【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 2011年10月29日、福井県本部社会福祉評議会が設立された。設立によって、福祉職場・福祉領域における課題にスポットが当たるようになったが、活動そのものは手探り状態だった。あれから約3年。今では、福井県本部にしかない「福祉『自治研』集会」の開催、組合活動に対する意識改革、人材育成、市民との協働など、"元気"と"やる気"を生み出す社福評活動を展開している。福井県本部社福評の3年間の活動記録である。



日本一の社会福祉評議会をめざして
―― 福祉自治研集会の誕生と、
県本部主導型から現場主導型の活動スタート ――

福井県本部/社会福祉評議会・担当書記 伊原 尚子

1. はじめに

 福井県本部には、37単組8,826人の組合員が結集している(2013年8月現在)。そのうち、福祉(介護・保育・生活保護・児童相談など)職場で働くヘルパー、保育士、福祉事務所職員など2,058人がいる(第11回自治労組織基本調査結果より)。
 自治労は、規模や職種・職能ごとのグループによって評議会を組織し、それぞれの職種・職能特有の課題について取り組んでいる。評議会の一つとして、社会福祉関係職場の組合員で構成されている「社会福祉評議会(略称:社福評)」があるが、1954年の自治労福井県本部結成以来、福井県本部には社福評の組織がなかった。


2. 福井県本部社会福祉評議会の設立(2011年10月29日)

(1) 3回の設立準備委員会を経て
 福井県本部は、2011年3月、2011年度運動方針の中で「社会福祉評議会」設立に向け取り組むことを決定した(2011年3月18日開催「県本部第85回定期大会」)。同年6月22日、県本部第1回単組代表者会議で具体化にむけて方針提起し、3回の設立準備委員会を経て、同年10月29日、「情報の共有や特有の課題解決、政策づくりに向け、各職場から政策を発信していくこと」を目標に、福井県本部社会福祉評議会が設立された。

(2) 「保育部会」と「福祉事務所・施設部会」の2部会構成
 中央本部社福評は7つの部会・協議会等で構成されているが、福井県本部では、社福評の立ち上げに際し組織状況も鑑み、当面は「保育部会」と「福祉事務所・施設部会」の2部会構成による部会活動を中心とした運営を行うことにしている。
 社福評が設立されるまでは、保育・幼稚園職場の課題について各単組の代表者が集まった「保育代表者会議」があり、職場実態調査や県本部保育集会の企画等を行ってきた。一方、保育・幼稚園職場以外の福祉施設(介護・障害者・児童養護施設等)、自治体の福祉事務所(生活保護・児童福祉・障害者福祉等)、社会福祉協議会・福祉事業団等で働く組合員が集う共通の場がなかった。そのため「福祉領域」の課題で制度政策研究を行うことは皆無であり、福祉職場にスポットがあたることは少なく、活動は県本部主導によるものであった。
 新たに2部会として活動をスタートさせたが、福祉領域における専門家集団ともいえる組織であることから、従来の「県本部主導型の組合活動」から脱却し、「現場主導型の自治労運動」へ転換する必要があった。

3. 福井県「福祉『自治研』集会」の誕生(2012年6月)

(1) 「自治研先進県=福井県」ならではの企画
 部会活動を中心とした運営を行う中で、保育部会では「県本部保育集会」を、福祉事務所・施設部会では「福井県福祉自治研集会」を企画・運営している。保育部会が企画する「県本部保育集会」は、すでに第22回(2012年6月時点)を数える継続した集会であった。しかし、福祉事務所・施設部会は、前述のとおり、保育・幼稚園職場以外の福祉職場にスポットがあたることはなかったため、一からのスタートだった。加えて、幅広い職種と活動領域を持つ部会の特性から、職場や労働組合の中での活動にとどめず、「市民参画・市民協働」を視座に集会を企画することとした。その名も「福祉『自治研』集会」である。

