【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 日進市では、市の健康づくり計画「いきいき健康プランにっしん21」に基づき、その重点取り組みとして『メタボリックシンドローム対策』と『心の健康づくり対策』の具体的な取り組みの一つとして、2011年に大学との連携により「にっしん体操」を作成しました。市では、この体操を幅広い年代を対象として市全域で普及することにより、体の元気づくりにとどまらず、地域の元気づくりにつなげる活動をしています。



大学連携による「にっしん体操」の普及事業
―― 人の健康からまちの健康へ ――

愛知県本部/日進市職員連帯会議

1. はじめに

 近年、自治体などでは、健康増進や介護予防のため「ご当地体操」を作成して普及に努めています。地域に根ざした踊りを基にしたもの、特産物を使ったものなど、その種類は多岐に渡っています。
 日進市では、2004年に策定した市の健康づくり計画である「いきいき健康プランにっしん21」に基づき、さまざまな健康施策を進めてきましたが、2008年に実施した計画の中間評価の結果、『メタボリックシンドローム対策』と『心の健康づくり対策』を重点的な課題としました。その取り組みの一つとして、「にっしん体操」を作成することとしました。
 日進市は、市内に短期大学を含めた6つの大学がある学園都市であり、この特長を活かしたまちづくりに取り組むため、2009年から市内の大学を中心に連携協力協定の締結を進めています。「にっしん体操」については、この連携協定を活かして作成・普及事業を実施しています。
 この体操は、子どもから高齢者まで幅広い年代層や幅広い場面に対応できるよう工夫し、市全域で普及活動を実施することにより、個人の健康づくりにとどまらず、まちの健康へつなげていくように展開しているので、その経過等について報告します。


2. にっしん体操の作成について

(1) 体操の概要
 この体操は、強めの運動である「子ども版」から、座ってできる「いす版」まで、体力に合わせて取り組めるよう4種類あります。子ども達からは、楽しさと元気と可愛らしさをもらい、大人においては生活習慣病予防に、高齢者においては認知症予防と介護予防に重点をおいています。時間も3分程度で、手軽に取り組むことができる体操です。


(2) コンセプトと工夫

 全体の実施計画は、2009年からスタートしました。「いきいき健康プランにっしん21」を推進する上で、「ワーキンググループ研究会」および「推進委員会」を開催し、体操作成とその方法について話し合い、コンセプトを決定しました。作成に関しては、そのコンセプトに対応した工夫を行いました。

コンセプト   工夫

(3) 作成の流れ
 連携協力協定を実施している市内の2つの大学と、市外の1つの大学の協力により、音楽から体操の振り付けなど、すべて市のオリジナルで作成しました。

① 作成者と作成時期
 

内 容

担 当

時 期

音楽
「にっしん体操の歌」

作詞…日進市健康課   
作曲・編曲・歌…名古屋学芸大学 メディア造形学部
映像メディア学科

2010年

体操の振り付け

愛知学院大学 心身科学部 健康科学科

2011年10月

監修

名古屋大学 医学部附属病院
脳卒中医療管理センター 医師

2011年10月

DVD

撮影・製作…名古屋学芸大学 メディア造形学部
映像メディア学科  
実技(出演)…愛知学院大学 心身科学部
健康科学科     

2011年12月

リーフレット

イラスト…名古屋学芸大学 メディア造形学部
デザイン学科
制作…日進市健康課

2012年1月

② 作成方法等
 ア 音 楽
   作詞は、「いきいき健康プランにっしん21」を推進する中で、市民等から応募のあった「こころがホッとすることば」を盛り込み、明るく元気なイメージとなるよう健康課職員(保健師)が考え、大学に助言をもらい修正し完成しました。また、作曲・編曲・歌は、大学にお願いし、CDを作成しました。曲は、3番まで作成しましたが、3分程度の長さとなる2番までのバージョンを作成し、普及活動に利用しています。
   また、普及活動を行う中で、市民や普及者からの要望により、曲のテンポを遅くしたもの(2011年、2012年)や、体操の解説音声入りのもの(2013年)についても作成しました。
 イ 体操の振り付け
   完成した音楽を大学に渡し、振り付け案を作成してもらいました。ビデオ撮影した振り付け案を健康課で確認し、地域での普及を念頭に、取り組みやすい内容となるよう繰り返しを多くするなどの修正をお願いし、運動に関心がない人でも取り組めるよう、簡単でありながらも、運動効果のある振り付けが完成しました。
 ウ 監 修
   広く普及するためには、運動の効果を医学的な立場から監修してもらい、その効果を市民に伝えていくことが大切だと考え、大学の医師に監修をお願いしました。振り付けに対する意見をもらうとともに、体操の効果について、体操全体の効果に加え、細かな体操の動作に対してもどのような効果があるのか、また、4つの種類すべての運動の強度についても明確にしました。
 エ DVD
   体操作成者と学生に出演してもらい、大学のスタジオで撮影し、DVDの作成をしました。DVDには、体操の動画のほか、体操の解説書や「にっしん体操の歌」の歌詞や楽譜も入れて作成しました。
 オ リーフレット
   体操の動きについては、イラストを大学に依頼し、運動の方法やポイント、効果もあわせて作成しました。


