飯南町職員組合は、組合員数114人(2013年4月1日現在)で構成しているが、合併した2005年と比較すると8年間で30人以上の減少となっている。理由は他の単組も同様な面があると思われるが、職員の早期退職とそれに伴う合併効果を前面に打ち出すことを目的とした正規職員の不補充によるものが大きく影響していることは容易に推察できる。なお、飯南町独自の特性として更に考えると、町立学校において校務技術員の退職に伴う人員の減少を臨時職員雇用で対応していることや、町立保育所において保育業務を社会福祉協議会へ委託したことにより、町職員として保育所職員を採用しなくなったことも挙げられる。
このような状況の中、はたして住民が期待している公共サービスを提供できる状況にあるのかどうかについて考えを整理してみた。
ここ数年、財政健全化を旗印に行政経費の削減に向けた取り組みを各自治体が進めているが、その中でもこれまで公共サービスとして自治体職員が実施することが当然であった業務を、外部委託や臨時職員の雇用などによる方法で人件費を安易に削減する流れが加速していると感じられる。これは、まず始めに内部の見直しを行って、その後で住民にも痛みをお願いするという手法であり、それを全否定するつもりはさらさらないところであるが、何か釈然としない違和感を感じるのも事実である。飯南町でも先に述べた校務技術員や保育所職場の状況がそれに該当すると思われるが、現在、これらの業務に当たっている組合員はこうした人件費削減の手法による影響を不安視しているところである。
賃金水準や労働条件が異なる職員が同じ職場で働くとき、様々な場面で自分と他人を比較することは人間として充分あり得ることだと思う。「あの人は私よりも多く給料をもらっているのに、仕事内容が全く同じなのはおもしろくない。」「待遇が違うのだから、私はそこまで頑張らなくてもいいだろう。」と考えることはしばしばあるだろうし、そういった状況が続いていくと、仕事に取り組むモチベーションに影響しないとは言いがたいところである。
「暮らしの安心・安全を守る質の高い公共サービスの確保」を考えた時、まず第一に公共サービスを受ける立場の方は、どこに住んでいたとしても一定水準のサービスを受ける権利があるのは基本中の基本となっている。これに対し、各自治体が財政効果だけを理由とした業務の民間委託等を行い、様々な雇用形態の職員が同じ業務をこなしていく環境を作っていくことは、公共サービスの質の低下を招く危険性を充分に持っていると言わざるを得ない。
保育所・学校を例にとるならば、そこに通う児童・生徒及びその保護者は安全・安心に通える場所という認識を持っているはずである。当然、その場所がより楽しく学べる場所となることを誰もが期待しているなかで、その逆となるような子どもを安心して預けることができない場所になることを望む者はいないだろう。
もちろん、子どもを預けることができないような極端に劣悪な環境になることはありえないと思うが、質の高いサービスを安定して提供するためには、職員の労働意欲を衰えさせない取り組みが不可欠であると思う。それが、労働環境に対するものなのか賃金に対するものなのか、それ以外の別の要素になるのかはわからないが、職場の充分な状況確認と検討の上に成り立たなければならないものである。そういったことがなされないまま、安易な民間委託等を実施すれば、公共サービスを受ける側・提供する側双方にとって不幸な結果を招くことになるのは想像に難くない。労働意欲を減衰させない取り組みがあってこそ、その職場に勤務する職員の仕事に対する共通の目的意識によって、より良いサービスを提供できる基盤が構築でき、住民が求める質の高いサービスにつながると思われる。
特に地域住民としての顔も併せ持ち、その中でも比較的に中核としての役割を求められる地方自治体の組合員は、公私とも住民に注目される中、何とか良いサービスを提供しようと、自分が住んでいる地域のために懸命になっているところである。その努力を無駄にしないためにも、労使とも現在の職場のあり方をしっかりと検証し、本来あるべき姿を共通の認識として持つ必要があるのではないだろうか。 |