(2) 当事者市民を意識して-第1回福井県福祉自治研集会(2012年6月30日)
 記念すべき第1回は、福井市・国際交流会館において開催し、一般市民や市民グループからの参加も含め94人が集まった。県自治研センターや丹南自治研センターも共催団体として名を連ねた。
① 第1部-全体集会のテーマは「子ども」(市民参加も呼びかけたオープン集会)
  東京都八王子市NPO法人カモスの理事長前田信一氏を招き、児童虐待の深刻化や家庭状況の不安定さなどにより社会的養護を必要とする子どもが増加している現状と社会的養護を必要とする子どもたちに対して「地域の子どもは地域で育てる」を基本にし、地域の方々と専門職員、学生が協力し、安全で安心な居場所の提供や行事の取り組みについて学習した。
② 第2部-先進地事例を学ぶ(自治労組合員のみ対象としたクローズド集会)
  二つの分科会に分かれた。第1分科会は、富士宮市地域包括支援センター長の土屋幸己氏を招き、地域包括ケアについて富士宮市での取り組みを聴き、ワンストップでの相談受理体制の整備に向けての連携の必要性について学んだ(写真)。第2分科会は、岩手県社会福祉事業団職員の藤田泰氏を招き、今後の福祉施設のあり方について岩手県社会福祉事業団の事例から、事業団の自立における課題と経営計画の策定について学んだ。

 福祉領域の課題は、当事者市民のためにあるという意識を持つことが重要であり、社福評の活動は市民とともに実践できる可能性をつかむきっかけとなった。

(3) 福祉と自治研活動はつながる-第2回福井県福祉自治研集会(2013年6月22日)
 第2回は、鯖江市・嚮陽会館において開催し、85人(市民参加含む)が集まった。
① 第1部-全体集会テーマは「高齢者(介護)」(市民参加も呼びかけたオープン集会)
  介護・医療・年金などの社会保障分野を専門に取材されている産経新聞社の佐藤好美さんを講師に招いた。行政や制度的な矛盾、先進地の事例等が紹介され、自治体職員として、市民として、また事業所としても一石を投じる講演となった。「マンネリ化しがちな介護現場に『自立支援』の視点を」「地域性で決めつけることなく、変えていく、地域をつくっていくことが大事である」と佐藤さん。まさに、自治研活動そのものではないかと思い知らされ、介護がテーマだったが、あらゆる職種の参加者にも聞き応えのある講演となった。
  ここで報告しておきたいのが、この講演会(講師選定含む)を発案したのは福祉事務所で働く組合員(看護師)だったことである。集会では進行を務め講演会を成功させ、その後も介護保険制度改正の取り組みに積極的に関わってくれるなど、社福評活動に強い関心を持つ貴重な人材の発掘につながった。
  また、講師の佐藤さんは、集会終了後、県本部に加盟している「越前市公共サービスユニオン」の職場である「児童養護施設『一陽』」(子ども版グループホーム)を訪問。児童養護施設の取材は初めてとのことだったが、地域で主体的に取り組んでいる様子に感銘され、日夜奮闘している私たち自治労の仲間の取り組みと、児童養護施設の抱える「社会的養護の充実」や「職員の最低配置基準」などの課題を産経新聞の記事(2013年8月1日付)として掲載された。この集会の成功は、副産物を生む結果となった。
② 第2部-公的保育保障と福祉自治研活動を考える(自治労組合員のみ対象としたクローズド集会)
  第1分科会は、「めざすべき公的保育保障とは」と題したパネルディスカッションを行った(第1分科会の様子は、後述の「4.保育部会における取り組み」で紹介したい)。
  第2分科会は、福井県地方自治研究センターの伊藤藤夫さんによる「『福祉自治研』で職場と市民を元気にしよう」と題した講演会を行った(写真)。「職を守りたい」「より良い仕事をしたい」「面白い活動を広めたい」「地域の課題を解決したい」などさまざまなきっかけで生まれた自治研活動について事例を交えて紹介された。参加者からの質問に対し、「共有できる仲間をつくり、まずは動いてみることが自治研活動である。組合を利用し活動を広げることも可能だ。」とアドバイスがあった。
 「地域はつくるもの」「まずは動いてみること」から道が開けること、「福祉」と「自治研活動」を結びつけるヒントをつかんだ。

