【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 中心市街地活性化は行政が主導して様々な取り組みがされていますが、郊外にできた大型スーパー等の影響で、以前の中心市街地に集客を見込むことは大変難しくなってきています。一方、岡崎市役所の職員数は市民1,000人当たり中核市で2番目に少ない中、職員は日々高質な公共サービスの提供に努めていますが、モチベーションを保つことは容易ではありません。この度組合が運動方針に掲げている「地域貢献活動」、「組織強化・拡大」と連携させ、前述の2事項に対して取り組んだ「くみ合コン」をレポートさせていただきます。



地域と職員に活力を
―― 組合で行った中心市街地活性化 ――

愛知県本部/自治労岡崎市労働組合連絡協議会

1. はじめに

(1) 中心市街地(康生地区)の現状
① 岡崎市概要
  岡崎市は1916年に愛知県内で3番目の市として市政が始まりました。2016年には市制100周年の節目を迎えるため、今年度「市制100周年記念事業推進課」を組織し、これから盛り上げようとしています。また、徳川家康生誕の地として岡崎城を始めとする歴史的に意味のある建築物が数多くあるほか、2006年には宮崎あおいが主演のNHK連続テレビ小説「純情きらり」で脚光を浴びました。ドラマの背景にも出てくる八丁味噌は地元特産品の一つで味噌カツ、味噌煮込みうどん、赤だしなど名古屋めしに使用されています。近年ではご当地ゆるキャラ「おかざえもん」が人気です。
  教育・文化としては、自然科学研究機構の一つ分子科学研究所が設置されていて最先端の研究が行われています。また、毎年多数の東大合格者を輩出する県立岡崎高等学校もあり、それらの影響で小中学校から教育熱心な一面があります。「ドクター・ジャズ」こと内田修氏が生前収集した膨大なジャズのレコードやテープを保存・活用して「JAZZの街」として愛好家の注目を浴びています。
  人口37万人超、名古屋市や豊田市の通勤圏内として近年ベッドタウン化し、マンション、アパート等の建築が進んでいます。
② 中心市街地(康生地区)の立地
  康生地区は岡崎市の中心に位置し、岡崎城から近く、また松坂屋を始めとする百貨店やスーパー、映画館、市営プール(冬はスケート場)などが集中し賑わっていました。しかし、名古屋鉄道本線・東岡崎駅から徒歩圏内というには難しく、主要道路の国道1号線、248号線からのアクセスは容易ですが、自家用車を利用しても地区内の駐車場は有料のために敬遠される傾向にありました。そのうち、映画館、百貨店など閉店し、市営プールは中心市街地の新たな拠点として中央図書館が設置されましたが、以前のような賑わいは戻ってきません。

(2) 職員(組合員)の現状
① 自治労岡崎市労働組合連合協議会(以下「自治労岡崎」)概要
  自治労岡崎は、岡崎市職員組合(同「市職」)、岡崎市従業員労働組合(同「市従」)、岡崎市学校給食労働組合(同「学食労」)、 岡崎市関係施設労働組合(同「関係施設労」)、岡崎市社会福祉団体労働組合(同「社福労」)、岡崎市社会福祉事業団職員労働組合(同「事業団」)の6単組で構成されていて、組合員数は2,700人超です。
② 自治労岡崎組合員を取り巻く環境

単組名

組合員数

職員組合

2,014

従業員労働組合

463

学校給食労働組合

72

関係施設労働組合

52

社会福祉団体労働組合

37

社会福祉事業団職員労働組合

160

  全組合員数の大半を占める市職・市従は市役所、幼稚園・保育園、市民病院に配属されています。近年、定員適正化計画などによる人員削減により定数条例よりも100人以上少ない職員数で従事しています。特に市従は2007年を最後に新規採用を止められていて、高齢化、技術の不継承等が懸念されます。また、市職員全体でメンタル等病気による職場離脱が20人余り、途中退職者が後を絶たず、将来を担う知識と技能を持った職員の亡失に打開策がありません。そんな状況下でも職員(組合員)は日々高質な公共サービスの提供に努めています。
  一方、学食労、関係施設労、社福労、事業団は元々外郭団体でしたが、指定管理者制度開始後に請負業者として契約期間に制限をかけられながら業務を行っています。雇用の不安を抱きつつも、高質な公共サービスの提供に努めています。
  自治労岡崎組織内でも置かれている立場・状況が異なりますが、公共サービス提供の最前線としての意識や責任感を持つことは共通しています。しかし、日々の業務多忙によるストレス、雇用・賃金など将来への不安を抱え、余裕が無くなりモチベーションの維持が難しくなっています。


