【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 わが国は今、人口減少と少子・高齢化が同時進行し、2060年には人口が9,000万人を割って生産年齢人口は4,400万人に減少、高齢化率は約40%となります。右肩上がりの時代に設計された各種公共施設や公共サービスを継続していくことは困難であり、選択と集中の行政改革を推進するとともに、市民と行政の協働のまちづくりを進めていかねばなりません。本レポートでは、地域の絆力を高め、地域活動を効率的・効果的に展開し、"これからも安心して暮らし続けられる"まちづくりを実現するための新しいコミュニティの仕組みづくりを提言します。



地域協議会(新しいコミュニティ組織)の創設
これからも安心して暮らし続けられる地域づくり

愛知県本部/小牧市職員組合

1. 現在の状況

(1) 地域の絆力の低下
 都市化の進展や生活スタイルの変化、価値観の多様化などにより地域住民同士の交流が減少し、地域が本来持っている相互扶助の機能"絆力"が低下傾向にあり、今後、さらに低下していくことが懸念されます。
① 低下の要因 ・核家族化や共働き世帯の増加
        ・自らの価値観を大切に行動する傾向の強まり
        ・プライバシーや個人情報に対する意識の高まり
         など
② 地域の課題 ・地域活動に対する参加率や参加意識の低下
        ・地域を支える地縁組織の組織力の低下
        ・自助・共助による災害や犯罪への備え不足
         など
 自治会を始めとする老人会、子ども会、婦人会などの地域組織では、「役員のなり手不足」「役員の高齢化」「会員の減少」「行事を開催しても特定の人しか集まらない」などの課題から組織力が低下しつつあります。

(2) 日本の人口構造の大きな変化
① 人口減少
  これまで右肩上がりで増えてきた日本の人口は、2005年をピークに本格的な人口減少社会に転じました。これは、日本の有史以来の歴史的な出来事であり、将来推計では45年後に約9,000万人(ピーク時:約1億2,800万人)になると推計されています。人口の減少に伴い日本の経済は、これから徐々に縮小していくと予想されます。
② 高齢化の進行(65歳以上)
  団塊世代の方々が75歳に達する8年後(2022年問題)には、高齢化率も約30%になると推計されています。急速な高齢化の進行によって、高齢者福祉などの福祉関連経費は、急激に増加していきます。また、核家族化の進行に併せて高齢者のみ世帯が増えていくため、介護や災害への不安が高まったり、日常生活の中でのちょっとした困りごとが増えるなど、様々な問題が深刻になっていきます。
③ 少子化の進行(14歳以下)
  1974年に合計特殊出生率が2.0を割り、それ以降2.0を回復したことはありません。少子化の進行により担税力のある生産年齢人口(15歳~64歳)が減少しているため、行政の財源となる税収は、年々減少していきます。
④ 生産年齢人口の減少(15歳~64歳)
  生産年齢人口(働き世代)は、1995年約8,700万人をピークに減少に転じました。現在の合計特殊出生率から推計される45年後の2060年には約4,400万人となり、ピーク時の約半分になります。

(3) 選択と集中の時代へ
 行政は、どのように人口が減少しようとも、高齢者が増加しようとも最低限の市民の安全・安心を維持(セーフティネット)していく必要があります。
 人口減少と少子・高齢化が同時進行していく社会において行政がセーフティネットを維持していくためには、"やるべきことはやる""やるべきではないことはやらない"といった考えの下で行政改革をより一層進めていかなければなりません。将来に向けてセーフティネットを維持し役割強化を図るためには、"あれもこれも"から"あれかこれか"の事業の『選択と集中』を検討していく必要があります。しかし、今まで行ってきた行政サービスをただやめるということは、できません。行政がセーフティネットを維持するためには、地域で解決できることは地域で解決してもらう必要があります。地域には今以上に公の形成に関わってもらわなければなりません。そのためには、地域の受け皿が必要になります。しかし、会員が減少し高齢化していく自治会などの地縁組織は、徐々に力を失っていくことが予想されるため、今以上の負担をかけることは現実的に困難な状況にあります。
 よって、地域活動を効率的に展開する新しいコミュニティの仕組みづくりを進めていく必要があります。


2. 地域協議会(新しいコミュニティ組織)の創設

(1) 設立の目的
 地域の絆力の低下や人口減少と少子・高齢化の同時進行により、将来、行政の力だけでは、"安心して暮らし続けられる地域"を維持していくことが困難になることが予想されます。よって、一定地域の各種団体が連携するための"地域のつながりの場"をつくり、組織同士の連携を強化し、行政と地域の協働体制を構築して"これからも安心して暮らし続けられる地域づくり"を推進していくことを目的とします。