3. にっしん体操の普及について

(1) 周知・普及
① メディア等での周知
  市の広報誌、ホームページにて掲載、
  テレビやラジオ等の取材、新聞掲載等
② DVDやCDの配布
  幼稚園、保育園、小中学校、高校、各種公共施設、
  自治会、地域サロン、老人クラブ、障害関係施設、
  デイサービス、地域包括支援センター等希望する
  各種団体にDVD・CDを配布
③ 体操作成者等による講習会や出前講座の開催
  各種団体を対象に講習会を実施するとともに、
  地域行事等での披露や、出前講座を実施しました。


種 類

実 施 対 象

子ども

幼稚園や保育園(*)、小学校、学童保育所指導員や児童クラブ(職員含む)、子育て支援センター職員と来所者、子ども会

高齢者

福祉会館での高齢者サロン、地域でのふれあいサロン、老人クラブ、デイサービス、介護予防教室、介護予防講演会、社会福祉協議会やシルバー人材センター職員、年金者の会、ケアマネージャー定例会、民生委員協議会、婦人会

地域行事等

ライフスポーツ体験会、地域のスポーツまつり、春まつり、市民まつり、スポーツ関係イベント、ウォーキング大会、地域のウォーキングイベント、成人式、地区の運動会

各種団体

障害関係施設、自主防災会、スポーツ推進委員会議、市職員、管内栄養士会、在宅栄養士会、薬剤師会、各種団体の総会、聴覚障害者サークル、ボランティア団体

その他の
実施事業

体操講習会、健康講演会、マタニティ教室、幼児健診事後教室、特定保健指導、食生活改善推進員や運動普及推進員研修会、こころの講演会、歯科保健衛生会議、30代さわやか健診結果説明会

 (* 愛知学院大学 心身科学部 健康科学科学生のキャラバン隊を結成し、出前講習会を実施)
 <延実施回数・延実施人数> 2011年 160回  10,524人
               2012年 202回  9,999人
               2013年 184回  8,568人

④ 市役所での実施
  2011年12月から、毎朝始業時間5分前に音楽を流し、職員一同で実施しています。実施にあたり、各課の代表者に講習会を実施しました。また、新規採用職員にも講習会を実施しています。

(2) 体操指導者の養成
 運動を推進するボランティアである「運動普及推進員」の現任者を対象に研修会を実施し、にっしん体操をマスターしてもらうとともに、2013年に新規の推進員の養成講座を実施し、14人が修了しました。
 この運動普及推進員は、ウォーキングや体操の自主グループ活動を行う他、市内の福祉会館等で高齢者を対象とした「お達者ハウス」事業の講師などを行っています。

(3) 自主グループの立ち上げ・支援
 市内の地区組織中心となり、自主的に運動を続けることを目的に、2013年から市内2地区でにっしん体操を行う自主グループの立ち上げを行っています。運動普及推進員とスポーツ推進委員が講師役となり、半年程度の支援を行い、以後は、地域で自主的に活動してもらうこととしています。


4. 成果・効果

 体操の作成において、同じ音楽に合わせた体力別の4種類の振り付けにしたことにより、幅広い年代層への普及を進めることができています。特に保育園の運動会の準備体操や幼稚園・小学校などの行事に取り入れるなど、子どもへの普及によりその保護者へも周知することができています。また高齢者においては、高齢者サロンでの準備体操にもにっしん体操を取り入れており、参加者のほとんどが体操をマスターしています。
 2012年11月に行った市の健康計画アンケート「にっしん体操の周知度」の調査では、約6割が知っていると回答しており、市民への周知は進んできていると考えています。また、音楽の効果が大きく、「心が明るくなる」「楽しい」といった声が聞かれ、心の健康づくりにも役立てることができていると考えています。

5. 今後の課題と方向性

 体操の普及は拡がりつつありますが、今後は地域単位での取り組みを行っていくなど、自主的に継続して実施する市民の増加をめざしていく必要があります。
 また、「にっしん体操」を通じた取り組みを、健康づくりという視点だけではなく、地域の絆づくりにつなげていくような働きかけが必要であると考えています。「人」の健康から「まち」の健康をめざして、「にっしん体操」をきっかけとした「健康なまち」をめざしていきます。

健康づくりマスコット
キャラクター
    『ヘルピー』