2. 組合員の「声」から始まった「くみ合コン」

(1) 組合員の「声」
 自治労岡崎は構成する6単組から組合員数に応じた負担金を得て活動をしていますが、近年は定期総会や幹事会以外の主要な活動がされていなかったため、決算繰越金が年々増え続けていました。あるとき定期総会で「負担金収入があれば少なくとも組合員に還元する活動をすべき」と組合員から指摘され、また、市民病院や幼稚園・保育園の組合員から「出会いの場が少ないから組合で何かしてほしい」と要望が寄せられました。
 出会いの場については、以前は市役所の職員共済会(現・互助会)が企画する各種イベント(運動会、文化祭など)の度に交流がありましたが、財政難を理由にイベントが減り、その機会が減っていました。

(2) 「組織強化・拡大」と「地域貢献活動」
① 「組織強化・拡大」
  この二つの「声」をきっかけに行えるイベントを考えました。この活動を実施することは「組織強化・拡大」に結びつきます。運動方針にも掲げていましたし、組合員が組合のことに関心を高めてもらうことが「組織強化」に繋がることだと考えています。また、まだ組織化されていない臨時・非常勤職員にも参加の輪を拡げ、今後組織化に向けて活動するときに組合に関心を持ってもらうこともめざしました。すなわち「組織拡大」の要素も併せ持つこととしました。
② 「地域貢献活動」
  「地域貢献活動」も運動方針に掲げています。地域ボランティア等地域に根ざした組合の取り組みを通じて地域住民に私たち公務員を理解していただくことが主目的です。
  イベントの案としては、バーベキューやボーリングなどで組合員交流を実施することを考えていましたが、最近話題の「街コン」を提案する意見もありました。確かに話題性はありますが店舗の貸し切り、実施方法などノウハウを全く持ち合わせていなかったため、株式会社リバーシブルに業務委託することにしました。株式会社リバーシブルとは地元情報誌の制作発行などをしていますが、何より岡崎市内で「街コン」を主催した実績を持っていたからです。その株式会社リバーシブルから、候補地として地元飲食店が集中する中心市街地(康生地区)を提案されました。岡崎市内では東岡崎駅前に飲食店が集中していましたが、チェーン店でなく地元飲食店に重点を置くことで、組合としてもより地元に密着した取り組み、つまり「地域貢献活動」として位置づけ計画を進めていきました。

(3) 組合で行う街コン、いわゆる「くみ合コン」
  「くみ合コン」とは「くみごうこん」とは読まずに「くみあいこん」と読みます。
 独身組合員を中心に合コン的に参加していただきたい趣旨から、あえて文字表記を「くみあいコン」とせずに「くみ合コン」としました。
 計画を進めていく上で一番重要なのが、女性参加者が何人見込めるか、です。(2)①で紹介した組合員数のうち一番参加が望まれる保育士、看護師が1,000人超いますので、約2割200人が参加できると予測しました。女性で200人ですので、男性を含めると400人になります。初めての試みでしたが、あえて参加人数のハードルを高く設定しました。ハードルを高く設定してもなお実施できるくらいインパクトのある開催を望みました。


3. 「くみ合コン」について

(1) 「くみ合コン」概要
実施日時  :1回目 2014年2月7日(金)18:30~21:30(受付17:20~)
       2回目 2014年2月14日(金)18:30~21:30(受付17:20~)
参加人数  :1回目 男性 88人(100人)/女性 106人(100人)
(募集人数) 2回目 男性 79人(100人)/女性  71人(100人)
協力店舗  :6店舗(3時間貸し切り)
参加費   :男性4,500円(非組合員は6,000円)/女性3,500円(非組合員は5,000円)
       ※ただし、臨時・非常勤等職員は組合員価格で参加可とする。
       ※組合員は1,500円/人を組合から補助する。
サポート体制:各単組からスタッフ等協力を依頼し、各店舗に2人、受付本部に5、6人それぞれ配置した。

くみ合コン募集チラシ

(2) 主なルール
・受付で受け取ったリストバンドを必ず装着する。
・最初に案内された店舗で最低30分滞在する。1店舗の滞在時間は最長60分とする。
・店舗の移動ルートを固定し、移動中の声かけもOKとする。
・スタッフは他店舗の状況の情報を提供しない。また、盛り上げ役や仲介役をしない。
・自己紹介カード(名刺も可)を自由に配布してもよい。
・マナー違反、強引な誘いはNG。