(4) 社会運動の重要性を学ぶ-第3回福井県福祉自治研集会(2014年4月12日)

 第3回は、越前市・武生商工会館において開催した。今回のテーマは「障害者」。2回の福祉自治研集会を経て、より一層「市民参画・市民協働」を意識した集会構成となり、福井県里親会前会長や病児保育事業所の代表、越前市社会福祉士会事務局長など地域で活躍する市民活動家たちも多数結集し、参加者数は総勢100人を超える集会となった。
① 第1部 基調講演「自分たちで創る障害者施策」
  基調提起は、DPI日本会議副議長として日本の障害者運動を牽引するとともに、自治労中央本部社会福祉評議会事務局長でもある西村正樹さんが行った。「障害者運動は人権運動であり、すべての人にあたりまえの生活を保障することが共通目的であること」、また「障害者運動と労働運動は、当事者や現場の声を起点にして実践が展開されていくという点で、非常に共通する点が多いこと」などを学んだ。
② 第2部 パネルディスカッション「自分たちでつくる障がい福祉の輪」写真
  パネラーとして障害者自立生活センター・コムサポートプロジェクトの吉田知栄美代表や、障がい当事者青年の保護者でもある渡辺慎二さん(越前市職員)に登壇をお願いした。それぞれ「障がい者自らが地域で暮らすことそのものが運動であり、"なんで?"という疑問を常に持ち続けて社会を見つめていくことが大切である。」、「行政職員の(当事者に寄り添った)"ちょっと"の頑張りや工夫、思いやりで、地域社会は大きく変わっていく。」ことなど、実践者ならではの"熱い"発言があった。地域の中における当事者の思いや、当事者と支援者がともに歩み、「福祉の輪」をつくる秘策など「当事者」と「実践者」の双方の声を引き出すおもしろい議論となり、実り多い集会となった。

 市民とともに当事者や実践者の声を起点に展開していく社会運動が重要であることを、この「福祉自治研集会」で再認識することができた。


4. 保育部会における取り組み

(1) 脱皮できない保育部会活動(社福評設立から2012年11月-第2回定期総会まで)
 福祉自治研集会を基軸に活動の可能性を広げる福祉事務所・施設部会とは相反して、保育部会活動は従来の県本部主導型から脱皮できずにいた。保育部会長を中心に幹事会を開催し、各単組の取り組みや課題の報告から、それぞれの職場で抱える悩み等を共有するなど情報交換を行ったり、保育園体制のアンケート調査や保育部会として初企画となる第23回保育集会開催に向けて協議をしてきた。他方、単組における役員改選等の理由で、年度途中に幹事の交代が相次ぎ、部会幹事中心の運営と継続した運動形成は困難を極めていたのだった。

(2) 子ども・子育て支援新制度の取り組みを契機に(2013年2月~2013年12月-第3回定期総会まで)
① 意識変革のきっかけは……(2013年2月)
  そんな中、本部主催の「保育関係代表者会議」が開催された。2012年8月に成立した「子ども・子育て関連3法」について厚労省の説明を受け、地方版子ども・子育て会議の設置と労働者代表として委員を参画させるなど、今後の保育運動の課題が提起された。集会の参加者から、「2014年4月の本格稼働に向け、『子ども・子育て支援新制度』が動き出しているにもかかわらず、職場に浸透していない。」との声が上がった。政策が変わろうとしている今、いかに新制度の周知と運動課題を共有するか……「現場主導型の保育運動」をめざす契機となった。
② 五月雨式で学習会「子ども・子育て新法でどうなるの? 私たちの保育」(2013年5月~7月)
  本部集会を受け、質の高い保育の提供と量的な拡大を目的とする「子ども・子育て3法」が着実に施行され実効を上げるため、現場力(=保育・幼稚園職場、保育士・幼稚園教諭等)を活かした取り組みを行うことを決定した(2013年4月20日「第1回保育部会幹事会」)。まずは、新制度について学習しようと本部講師派遣制度をフル活用し、自治体単組を中心に単組学習会の開催を呼びかけた。学習会は、単組から選出されている保育部会幹事が中心となり、保育現場への呼びかけや、慣れないながらも当日の進行など運営を行った。また、基本組織と連携して単組執行部、担当課の組合員、組織内・協力議員の参加も促すことができた。

