見直しと処遇改善、組織化への取組
  ・保育職場における時差出勤、会議・行事などでのサービス残業、一日の労働時間延長につながる実態が多くなっている。振替休日のため代替保育士が確保されず、連続した週休二日制の確保が困難になってきている。また休憩時間を事務時間に当てたり、休憩のための代替職員がいなく休憩時間が取れない実態がある。
  ・非常勤部会の動き
   → 長岡市職労 正規職員と臨時職員の交流、学習会、部会たよりの発行
   → 柏崎市職・佐渡市職・五泉市職・魚沼市職・燕市職  アンケート調査・組合説明会
  ・非正規職員の実態把握に勤め、処遇改善と組織化に向け取り組む。

(3) 各自治体における保育園での臨時・非常勤職員構成比
① 新潟県内の28自治体の非正規率平均をみると193%です。正規1人に対し、約2人が非正規化になります。この非正規最高率は350%、最低でも61%となっており、平均値を上回る自治体が16もあり、300%を超える自治体は2となっています。
② 1園あたりの正規職員配置状況をみると平均は6.2人です。最高は9人、最低が3.1人という状況です。平均を上回る自治体は28自治体中14です。逆に1園あたりの非正規職員配置状況をみると平均が9.7人となっており、最高は23人、最低が2.5人となっています。平均を下回る自治体は28自治体中15です。この内容を分析すると、A園数や児童数に応じて配置している自治体(1園あたりの正規の配置が比較的多い自治体は非正規の配置も比較的多い。1園あたりの正規の配置が比較的少ない自治体は非正規職員の配置も比較的少ないなど)、B財政的に非正規化している自治体(1園あたりの正規の配置が少ない自治体は非正規の配置が多い)、C極一部になりますが、正規職員は配置基準等で保障されている(1園あたりの正規の配置が比較的多い自治体は非正規の配置が少ない)の3つに分類され、正規・非正規問わず労働強化が強いられている状況です。


2. 結 び

① 臨時・非常勤職員の問題として、(ア)雇い止め(雇用期間問題)、(イ)低賃金問題(官製ワーキングプア)、正規公務員との格差があげられます。
② 正規職員削減(人件費削減)に伴う、保育行政の執行と安上がり労働力として臨時・非常勤職員の活用があげられます。
③ 定員管理に伴う人件費と、人件費に算入されない臨時・非常勤職員の賃金(物件費・委託費等)を、本来行政執行に必要な「あるべき必要経費(人件費)」としてのとりまとめが必要と思います。
④ 保育園や福祉施設・自治体病院・図書館などの公的施設で、正規公務員が削減され臨時・非常勤職員への置き換えが進められています。硬直する自治体財政の中で人件費の削減が国や自治体議会の中で求められていますが、本来公的サービスに必要な経費は税金徴収により必要額を確保することが原則であることから、現在の財政のあり方と社会的な必要経費の配分のあり方に問題があり、あるべき税財政の姿も合わせて追求していかなければなりません。
⑤ 労働基準法の最低基準が適用されない法の谷間としての非正規「地方」公務員の実態があります。
⑥ 正規職員が縮減し、臨時・非常勤職員の増加による社会の変化や歪みについて次の視点での整理・検証するのか求められます。
  ・仕事の変化(サービスの低下等)、公正な労働に対する社会的評価と逆行する労働条件
  ・ジェンダーの視点からは女性労働者が大半を占め、勤務時間や労働内容に見合わない必要以上の労働条件の格差
  ・社会保障のあるべき負担、公的サービスの負担
  ・社会の進歩に逆行する格差社会の増大
  ・官制ワーキングプア、社会の劣化
⑦ 臨時・非常勤職員のあるべき姿としては、正規職員を含めた求められる職責や労働時間に見合った適正な評価と、法的な労働条件の確立が求められます。また臨時・非常勤職員という名称ではなく、短時間勤務職員等の名称変更など、差別的な各種の実態を是正する取り組みが求められます。
⑧ 当面の取り組みとしては、臨時・非常勤職員の制度改善や政策闘争への次の取り組みがあげられます。
  ・労働条件改善に向けては、要項・要領等の改善として対雇用者(自治体当局)対応があげられます。
  ・法的改善にむけては、(ア)議会闘争として県議会及び市町村議会(各議会議員)での条例制定に向けた取り組みがあげられます。(イ)国政闘争として、支持・共闘可能な政治勢力との連携等があげられます。
⑨ 日本以外の諸外国及び国際労働機関(ILO)における臨時・非常勤職員の現状との比較検証が求められます。具体的には(ア)正規職員から臨時・非常勤職員への対応に伴う仕事の変化(サービスの低下等)、(イ)公正な労働に対する社会的評価などがあげられます。
⑩ 憲法の理念と労働の社会的評価、求められる社会体制の構築に向け、正規職員と臨時・非常勤職員(非正規職員)の格差是正が求められます。そのためには、臨時・非常勤職員がスト権を始めとする労働者の基本的な権利を確立し、その行使と社会的な影響力を自ら認識する主体的な取り組みと、それを支援する広範な労働者の連帯が改めて求められます。