【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第1分科会 住民との協働でつくる地域社会 |
愛知県が2013年度に「公契約のあり方検討会議」を設置したことを受け、愛知地方自治研究センターは「公契約条例研究会」を設置し、1年間にわたって議論してきた。県としての対応の方向性を固めることを念頭に設置された検討会議だったが、報告書ではなく、意見を羅列したとりまとめを公表することになった。なぜ、そのような形になったのか、研究会の取り組みも紹介しながら、検討会議における検討過程を検証する。 |
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1. 公契約における問題の所在と愛知県における検討経過 (1) 公契約における問題の所在 (2) 愛知県における公契約の検討経過 |
2. 県検討会議と公契約条例研究会 (1) 公契約のあり方検討会議 (2) 公契約条例研究会 上述した県の動向を踏まえ、当センターは「公契約条例研究会」(以下、研究会)を設置し、7月に初回の研究会を開催した。研究会のメンバーは表2のとおりである。 研究会は以下の2つの目的を有することになった。1つは、愛知県内の実態を踏まえつつ、実効性のある公契約条例のあり方に関する調査研究を進めることである。もう1つは、検討会議においてより有意義な議論がなされるよう、検討会議の委員に対する研究成果の情報提供や意見交換などを行うことである。 これらの目的を達するため、研究会では有識者や自治体関係者へのヒアリングを行うとともに、検討会議の議論を踏まえつつ、今年3月まで月1回のペースで研究会を開催した。 研究会では、検討会議の日程および議論も踏まえつつ、大きく分けて「政策目的型入札改革」と「公契約条例」という2つの柱について議論を重ねた。前者については、先進的な取り組みを行っている自治体の事例を参考にしつつ、政策推進を目的とした入札改革のメニューの整理を試みた。後者については、公契約における費用積算の考え方や公契約条例を制定している自治体の状況、公契約基本方針を策定している豊田市の取り組みなどを把握し、論点を整理した。そうした中で、公契約条例の制定には業界の理解が必要不可欠であること、公契約条例を制定した自治体では、下請け従事者への適正な賃金支払いに一定の効果が生じていること、業界団体が抱いている懸念の多くは技術的課題であり、それらに配慮した制度設計および運用とすることにより、対応可能であることなどが見えてきた。 |
3. 県検討会議における論点と議論 検討会議では初回に委員間の自由討議が行われたのち、第2回から第4回に公契約に関する個別的な論点に関する議論がなされ、第5回に報告書のとりまとめを行うというスケジュールで進められた。検討会議の俎上に上げられた論点を具体的にみると、第2回は①政策推進への公契約の積極的活用と②総合評価方式の導入拡大、第3回は①社会的責任・法令遵守と②公契約のもとで働く人の賃金、第4回は①総合的な対応の枠組みの計5つであった。では次に、実際にどのような議論が展開されたのかを見ていくことにしたい(注)。 (1) 第1回検討会議 (2) 第2回検討会議 (3) 第3回検討会議 (4) 第4回検討会議 (5) 第5回検討会議 |
4. 県検討会議の評価と課題 1年間にわたり、公契約のあり方について検討してきた検討会議であるが、多様な立場の関係者が一堂に会し、公契約のあり方に関する検討がなされたこと自体は評価されるべきであろう。しかし、検討会議の設計および会議運営に関しては、以下の課題を指摘しておかねばなるまい。 |
5. 公契約改革の実現に向けて 今年2月11日、当センターと自治労愛知県本部、愛知労働文化センターは「公契約のあり方を考えるシンポジウム」を愛知県産業労働センターにて開催(連合愛知後援)し、組合員や市民、自治体議員、自治体職員ら約270人が参加した。同シンポでは、研究会座長である上林陽治氏の基調講演に続いて、一部の検討会議委員と有識者によるパネルディスカッションを開催し、参加者とともに公契約や公契約条例のあり方について考えた。 |
(注)検討会議は公開で行われたものの、会議録は公表されていない。よって、すべての会議を傍聴した上で当方にて作成した詳細な発言録に基づいて、各委員の発言内容を引用する。 |