日にち

主催単組

人数

講師(本部社福評)

備 考

5月31日(金)

坂井市職

134人

保育部会長 東向旬子

 

6月5日(水)

越前市職

85人

副部会長 岡田由子

越前市社協労組・鯖江市職労含む

6月21日(金)

あわら市職

30人

保育部会長 東向旬子

 

6月28日(金)

福井市職労

62人

副議長 西岡真理

鯖江市職労含む

7月4日(木)

大野市職労

64人

事務局長 西村正樹

勝山市職・永平寺町職共催


 一つのテーマで五月雨式に福祉に関する学習会を開催したのはここ何年もなかった。単組では学習会運営は基本組織が行う傾向があり、現場の組合員自らが当日の段取りまで行ったことは大変有意義なことだった。

③ 保育現場vs福祉事務所?!「第2回福井県福祉自治研集会」から学ぶ(2013年6月)
  前述したとおり、第2回福井県福祉自治研集会の中で、「めざすべき公的保育保障とは」と題してパネルディスカッションを実施した(写真)。
パネラー 山内章裕氏(県本部社福評議長)
      ※男性保育士
     大嶋智氏(県本部社福評オブザーバー)
      ※福祉事務所(当時)
助言者  東向旬子氏
     (中央本部社福評保育部会長)※当時
コーディネーター 野田博幸氏
         (県本部社福評事務局長)
          ※県本部書記次長(当時)

  「保育現場」と「行政(企画立案)」の各立場から公立保育園の役割や強み、非正規職員が増えている現状、子ども・子育て新制度に対する考え方など発言があった。現場から行政(企画立案)への意見反映や理解に壁を感じている実態や、自治体として財政や政策面で苦渋の決断をせざるを得ない現状が浮き彫りになった。現場と行政(企画立案)の壁を取り払うには課題の共有と財政(お金の使途)についての学習が必要であり、そのための学習会開催など調整役として組合の存在や役割が重要になってくる、と課題が明らかになった。

 「保育現場」と「担当課」が同席し、意見を取り交わすということは業務としてはなかなかできない。しかし、「組合」という場所であれば「組合員同士」、実現可能であること、福祉施策を考えるとき、現場と担当課が課題を共有することは、公共サービスを担う上で必要なことだと一石を投じることになった。

④ 地方版「子ども・子育て会議」への労働者代表の輩出
  2013年秋、すべての自治体で努力義務とされた地方版「子ども・子育て会議」の設置と、ステークホルダーとして労働者代表委員を送り込むことを目標に取り組みを進めていた。一方で、県本部や市職評議会と連携し、各自治体の現状を調査・把握、基本組織と当局(担当課)との協議体制の確立をめざし行動を展開した。国のスケジュールからは夏までに対策を図るべき課題だったが、自治体の動きに対する行動の遅さから、地方版「子ども・子育て会議」の設置は10自治体で設置もしくは設置予定であることは確認できたものの、労働者代表を構成員とした自治体は2つに留まり、ステークホルダーとして事業計画の策定段階での意見反映は厳しい状況となった。
⑤ 2年越しに実現! 大日向雅美さん来福-県本部第23回保育集会(2013年11月17日)
  いよいよ「子ども・子育て支援新制度」の課題が浸透し始めていたタイミングで、国の「社会保障制度改革国民会議」の委員を務める大日向雅美さん(恵泉女学園大学大学院教授)を講師に招いた。大日向さんは、前年度にオファーしたが日程が合わず断念、2年越しで来福が叶った(国の子ども・子育て会議の進捗状況から、ベストタイミングとなった)。自治労組合員(保育・幼稚園、子育て支援の担当課、児童養護施設など)、組織内・協力議員や連合福井、県自治研センターにも呼びかけ総勢125人が参加した。「これからの子育て支援~3歳児神話を越えて~」と題した講演では、「すべての子どもと子育て世代を全世代で支援する」と地域の人材育成も含めてこれからの子育て支援のあり方が提案された。新制度によって職場がどうなるのかではなく、子育て支援施策は社会全体で取り組むべき課題であり、子育ては当事者や支援者だけではなく、「地域を含め社会全体で支援していくこと」が大事であると学んだ。
 これまで保育・幼稚園職場の組合員だけを対象としたクローズド集会の形式だった県本部保育集会は、「子ども・子育て支援新制度」の取り組みから、基本組織や担当課のみならず、連合や自治研センターにまで呼びかけは広がり、「福祉自治研」の要素が盛り込まれた貴重な集会となった。