(3) 運営上の反省点
・フリードリンクとしていたために、18:30スタートの乾杯のためのドリンク注文に時間がかかり、開始が大幅に遅れてしまった。スタートは瓶ビールと烏龍茶で統一したほうがいい。
・食事の提供(時間、量)が店舗によって対応が異なり、不公平感があった。
・店舗によっては店員の人数が少なく、食事の提供、片付けが間に合わなかった。
・グループ人数が2~5人だったので、テーブルの配席が難しかった。

(4) 参加者の声
・少人数・少店舗規模でいいので、今後も定期的に実施して欲しい。夏1回、冬1回とか。
・参加費が高い。
・もっと食べたかった。
・楽しかった。いろんな人と話せてよかった。
・1店舗で最長60分までなので、もっとゆっくり話したかった。


4. 「くみ合コン」を実施することの意義・目的まとめ

(1) 組織強化
 組合員の「声」を実現することで、組合に対する関心を高めることができます。また、本来業務を忘れて思いきり楽しんで日頃のストレスを解消し、再び本来業務に向かえるような活力が得られます。また、一般的に言われている晩婚化や独身高齢化も組合員は例外ではなく、将来への不安が日々の私生活に与える影響も心配されますので、出会いの場を組合で提供することも必要だと感じています。

自治労あいち新聞
市職ニュース

(2) 組織拡大
 岡崎市職員組合は愛知県本部から、臨時・非常勤等職員の組合組織化の重点単組に指定されていました。このことが頭にありましたので、本来組合員が対象のイベントでしたが臨時・非常勤等職員も組合員と同じ価格で参加できるようにしました。そうすることで組合に対する興味を持ってもらうようにしました。

(3) ワークライフバランスの実現
 時間外勤務が常態化している現状を踏まえ、あえて平日夜に開催し、少なくとも参加者についてはノー残業デーにしてもらうことをめざしました。参加するためには計画的に業務を進め、また職場の理解を得なければなりません。そのため執行部としても、病院や幼稚園・保育園の組合分会に積極的に参加し、くみ合コンへの参加を呼びかけるとともに、上司や同僚に対して参加者への理解と配慮をしていただくよう繰り返し依頼しました。

(4) 地域貢献活動
 くみ合コンが実施された地域は、岡崎市が中心市街地活性化に取り組んでいる康生地区でした。実施日が金曜日という店舗側にとっても集客が見込まれる日程を組みましたが、どの店舗も快く協力していただけました。店長の中には職員だけで実施せずに市民も含めて今後実施して欲しいと要望される方もいました。また、組合員の中には初めて康生地区に訪れた方もいて、地域やお店に興味を持っていただいたり、職場の親睦会に康生地区を選んだりして、くみ合コンを実施した効果が一過性のものではなく、継続されている事に、多少ながら手応えを感じました。

(5) くみ合コンの発展
 今回の実績は自治労愛知県本部の新聞に紹介されました。また、愛知労福協岡崎・額田支部に報告しました。今回の活動を幅広くPRして、岡崎市役所関連の組合員に限ることなく、岡崎市内外、産別を越えて実施されることの意義を感じるようになりました。
 隣の豊田市は岡崎市と同じ三河地方にあり、同じ中核市ですが普段から密接に関わることはありません。しかし組合組織の強化を考えた場合、他市の状況を把握し、自分たちが置かれている状況を理解することは決して不必要だとは思いません。元々、豊田市職労と合同で行うことを企画して豊田市職労役員に呼び掛けていましたが、調整がつかなかったため、岡崎市役所関連のみで実施しました。今後も実施に向けて関わっていきたいと考えています。
 また、労福協岡崎・額田支部の取り組みはファミリーフェスタやファミリー映画会など所帯を持つ組合員向けの行事が多く、独身者を対象にした行事が設けられていません。岡崎市内に居住あるいは勤務する産別を超えた労組の組合員が岡崎市という「地域」で活力を持って日々の業務に励んでいただくことは、岡崎市にとっても意義深いものだと考えています。くみ合コンの実施を聞いた名古屋鉄道労組から一緒にやりませんかと声をかけていただいています。最近では街おこしにお嫁さん候補を集めて集団お見合いするテレビ番組がありますが、地域の活力を盛り上げるためにこうした取り組みは必要だと感じることがあります。今後も可能な限り実施に向けて検討していきたいと考えています。