【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第1分科会 住民との協働でつくる地域社会 |
3・11東日本大震災と福島第一原発の事故から、私たち公務を担う自治体職員として、また教育機関である社会教育施設の職員として、「地域とは」「暮らしとエネルギーのあり方」「意思決定のプロセス、市民参加のありかた」「人と人との絆」などを問われた日々でした。改めて、地域の住民と社会教育職員で実践した被災地支援活動から見えてきた課題、問題等を提案したいと思います。 |
|
1. はじめに 東日本大震災当初の津波、地震、原発事故の被災地、避難所の様子などを知ることで、社会教育を担う現場の公民館職員としては、公民館の施設機能の役割、公民館で日常営み続けた地域の人々との交流、学びのあり方、支援活動で市民を支えるための工夫などを、実践を通じて再構築してきました。今回は、当初からの実践を現在まで俯瞰して、見えてきた課題、問題点を共有化できればと思い、地域住民、自治労西東京市職員労働組合と公民館の協働の一つの実践を紹介します。 |
2. 被災地福島県新地町公民館の復興支援まつりへ
2011年3月11日東日本大震災の発生を受け、6館ある公民館の一つである芝久保公民館の第29回芝久保公民館まつり実行委員会は、11月のまつり開催に当たって、例年と同じことをしていていいのかどうかと迷い、話合いがもたれました。 ここ数年継続しているまつりテーマ「出会い、ふれあい、広がる絆」に「今できること」を加えました。この気持ちを形にする方法として、「支援バザー」をすることと「体験コーナー」でチャリティ募金をすることとし、それに体験コーナーで折った折り紙を添えて被災地に届けることにしました。 「支援バザー」は、まつり実行委員会の委員、及び地元中学校の校長の協力を得て、中学生ボランティアの皆さんが担当しました。顔の見える関係の中で届けたいとの思いが実行委員会の総意でまとまり、公民館から候補地を自治労西東京市職員労働組合に相談し決定、西東京市、自治労西東京市職員労働組合、職員互助会として支援に行っている被災地の一つである福島県新地町の駒ヶ嶺公民館を通じて、被災された方に届けることができました。地域住民である公民館利用者の方々から提案された意見、アイデア。そのアイデア・想いを具体的な形にして自治労西東京市職員労働組合が繋ぎ、協力、支援を得て、公民館として新たな公共サービスを実現できたと思います。また、この活動を一過性、一方通行に終わらせることなく、継続可能な活動・双方向性を確保することこそ、私たちが担う重要なことであると思っています。 この支援は、引き続き2014年度まで続いています。また、市内の他の公民館である田無公民館、谷戸公民館のまつりでも同様に、義援金、売上金を送付することになり、着実に継続と広がりが進んでいます。 |
3. 新地町・生涯学習フェスティバル参加
2012年2月24日、25日に被災地福島県新地町「しんちまち生涯学習フェスティバル2012」に、芝久保公民館まつり実行委員会委員長、副実行委員長、そして公民館職員、及び被災地支援活動として西東京市職員労働組合の委員長及び特別執行委員の合計5人で参加してきました。2011年11月の芝久保公民館まつりでの復興支援バザーの支援金で購入した西東京かりんとう、コーヒーメーカーなどがまつり当日大活躍しました。復興支援カフェなど、いろいろなコーナーが開催され、町民の方々には、大豆雛と折紙をプレゼントして、お互いが楽しく時を過ごし、「絆」を深めました。 |
4. 支援の継続と広がり ~持続可能な活動・市民レベルの交流・相互に学び合う~
持続可能な支援活動に繋げるためには、一部の職員、一部の市民の活動や協力、共感だけに頼っていては限界が生じてしまいます。活動報告を兼ねての芝久保公民館、田無公民館でのロビー展を開催しています。この活動は双方向の交流には、欠かせない事業です。 |
5. 相互に学び合う、もう一つの形
2013年1月と2014年1月の「しんちまち生涯学習フェスティバル」に参加した際に、西東京市からの支援メンバーに向けて、新地町旅館「朝日館」の女将で語り部でもある村上美保子さんの被災体験と復興への取り組みについてのお話を聞く機会がもてました。この話をぜひ西東京市民や職員にも生の声で聴いて欲しいと思っていたところ、自治労東京都が6月6日に村上さんの記念講演を開催すると聞いて、公民館でも6月7日に谷戸公民館で村上さんの「被災体験者が語り継ぐ防災」の講座が実現しました。
会場では参加者の皆さんに、新地町へ向けての「絆メッセージ」を書いていただくコーナーを設け、写真パネルで「しんちまち生涯学習フェスティバル2014」を紹介しました。新地町農協と西東京市の旭製菓とのコラボ商品「ニラかりん糖」の試食もあり、参加者同士の活発な交流の中で新地町への理解も深まったと思います。 今後も新地町との交流の輪を広げ、復興への取り組みを進めて、相互の学び合いを継続したいと思います。 |
6. 支援活動から見えてきた課題
このような順調な支援活動の継続、広がりには、いくつかの要因があります。
|
7. 西東京市公民館専門員の労働環境改善の現状と課題 ここで、社会教育施設の職員としての課題の一端に、西東京市の公民館の新たな担い手となっている公民館専門員の現状をお伝えします。 (1) 正規職員の減員と公民館専門員の増加による職員体制の変化 (2) 公民館専門員の力量形成としての研修 (3) 公民館専門員の職員組合加入による仲間意識の向上 (4) 労働環境の改善へ(3・11以降の公民館再認識から力を得て) (5) これからの西東京市公民館の課題と展望
1つは、運営体制から発生する諸問題の対処、もう1つは、3・11以降の新たな公民館の役割の実践です。 運営体制から発生する諸問題の対処については、正規職員と非正規職員の構成比が大きく変化する中、それぞれの権限範囲等の限界を確認しつつ、相互理解を深め、両者で公民館の事業や施設管理等を行っていくことです。 その点で公民館専門員が公共サービスの担い手として、十分に能力が発揮できるように労働環境と待遇改善を一層進展することは、条件整備として重要だと思います。 もう1つは、3・11以降の新たな公民館の役割の実践としては、公民館設置当初から孕んでいた都市型公民館としての発展の中で、ややもすると不十分であった公民館の本来的役割を改めて見つめ直し、今、必要な学びを作るということだと思います。 先述の、地域住民、自治労職員組合と公民館の協働による、顔の見える復興支援は大きな成果であり、今後も継続していく実践だと思いますが、加えて、例えば、公民館のコーディネータ的な能力を地域づくりに総合的に活かす努力は、一層大切になるように思います。勿論、3・11以降の新たな「学び」の希求に応え、人と人とを結ぶ公民館であるために、地域に出て、地域を知り、地域の人と共に歩む姿勢は、未来に向けた公民館の展望を描く、変わらない重要な原点でもあると思います。 |
8. おわりに 職員は公民館にとって欠かすことのできない存在です。職員が地域を繋ぎ、地域社会の充実を実現することは、3・11以降、公民館が住民の避難所として機能したこと、被災した住民がこの未曾有の災害から復興に立ち向かう力になったことを考えれば、重要な使命であると思います。 |