⑥ 幼稚園職場だけは全国初! 最高の盛り上がりをみせる-「幼稚園職場における子ども・子育て支援新制度学習会」(2013年12月7日)
  組合員から幼稚園職場を対象とした学習会を開催してほしいと要望があり、県本部保育部会長、幹事1人、幼稚園職場代表2人が主となり学習会を企画し実現させた。現場の声を反映し、幼稚園だけを対象とした学習会は全国でも初の取り組みとなった。本部社福評議長の峯潔さんを講師に招き、「幼保連携型こども園」拡充の動き、利用者負担、保育士資格取得などの課題について学んだ。その後、4単組(坂井・越前・あわら・大野)から幼保一元化の動きを中心に現場の抱えている問題が報告された。分散会も行われ、新制度による変化に戸惑うのではなく、子どもたちのために何をすべきかを考えるきっかけとなった。同じような悩みを抱えながら取り組んでいる「仲間」と一体感が生まれ、最高の盛り上がりのなか、学習会を終えた。
 集会の企画はすべて現場の組合員。自分たちのやりたい企画を出し合い、当日の運営を含めやり遂げた。自分たちだけではできないことも「組合」というツールで「仲間」と一緒なら実現できることを実感したようだ。組合員同士をつなげ、相乗効果を生んだ学習会となった。

(3) 社福評活動の発展(2013年12月7日-第3回定期総会以降)
① 永平寺町職から保育部会設立が報告される(2013年12月)
  2013年12月7日、第3回定期総会終了後、各部会から事例報告が行われ、保育部会からは、永平寺町職の保育部会設立の取り組みが報告された。報告は、当時の単組書記長(写真)であった。保育部会幹事が参加できないことによるピンチヒッターだったが、基本組織と保育現場との連携の姿を伝える絶好の機会となった。

  県本部保育部会の活動に参画する中で、「より質の高い保育を実現するための協議の場を単組内でも設けたい」という県本部幹事(当時)の思いが実ったのである。設立にむけてアンケートも実施され、幹事の熱意が基本組合書記長をも動かし、保育部会議長は単組執行部の副委員長を兼務するなど、基本組合との連携体制も構築している。この動きは、社福評活動が単組にも着実に浸透してきた証と言える。
② 「現場主導型の自治労運動」への前進-2014年度第1回保育部会幹事会(2014年5月14日)
  第1回保育部会幹事会では、各自が最新情報を持ち寄り、自らの単組の到達点を確認しながら会議が進んだ。これまでは、基本組織の対応を待つ姿勢が多かったが、保育部会幹事が自ら担当課に足を運んだり、基本組織に協力を依頼しながら調査項目に沿って自治体の現状を把握する動きが出てきた。「担当課の窓口に話を聞きに行ったけれど、『何が聞きたいの?』と相手にしてくれなかった。」「直接では、なかなか聞き出せない。組合の書記長に頼んで、同行してもらったら対応してくれた。」「子ども・子育て会議の委員に欠員が出て、今春退職した保育士に応募してほしいと働きかけた。元保育士が委員になることで少しでも意見反映できるのではないかと期待している。」「最終的には議会で諮られる。議会対策も必要なのではないか。」など発言があった。担当課まかせにするのではなく、保育現場も自らが行動し声を上げ、基本組織や組織内・協力議員と連携して取り組むことで現場の声を政策に反映する道筋ができるのではないかと、「現場主導型の自治労運動」にむけて前進する姿が見られた。

