【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第1分科会 住民との協働でつくる地域社会 |
大阪市では、「市政改革プラン」に基づき「経営形態の変更及び事務事業の見直し」を推進しています。本レポートでは、「市政改革プラン」によって「地域公共サービスにどの様な影響があるのか」また、「今後の都市内分権において新たな公共サービスのあり方をどう創造するのか」を検証するとともに、市民協働によるボトムアップ型の市政運営システムの構築について提言します。 |
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1. はじめに 2011年12月27日に大阪府知事と大阪市長により設置された大阪府市統合本部は、「大阪都構想」に向けた大都市制度改革を進めるため、「大阪にふさわしい大都市制度の推進に関する条例」の制定をはじめ、「大阪市施策・事業のグレートリセット」とした方針を打ち出し、広域行政と基礎自治体の役割分担とあり方など、新たな大都市制度に向けた「大阪市政運営の基本方針」を示しました。 |
2. 都市内分権(地域主権)の実現と地域コミュニティの再生に向けて 大阪市従は、都市内(域内)分権や区政の充実を主張してきた経緯から、真に市民を主人公とする地域自治を実現するための改革を進めることが重要であると訴えてきました。 (1) 施策横断型地域支援システムの構築モデル ~ふれあい収集~
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環境局として、認知症の方には、ヘルパーや家族の方にポリ容器にごみを分別するようお願いし、その後職員が回収しています。また、ごみを家の中にしまい込む方などは、玄関の中も確認するなど、認知症の度合いに応じた対応を行っています。さらに、視覚障がいの方については、自分の家の中では安心して移動ができるので、声を掛け、「玄関までごみを持ってきてもらうよう」協力して頂き、高齢者や障がいのある方でも、今できることを低下させないよう、できる範囲で分別などのご協力を頂いています。 |
(2) 災害時における公助としての役割 ~市民の生命・財産を守る港湾の取り組み~
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そのためには、地震や津波が発生したら、その後の対応がしっかりとできるようにするためにも安全な保管場所を事前に確保しておき、確実にそこへ移動させておくことが重要です。もちろん発生時には移動させること、それから職員自身の身の安全を確保する時間も必要です。試算では、地震発生から津波の到達までに要する時間は2時間2分。逆算すると、発生時に防災・減災のために使える時間はあまりにも乏しく、さらにその限られた時間内に確実にすべての鉄扉を閉鎖し、必要に応じて避難支援や避難勧告も同時に行っていかなければなりません。 もちろん地震の影響により、想定していた移動ルートや避難ルートが利用できない状況に陥ることも含めて、複数の案を企画し対応できるようにしておかなければなりませんし、迅速・確実に対応できるよう日頃から訓練を行うなど、より多角的視点でのシミュレートが必須です。 このように大阪市従は、基礎自治体の根幹を担う社会的セーフティネットを担う公務労働者として、阪神淡路大震災での大都市における災害、東日本大震災での津波による沿岸部の災害を行政支援業務、さらには、ボランティア活動を通じて地域防災行政と地域コミュニティによる相互補完の重要性について、身をもって理解を深めてきました。 また、近年多発している台風や局地的集中豪雨などの自然災害による浸水や河川の氾濫の被害においても、基礎自治体に住む市民の「いのち」と「財産」のライフラインを守るため、日夜、業務に精励しています。
地域コミュニティの再生は、大都市が抱える重要な課題であり、災害時における帰宅困難者対策をはじめ一時的に生活を保障する場としての機能を備えることが大切です。市民の生命と財産を守るため、公助の役割を基礎とした技能職員の有効活用と「多様な協働(マルチパートナーシップ)」との、より一層の拡充と連携を追求しなくてはなりません。 |
(3) 市民協働による地域コミュニティの再構築 ~協働の公園づくり~
