【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

現業職場の新たな取り組みと現業評議会の役割


京都府本部/八幡市職員労働組合・現業評議会 小林 勇也

1. はじめに

 私たちは2年前、八幡市の現業職員として、十数年ぶりに採用されました。
 採用されてから、現業職員としてさまざまな危機感を覚え、採用されたその年から積極的に組合活動をしています。
 今回は、なぜ私たちが危機感を感じ、組合活動に取り組み、今後どのような思いで活動していくのかを、自治研レポートとしてまとめてみました。


2. 組合活動を始めたきっかけ

(1) 採用当時の認識
 私たちは採用された当時、「現業」という言葉すら知らず、公務員=一生安泰という、甘い認識しかしていませんでした。そして、自分たちが採用された後も、現業職場に後輩の職員が何事もなく、続々と採用されるものだと思っていました。
 組合についても、加入説明会を受け、加入はしたものの「何か問題が起こった場合には、相談してもいいのだな」というくらいの認識で、自分とは縁の遠い存在だと考えていました。

(2) 現実を知る
 職場に配属されてすぐ、職場の先輩で組合の役員の方が「このまま何もしなかったら後輩など入ってこないし、労働条件は悪くなっていく一方だ」と言われましたが、最初は何のことだか全くわかりませんでした。
 しかし、組合役員から各現業職場の歴史を聞き、何もわからない中で、新規現業職員向けの学習会や、月1回の幹事会に見学者として参加し、少しずつ現実が見えてきました。

【写真1・2:新規採用職員向けの現業評議会学習会】

 ここ十数年間、現業職場に対し新規採用はなく、退職者不補充や、民間委託が行われ、八幡市の現業職員の半分以上が50歳代という高齢化が進み、10年以内に大半の職員が退職するが、その代わりの職員が入ってくる保障などありません。
 そして八幡市のみならず近隣市町も、退職者不補充や、民間委託導入が進んでいます。
 さらに、採用されて間もない頃、現業職員の給与表見直し提案について、市当局から正式申し入れがあり、現業職員と一般事務職員との区別が本当にあるという事実を知りました。

(3) 危機感を感じる
 このような背景もあり、自分たちの職場がこの先どうなるか分からないという不安を感じ、これは他人事ではないという強い危機感を抱くようになったものの、何をすればいいのかは全くわかりませんでした。
 しかし、行動しなければ何も変わらないと思い、採用されて半年足らずで、何も知らない状態でしたが、思い切って現業評議会の幹事として、組合活動に参加させてもらうようになりました。

【写真3:府本部現業評議会決起集会】 【写真4:府本部清掃部会清掃集会】

3. 組合活動の必要性を感じる

 2013年7月、市長から正式に現業職員の給与表見直し提案がありました。組合・現評で市長交渉を行い、私たちも初めて交渉に出席しました。その中で、当初の提案より引き下げ幅を圧縮し、最低限の減額で食い止めることができました。
 これは執行部をはじめ、現業職場全体で今まで積み上げてきた市民サービスによって、市当局との信頼を築き上げたことや、要求書を上げ、交渉前には組合役員が何度も何度も協議を重ね、交渉の場で主張すべきことを主張した結果だと思います。
 仮に、引き下げ幅が変わらなかったとしても、何もせずに下げられることと、行動し、主張し、理由を知った上で妥結するのでは、大きな違いがあると思いました。
 そう思った時に、現業職員として、しっかり業務に取り組める環境を作るために、自分たちの意見を主張し、市当局と対等に話し合うことができる組合という組織は必要だと感じました。

【写真5:労働組合・市長交渉】

 そして、現業評議会があったからこそ、ないと言われていた自分たちの採用を勝ち取り、その後も、4人の現業職員の採用を勝ち取ることができました。
 ないと言われていた採用を可能にしたのは、現業職場全体で市民のニーズに真摯に向き合い、実行し、市当局に対して、「要求-交渉-妥結」のプロセスを徹底してきたからだと思います。
 現業評議会で、権利を勝ち取り、職場を守ることができると感じました。この先どうなるかわからない不安を払拭してくれる、一筋の希望でもあるように思い、現業評議会をより必要と感じました。