5. 現場主導型の自治労運動をめざした部会体制の強化

 県本部社福評の設立から2年間は、各部会の運営は部会長と県本部担当者が中心となって行うことが多く、県本部主導型から抜け出せず、活動の広がりも十分とは言えなかった(設立から2年目には、オブザーバーとして社福評活動に強い関心のある組合員が参画し活動を支えていたが、位置付けが不透明なままだった)。そのため、部会活動の充実を図る目的で、部会活動は、部会長(=県本部副議長)と副部会長が要となる2人体制とした。また、抱えている運動課題が多岐にわたり専門性も必要なことから、運動強化を目的にアドバイザーを迎えることとした(特別幹事は設立当初から配置)。県本部社福評担当の役職員は、中央本部や地連、単組と県本部運動との連携、情報提供、課題の調査・集約等を主な役割とし、評議会活動をバックアップする体制の見直しを行い、3年目の活動をスタートさせた。
 社会運動が当事者市民とともに当事者市民のためにあるものならば、社福評活動は福祉労働者(組合員)のためにあるものでなければならない。

◎「特別幹事」と「アドバイザー」の位置付け
 「特別幹事」……県本部外の団体等の役員に就任する際、活動を保障するための役職
          (例)中央本部社福評部会幹事等
 「アドバイザー」……県本部の運動強化のために知見やネットワークのある人材を受け入れるための
           役職
           県本部幹事会等では発言権および議決権を有する。
           (例)元保育部会長、子育て支援センター所長、福祉担当課職員、
           組織内議員等


6. 今後の取り組みと課題

(1) 成果の見える社福評活動をめざして
 福井県本部社福評は、福祉職場が抱える問題を整理し、調査・研究する中で政策提言を行う評議会をめざして取り組みを進めてきた。福祉事務所・施設部会では、「市民参画・市民協働」を視座に「福祉『自治研』集会」を開催することで、当事者市民とともに当事者市民のために労働運動があることを意識してきた。そして、市民に求められる職場や制度をめざす土台を創り出している。保育部会では、「子ども・子育て支援新制度」一本で取り組みを進めてきたが、結果、どれだけの成果が得られるかはまだ分からない。ただ、「制度が分からない」「何をしても変わらない」という受け身の雰囲気から、「改善するために声をあげる」「やり続ける」行動にシフトしつつある保育部会の活動が今後も継続できれば、成果の見える部会活動につながっていくと思う。
 また、「現場主導型の自治労運動」には、活動に強い関心をもつ人材の結集も必要である。これまで活動を通して、人とのつながりや交流の輪を広げていき、自治労のスケールメリットが最大限に生かせるよう、人材育成にも力を注いできた。社福評活動を通じて、点(個人)と点(個人)がつながり、同じ目標を持つ一筋の道が引かれ始めていると言えよう。

(2) ステークホルダーとの連携と福祉政策における社会運動へ
 これまでの活動から、福祉領域における政策課題の対策には、福祉職場で働く現場の組合員だけでなく、組合役員、所管担当課の組合員や地方議会の議員等、また当事者市民や市民活動家、ローカル自治研センターを巻き込んだ運動の追求が不可欠であることが明らかとなっている。今後は、より一層、福祉政策に強い関心を持つ「仲間」とのつながりを広げ、「労働組合=組合員のためだけの組織」といったイメージから、「労働組合=社会を良くするための政策集団」として認知されるよう働きかけることも大切ではないかと思う。
 市民や地域も巻き込んだ社会運動につながれば、県本部社福評の各部会が研究し提言する政策も、市民のニーズと乖離することなく実現できる日が近づくのではないだろうか。