一方で、公共緑地(公園)は市民のものであり、行政は市民の財産である公共緑地(公園)を管理する責任を担っています。今後、市民の自主性を尊重し、かつ財産を有効に活用していくためには、市民を主役とした事業の運営がますます重要となっています。 大阪市では、公園管理や緑化普及は、直営作業を主体に愛護会をはじめとした地域団体や企業、緑化リーダー・グリーンコーディネーター等の協力のもと、取り組みを進めてきました。 今後も、人と環境にやさしい地域コミュニティの拠点としての公園や緑を、持続的に発展させていくため、コーディネートやサポートを軸とした役割を公園事務所が担い、市民が主体となって活動を行う協働事業の構築が求められます。 大阪市が策定中の「緑の基本計画(改訂版)」の基本理念には、「みどりの魅力あふれる大都市・大阪」が掲げられています。しかし、市街地及びその周辺を自然の緑に囲まれた横浜市や神戸市等とは異なり、大阪市は市街地の大半が沖積平野からなり、しかも急速な市街化によって緑やオープンスペースの確保が十分なされてこなかったという、歴史的、地形的経過を有していることから、市民の理解を得て、止むを得ず多額の予算を投入して緑を形成して来ました。
また、環境保全・地域コミュニティの核・防災等といった観点で公園や緑が果たす社会資源としての役割は極めて重要であることから、技能職員が培った技術・技能等を活かし、前述した公園・緑の社会的役割を着実に実行していかなければなりません。そのためにも、市民ボランティアの育成・緑化普及啓発・市民協働を推進することで、企業や市民との連携を深めるとともに、公園緑化事業にかかる地域の自律的運営をサポートするなど、市民を中心とした地域における公園緑化事業に対して、どれだけ深く関わっていくことが出来るかが重要であるといえます。 |
(4) 子育て支援を通じた子どもの健全育成 ~公立保育所における技能職員の役割~
雇用形態が複雑化する状況で、24時間保育の必要性が求められるなか、大阪市立保育所の特別事業である夜間保育については、技能職員が食事提供を行っていますが、休日保育については、業務に従事するのは保育士のみであることから、食事提供が行えていません。昼間保育に通所する児童と生活リズムの違う休日保育に通所する児童に対しての「食育」を図るためには、何よりもまず食事提供が基礎であるといえます。
また、発災などの緊急時に外国籍住民や障がい者等、容易に一人では避難することができない方たちを避難場所まで誘導することを可能とするためには、事前の情報収集・把握・蓄積・活用等を要することから地域住民・団体等と連携し、地域の防災支援のシステム構築に取り組まなければ実効あるものとはなり得ません。 そして、避難場所という様々なものを制約されたなかにおいても食の提供を可能とすること、さらには「食育」を求められる場面もあることから、「外国籍住民への宗教食」「離乳期食」「食物アレルギーへの対応」等についても、技能職員の専門性を最大限発揮した対応が求められます。 このように、自然災害の発災等といった緊急時の場面では個人情報保護といった課題が内包されていることから、「公」の役割というべきものであり「公的責任」の名の下で行い得る業務であるといえます。 |
(5) 下水道事業からみる地域安全システム ~自然災害等への対処~ 大阪市の下水道事業は、下水処理場・抽水所・管路管理の3部門で構成されています。下水処理場では、1日/2,844,000m3の処理を行うとともに環境問題にも積極的に取り組んでおり、「活性汚泥法」による高級処理や雨水・水質改善対策としてファーストフラッシュ(初期雨水の高濃度負荷量の流入)の解消など、河川放流水質の改善・向上を図っています。局地的集中豪雨の対策では、アメダスや降雨レーダーを活用し雨天時の動員体制を強化し迅速な初動体制により浸水対策に努めています。また、市民への啓発活動では、大阪市内12か所の下水処理場で処理場毎にシンボルツリー(つつじ・バラ・さつきなど)の開花時期に合わせて一般公開するとともに、小学生の社会科見学や中学生の職業体験学習などを通じ、多くの市民に処理場の必要性を理解していただくよう努めています。 大阪は、南から北にのびる上町台地と、その周囲をめぐる低地から成り立っており、市内については民家より河川の方が高い位置にあるところが多い地勢となっています。