【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 広島市は、他都市と同様、学校用務職場の正規職員は削減されてきている。しかし、自治労広島市労組・学校業務部会は、自治労方針に則り、活性化を行っていく上で、学校用務職場の必要性を当局に認めさせ、継続的な新規採用再開を勝ち取った。
 現在に至るまでの経過と今後の方針・問題となる課題を発表する。



児童・生徒にとって安心・安全な学校を守るために


広島県本部/自治労広島市労働組合 前田  哲

1. はじめに

 広島市も他都市と同様に学校業務職場の正規職員の人員削減がされています。
 しかし、自治労広島市労働組合(ネットワークひろしま)現業評議会・学校業務部会は、自治労方針に則り、活性化を行っていく上で学校業務職場の必要性を当局に認めさせ、継続的な新規採用再開を勝ち取りました。前回、活性化の取り組みを自治研で発表しました。今回は、新規採用が再開されるまでの取り組みと経過、今後の方針・問題となる課題を発表します。

2. 活性化によるブロック体制確立

 行財政改革により1999年度から2校兼務制度(正規職員1人が2校を兼務し、各校に6時間の嘱託職員を配置する制度)を導入し、学校業務員の正規職員数を退職半数補充しながら200人から100人まで削減するという提案が組合と十分な協議がされないまま実施されました。
 その後、2005年度に学校業務員のセンター化の提案・退職補充廃止が出されました。これに対し、組合は、県内はじめ全国の自治労の仲間の取り組みを収集し、学校業務部会で協議しました。そして、数年来、研究・協議を重ねてきた現場を重視したブロック体制を当局へ再提案しました。
 当初、学校業務部会は正規職員配置によるブロック体制を提案しました。しかし、すでに二校兼務制度からの嘱託職員の採用がなされており、その方々を有効に活用した体制でなくてはなりません。このことにより、拠点校は正規2人配置にし、構成校は嘱託職員を配置するブロック体制制度を提案してきました。この体制は、組合の思いとは少し違うものでしたが、この提案を受け入れ、2006年度より導入されました。しかし、職員定数100人になるまで退職不補充という当局方針は引き継がれたままでした。

3. ブロック体制の成果と課題

 現在、ブロック体制は8年目を迎えました。2006年度小中学校合わせて20ブロック82校から始まり、現在39ブロック161校となりました。ブロック体制校が増えてきたことにより、多くの課題が明らかになってきました。
 その一つを挙げると、知識・経験豊かな学校業務員の減少が顕著に表れてきたことにより従来の学校環境施設の保全ができなくなってきたことです。これまでの学校業務員出身の嘱託職員から他部局出身の嘱託職員が増加し、技術指導や業務支援に赴く回数が増えてきました。さらに、嘱託職員は、5時間45分の短時間勤務であるために、放課後など児童・生徒が不在の時間帯や、給食調理施設など限られた時間しかできない修繕依頼の対応が困難になってきています。限られた時間・予算・職員数のなかで、均一の学校教育施設環境の保全が困難な状況が出てきています。
 成果は、共同作業を取り入れたことにより、あり方検討会議資料(資料1)にも明らかなように、2013年度共同作業別計画・実施回数及び計画・実績試算額によれば業者発注試算よりも下回り、経費を節減しています。より効果的な市政運営に貢献したことが数値で現れるようになったことです。

4. 学校業務員の人員確保にむけた取り組み

 これまでに例年、人員確保にむけた取り組みとして要求書を提出し、交渉をしてきました。しかし、なかなか新規採用まで結びつけることができませんでした。漠然と人員を要求しても通らないため、2010年度より交渉時必要な資料などを作成する交渉対策部を学校業務部会内に設置しました。そして、当局がなぜ新規採用再開をしなければならないのかを納得させる、現場にしか分からない根拠の基となる資料作りをしました。
 その一つは、現在の学校業務員の年齢の調査(資料2)です。退職不補充により、40代中心の職員が多くを占めており、年齢構成の偏りがあること。二つ目は、各職場の組合員に対し、これまで経験した学校から修繕依頼のあった作業内容についてアンケートをとって集計し、習得に必要な知識・技術を整理した資料(資料3)の作成をしました。これらの資料を基に、ブロックをまとめる技術指導員に成長するまでに必要な期間を15年間はかかると見積り、当局に対し40代半ばの職員が今後、大量退職を迎えた場合、採用数年で指導監督員になることになり、安心・安全な教育施設の維持ができなくなることを指摘し、新規採用を再開するように強く迫りました。
 その結果、毎年ではないものの継続的に新規採用者を勝ち取ることができました。