【写真6:労働組合・市長交渉】


4. 現業職場の新たな取り組み

 今後、自分たちの職場を守っていくためには、職員一人一人が団結し、お互いに意見を出し合い、それらを提案や要望として形にしていくことで、職場の改善や市民サービスの向上に繋げていくことが必要です。
 八幡市では現業評議会がこういった取り組みを活性化させて、職員提案等によりさまざまな新しいサービスを業務に導入しています。
 現在、新たな取り組みとして清掃職場では、集積所へのごみ出しが困難な市民を対象とした個別訪問収集と安否確認を行う「ふれあい訪問収集」を実施しています。

【写真7・8:個人宅への収集と安否確認を行う。ふれあい訪問収集】

 また、小学校へ出向いて、ごみ収集についての環境教育を行う出前講座を開始しました。

【写真9:出前講座・子ども達へ環境教育】

【写真10・11:子ども達にごみ収集(積み込み・収集車の操作等)を体験してもらう。】

 「ふれあい訪問収集」については、現業評議会が、組合や府本部を通して他府県の自治体へ視察を行う等で情報を集め、さまざまな検討や試行錯誤に加え、当局側との調整を行った結果、サービスの導入に至っています。
 保育園調理職場においては、調理員が保護者や園児と一緒に調理・試食・レシピの説明等を行う、親子クッキングを開催しています。

【写真12:保護者向けのレシピや保育園たよりを発行】 【写真13:毎日保護者向けに給食を展示】

 また、食物アレルギーを持つ園児に対しては除去給食、代替給食を提供する等の取り組みを行っています。

【写真14:給食の食材等を展示】 【写真15:代替え給食の園児でも食べられる食材を
     使ったおやつ】

 学校調理職場においては、八幡市独自の行事給食を行い、例として4年生には盛り付け等を工夫したパーティー給食、5年生には寄せ鍋・キムチ鍋・カレー鍋等の鍋給食、6年生には卒業祝いとして松花堂弁当とお品書きを添えた給食を提供しています。
 さらに、クイズ形式等を使って、子どもたちとのふれあいを通じた食育を実施しています。

【写真16・17:4年生を対象にした盛付け豊富なパーティー給食】

【写真18・19:5年生を対象にした鍋給食】

【写真20・21:6年生には卒業祝いとして松花堂弁当にお品書きを添えて提供】

【写真22:クイズ形式で食育】

  こうした先輩たちが取り組んできたように、私たちも年代を飛び越え一丸となって、現場から市民の目線に立ち、市民と共に働くために、どのようにすればいいかを模索していきたいと思っています。


5. 最後に……

 私たちは採用されて3年目になりますが、わからないことが沢山あります。八幡市職労現業評議会として、これからも現業職場へ新規職員の採用を継続していきたいと思っています。
 そう思ったきっかけは、現業評議会での活動を通じて、自分たちの将来を考えた時に、自分たちの身を守れるのは自分たちであるということを、この2年間で身に染みて学んだからです。

【写真23:新役員が仲間入りし現評発進】

 これから現業職場に対しては、ますます厳しい風が吹くと思います。
 そんな状況の中でも、目の前にある取り組みと課題にたいして行動をし、そして何年先も、何十年先も取り組みと課題を持ち続け、信念を持ち、時代に見合った現業職場を作っていく必要があります。それが自分達の職場を守るということだと思います。
 今後、八幡市を住みよい街にしていくために、市民のニーズを考え、現業職場を活性化し、市民サービスの充実を図り、市民、市当局との信頼関係を築くことで、市民から必要とされる未来の現業職場を作り、自分たちの職場を自分たちで守っていきたいと思います。