そうしたことから、家屋の浸水を防ぐために下水や雨水をポンプアップするために抽水所(ポンプ場)が設置されており、ゲリラ豪雨などの自然災害から市民の生命と財産を守っています。さらには、降雨時の浸水対策に加え、小学生や地域の方への施設見学を通じて、大阪市の地形の特徴や下水道の仕組みへの理解と抽水所が果たす機能の重要性について理解していただくことに努めています。また、市内の道路には緊急災害時用のトイレを設置しているところもあることから施設見学に来られた方に説明を行うなど災害時に向け呼びかけも行っています。 管路管理では、管路施設の保全調査、パトロール・各許認可業務や埋設管の状態調査など下水管維持管理の保全業務、道路や家屋の浸水などを未然に防ぐ管理業務を行っています。また道路陥没など緊急を要する補修工事や清掃業務についても、直営による器具機材や車両を有しており、早急な対応を図ることができ市民生活に支障をきたすことなく、下水道施設の維持管理や市民サービスに貢献しています。 老朽化した下水管路の維持管理業務だけではなく、市民との対話によって道路や家屋の浸水を未然に防ぐため早急に対応を行っているとともに、特に地形が低いところの浸水被害を軽減させるため、配布用の土嚢を用意しています。その他にも浸水被害が発生した民家への説明や発災対応への注意喚起を行っています。 今後も、水循環基本法の理念「水は、国民共有の貴重な財産であり公共性の高いもの」に立脚し、公共サービスの低下を来すことなく行政の処理責任のもと、民間やNPO法人、住民等との連携した取り組みを進めなければなりません。 |
(6) 地域の安全・安心を見守る ~地域安全防犯対策の取り組み~
都市内分権に対応した市政運営には区への権限移譲が必要不可欠であり、現行の「地域安全防犯業務」においても地域課題のデータづくりや、それを基にした課題解決のための企画・立案など、「地域に求められ、根付く職域」として発展させる必要があります。また、今後の地域安全防犯対策にかかる取り組みへの対応について、この間の現業職場活性化の取り組みを基本に地域の中で私たちの仕事を明確に位置付けさせ、業務の充実と新たな業務を付加価値として積み上げるなかで、コーディネート機能を併せ持つ、地域の支援職としての「職の確立」に向けた取り組みを図らなければなりません。
私たちは、日々の業務を通じて住民等の意見や要望等を把握していることから、今後は技能職員が集積する広範な情報等について区域内全般に効率・効果的にフィードバックする仕組みづくりを追求しなくてはならないと考えています。 |
3. ボトムアップ型の自治体分権改革の推進 「市政改革プラン」では、区政運営を進めるにあたり、局の視点ではなく各区・地域の視点でそれぞれの実情に即して進めることを基本原則として、市役所の行政運営システムを根本的に変革すると示されています。 |
4. 実効ある業務執行体制について 市民生活にとって身近な環境問題や安心・安全のまちづくりに寄与する課題を市民協働事業として推進するためには、地域のインターフェースとしての役割を担っている技能職員は自治体にとって必要不可欠な存在です。 |
5. 都市内分権改革に向けた地域ニーズの拠点づくりと技能職員の人材マネジメント 「市政改革プラン」では、市民に最も身近な区役所や事業所について、地域の自治力を高めるための「市民協働」を核とした基礎自治行政を発揮する総合的な拠点の役割として位置付けられていることから、そのことを可能とする権限と組織機構の拡充をめざした理念を明確に打ち出した政策が求められています。 |
6. 大阪「都」構想の破たんと都市内分権の創造 第30次地方制度調査会答申に基づき、二重行政解消に向けた府県と政令市の調整会議の設置や都市内分権を定めた地方自治法改正案と府県事務の政令市への移譲を定めた地方分権一括法案が成立しました。具体的内容では、①二重行政解消のために条例設置の「調整会議」を設置し、協議不調の場合は国が調停、②都市計画のマスタープランや病院の開設許可、学級編成権・教職員給与など市民生活に不可欠な権限や財源を大阪府から大阪市に移管、③大阪市条例で、区役所が所管する事務を定め、区役所機能を高め、大阪市内分権を推進。「総合区」の設置も可能、④総合区では区長を特別職にし、副市長並み権限(予算と人事権)を持たせるなどとなっています。 |