5. 今後の方針

 児童・生徒・教職員・保護者・地域住民・自治体から学校業務員がさらに必要とされるためには、何が足りないのか?何が必要なのか?県内をはじめ、全国の自治労の仲間の取り組みを学び、学校業務部会では前回の発表でも行いましたが、アクションプランを策定し、①教員とは違った目線による遊具・体育施設の安全点検の確立。ボルトのゆるみや錆腐食による強度の確認など不備がないか、早期発見・対応することで児童・生徒の事故を未然に防ぐ点検制度の確立、②非常時の学校業務員の初動体制の確立、③学校業務員の職員体制が重要な行政組織として機能させていくための組織の再構築をめざしています。
 その一歩として学校事務センターへ学校業務員出身の主査級職員を配置することができました。その職員が、施設課・教職員課など教育委員会の各課と連絡・調整を行い、複数ブロック合同での大規模共同作業(以下支部作業とよぶ)を行う体制を作っています。

6. 今後の課題

 2011年度に教育委員会と組合で作っている学校業務職場研究会(以下、業務研とよぶ)で「非常時の対応」をテーマとした内容で会を開催しました。その会の中で「学校業務に関係ないこのようなことをしなければならないのか意味が分からない」「災害時の対応は行政職員の管轄で学校業務員には関係ない」「共同作業で余裕がないのにこれ以上無理だ」といった会員の声が上がりました。組合活動を行い学校業務部会へ参加している会員は、学校業務員がおかれている現状を理解しているため、このような批判的な意見は出しませんでしたが、組合活動もあまりせず、部会へも参加しない組合員から多くの批判が相次ぎました。組合活動家と一般組合員との認識の違いが浮き彫りとなる研究会となりました。
 また、非組合員は学校業務員の置かれている現状は知るべくもなく「一体、組合はどこまで仕事をさせるのか?」と言った労働強化と誤った認識をもつ職員もおり、競合単組の組合員は、学校業務職場全体のことを考えようとせず、主導権ばかり握ろうとして反対意見を言うのみです。当局もこのように正反対の考え方を持つ組合とのかかわりに適当な距離を保とうとして、前に進むかじ取りをしようとはしていません。
 その他に、重要な行政組織として機能させていくための組織の再構築をめざすということは、権限をどうするのか?責任の所在はどこにあるのか?具体的に明確にしていかなくてはなりません。
 2014年度より、再任用制度が開始されました。広島市では他部局出身の再任用職員が少なくなり(今までは、再雇用職員)、65歳以上の5時間45分勤務の臨時職員が増えました。また、公募で、年齢の若い職員を臨時職員として採用しようとしています。
 危険な電動工具を扱うことの多い学校業務員は、一定の年齢以上の方や使用方法が未熟な方が多くなれば、それに伴い労働災害が多くなると予想されます。広島市は、労働安全衛生活動に消極的ですが、今後予想される災害を、ゼロにするためにも労働安全衛生に今まで以上に取り組まなければなりません。

7. 最後に

 さまざまな課題のなかで共通していることは、「必要とされる学校業務員とは?」「学校業務員のプロとは?」ということを日々考え、答えを出していくことだと思います。この仕事に対し、誇りをもって定年まで働き続けられる職種にしようと組合員をふやし、課題を克服していかなければなりません。そのための一歩一歩ではありますが、仲間づくりをし、学習会を企画し、組織拡大・組織強化をしていきたいと思います。
 また、次世代を担う若手役員を育成し、駅伝のように次世代へ安心してタスキを渡せるよう頑張ります。




資料1 あり方検討会議資料
資料2-1 学校業務員(年度別年齢人数)
資料2-2 学校業務員(職名別人数推移)
資料2-3 学校業務員(経験年数の推移に対する考察)
資料3 学校業務員が習得すべき技術について