(2) 設立の効果~ねらい~
 地域には、それぞれに課題があります。公共交通機関が充実している、充実していない地域。工場が多い、少ない地域。犯罪が多い、少ない地域など、それぞれに課題が異なるため取り組むべき事業も異なります。その地域に暮らしている住民が自らの地域課題について話し合い、課題解決に必要な地域活動を企画・実施します。
 ・親睦を目的とした既存の行事を合同開催に切替えるなど、行事を整理し住民の負担を軽減し、高齢者や子どもの見守り活動や、広域防災訓練などの本当に必要な活動を自治会より広域で効率的に展開します。
 ・地域の元気な高齢者が中心となって、地域活動を展開することで、高齢者が活躍できる場を創出します。
 ・誰もが気軽に参加できる地域ボランティアの仕組みを確立させ新たな協力者を募ります。
 ・地域と行政の協働体制を構築します。

(3) 組織単位
 地域協議会の単位については、小学校を核として子どもとその父母、祖父母世代の「3世代のつながり」や「範囲のわかりやすさ」、また、「小学校との連携強化が図りやすい」などといったメリットが大きいことから、小学校区単位とします。

(4) 組織のイメージ
① 各種団体との関係
② 組織体制

(5) 役 割
① 地域づくりミーティングの開催
  助け合いの地域づくりを行うため地域の様々な団体や多様な世代の住民が一堂に会し、自らの地域の現状、特性、課題やその解決策、将来の方向性などについて意見交換をする「地域づくりミーティング」を開催します。
② 地域ビジョンの策定
  地域づくりミーティングの話し合いの中で、地域の課題を抽出し、その解決に向け、地域のめざす方向や課題解決の方策をまとめた「地域ビジョン」を策定し、地域全体で共有します。
③ 地域づくり事業の企画・実施
  地域ビジョンに掲げた課題解決の方策に基づき、協議会が実施する様々な事業を「地域づくり事業」と位置付け、企画・実施します。地域づくり事業は、下記の2つに分類します。
 ア 課題解決型事業
   様々な地域の課題解決のために実施する各種事業。
    例:高齢者の見守りや生活支援事業、子どもの見守りや子育て支援事業、防災・防犯・環境保全事業など
 イ 交流促進型事業
   地域住民が気軽に参加し顔を合わせ、親睦を深めるために実施する各種イベント。
    例:各種スポーツ大会、各種レクリエーション、夏まつり など
 上記のような役割を担い、助け合いの地域づくりを進めるためには、活動の担い手となる地域の協力者を増やしていくことが必要になります。

(6) ボランティアポイント制度
 地域協議会が企画・実施する地域づくり事業への協力者に対し、その活動に応じてポイントを付与し、一定のポイントを商品券や施設利用券などに還元します。協力者のやりがいに繋がる「ポイント制度」を確立します。

(7) 協議会の財源
 協議会が事業を実施するためには財源が必要になります。その財源は自治体が交付金として支出。金額は、総額を設定し、平等公平の観点から均等割り・人口割り等で各地域の上限額を設定。また、イベントのみではなく地域活動を拡充発展させる仕組みとして交付金に、以下のルールを設定します。
 → 地域づくり事業の課題解決型と交流促進型に充当する交付金の配分割合を設定する。
   【配分割合:交流促進型は、配分額の3割以下】

(8) 活動拠点
 多くの地域住民が積極的に参加し、交流や情報交換を行いながら、意志と継続性を持った機能的な協議会とするためには、会議室・倉庫などを有した活動拠点が必要になります。協議会の拠点は、既存の公共施設の有効利用や空き店舗の借上げなど、また、学校の空き教室の利用なども視野に入れて地域と協議の上、市が整備します。

(9) 行政職員の人的支援
 各地域の協議会の運営を円滑かつ効率的に進めるため地域パートナー制度を創設し、協議会毎に担当する行政職員を配置。地域と行政の協働体制を確立します。

(10) 地域協議会のルール
① 全協議会共通ルール
 ・設立時には、地域内の全ての自治会の合意を得る。
 ・地域内の全ての住民(法人含む)を協議会の構成員とする。(加入・脱会・会費の概念なし)
 ・協議会役員には各区からの選出委員と、地域住民からの公募委員をそれぞれ1人以上必ず入れる。
など
② 協議会毎に決定するルール
 ・委員・役員の定数や報酬に関する事項
 ・組織構成に関すること(部会の名称や種類、役職や人数)

(11) 区との関係性
 地域で一番身近な自治組織である自治会は、地域の成り立ちや歴史的な積み重ねの中で、地域をつなぎ、さらには、地域と行政をつなぐ地域自治活動の核として、大きな役割を果していますが、一方で次のような課題を抱えています。

   ●地域のつながりの希薄化   ●各種行事への参加者数の減少や固定化
   ●役員の担い手不足      ●自治会加入者の減少と高齢化(協力者の減少)

 これらの課題は、人口減少と少子高齢化の進行により、さらに今後深刻になっていくと予想されます。地域協議会という話し合いの場において、従来の地域活動を自治会より一回り大きな単位で取り組む方が効率的な業務(広域効率業務)と従来の自治会単位で取り組んだ方が有効な業務(狭域有効業務)に役割分担するなど、区と協議会は、連携・協力・補完の関係を築いていきます。