1. はじめに
道路や河川等の維持管理の現場で市民窓口の最前線で働く土木事務所においては、現業・非現業に限らず、職員数が減少傾向にある。一方で、2013年に日本初の特別警報が発表された台風18号による災害対応に見られるように、年々、土木事務所の必要性が高まっている。
このような状況の中で、自らの役割と働き方に対して意識の向上を図り、土木事務所を守り、発展させることが必要と考え、今回の取り組みに至った。
2. 現状と課題
(1) 現状の問題点
① 土木事務所の認知度が低い
京都市が管理する道路や河川等施設の維持管理に関する情報が、区役所・他の部署を経由することや、他の部署の仕事内容(例:ごみ捨てに関すること)についての問合せがあるなど、土木事務所の存在とその仕事内容が認知されていない場合がある。
② 土木事務所の広報媒体の有効性が低い
土木事務所の仕事内容を紹介する広報媒体として、従前からポスターを作成し、土木事務所等へ掲示してあるが、受動的広報媒体であるため、有効に活用されているとは言い難い状況である。
③ 土木事務所の人員体制が不充分
昨今の財政状況や「京プラン」の実施計画の中で策定した部門別定員管理計画によって、今後、職員数の増加が見込まれない状況である。また、災害の頻発や、市民の行政に対するニーズが多様化しており、年々、土木事務所の仕事内容が増加しているが、迅速に対応できるだけの充分な職員が確保できていない。
(2) 課 題
① 土木事務所に対する市民の認知度を高め、さらに職員の仕事に対する意識や現場での技術力を醸成させ、限られた職員で多様化する社会ニーズに対応する必要がある。
② 土木事務所の職員で全ての管内の要望に対応することは困難であるため、市民自らが道路等の清掃や近辺をパトロールして、危険個所を発見するなど、市民の維持管理に対する意識も向上させ、公共土木施設の維持管理体制の役割を担うよう、働きかけが必要である。
3. 取り組み
前述の課題を解決するために、土木事務所職員の意識向上と「市民との共働」をめざしたPR広報媒体として「リーフレット」の作成に取り組んだ。
(1) 作成の目的
当初、土木事務所の認知度が低いため、「土木事務所の仕事をもっと市民に理解していただこう」という目的で着手した。
その中で、さらに発展させ、土木事務所のPRだけではなく、「市民自らがまちの安心安全を守る」という市民意識を持てるよう、新しい概念である「市民との共働」をめざすこととした。
(2) 「市民との共働」という概念【資料1】
「きょうどう」には、「協力して働く」コラボレーションという「協働」と「共に働く・行動する」コ・アクションという「共働」のふたつがある。
「協力して働く」関係から、市民・行政などがお互いの役割と責任を認め合い、相互関係を深めあいながら新しい関係を築いていくことが重要である。
そして、「安全なまちづくり、安心して暮らせる地域づくり」を求めるには、「意欲を持って危険箇所を排除する」という、市民と土木事務所が「お互いの役割と責任を認識して果たす」ことが重要である。
(3) 広報媒体「リーフレット」作成の概要【資料2】
① 作成メンバー構成
市内8土木事務所及び本庁統括課から各1名のメンバーを選出した。技能労務職、事務職、技術職の3職種が集まり、作成に着手した。
なお、掲載情報の選定や紙面構成、広報媒体の形等、印刷及びデザイン化以外は全てメンバーが作成した。
② 紙面内の工夫
・見やすさ、親しみやすさ
市民への広報媒体として、わかりやすく情報を伝えることが重要と考え、できるだけ文字は少なく、写真やイラスト・マスコットキャラクターにより、親しみやすさをプラスした。
・広報媒体の形・紙面構成
持ち運びが便利で胸ポケットや小さなカバンにも入り、市民が現場からでも電話して頂けるよう配慮した。
また、表紙を開き、順々に開くと、伝えたいことがストーリーになるよう工夫した。
・キャッチフレーズ
京都らしく、目を引くもの、さらに道路であることがわかるものをメンバーで検討し、「京(みやこ)のみち110番」に決定した。
・市民との共働
土木事務所業務の紹介をするだけではなく、リーフレットの表紙のサブタイトル「皆さんからのご連絡が市民の安心・安全な暮らしを支えています」とあるように、「市民との共働」を伝えることとした。
また、紙面中ほどにJR西大路駅周辺を美しくする会の取り組みを掲載し、安心・安全への意識向上と「共働」の一歩を踏み出すきっかけとなればと考え、掲載した。
4. 活用事例と今後の展望
(1) 活用事例【資料3】
リーフレットを作成した後、10万部を印刷し、土木事務所をはじめ、区役所などで市民へ配布している。その他に現場における自分の名刺代わりとして市民へ配布する。
また、出張教室など、学校での授業の教材として活用されている。
【具体例①】
昨年度、本市職員と大学生が事務事業評価について話し合う事務事業評価サポーター会議において、庁内サポーターとして作成メンバーが参加した際に、自己紹介を兼ねて、大学生へリーフレットを渡し、PRした。
【具体例②】
作成メンバーが京都市立伏見中学校へ社会人講師として、授業を行い、教材として活用した。
(2) 今後の展望
PRの方法や主体については、今後とも幅広い展開が必要になると考えており、PRをさらに進めていき、認知度を高めることで、市民の方との共働や連携を深めたいと考えている。また、市民共働の取り組みを検討し、推進するプロジェクトを2014年3月に立ち上げた。
特に、将来の維持管理の担い手となる若い世代(小中学生)へのPRは有効と考えており、拡大していきたいと考えている。
一方、今回の取り組みを推進することで、市民からの要望件数が増えることが予想されることから、要望への迅速な対応ができる人員体制の構築が不可欠であると言える。
今後も自治研活動を通じて、「市民との共働」の役割分担及び体制づくりを構築していく、そして、当局へ充分な人員体制の確保を求めるため、労働組合運動を進めていく。
【資料1】
「共働」の概念図 |
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【資料2】
土木事務所は京(みやこ)のみち110番
【資料3】
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出張授業の様子 |
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