【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

町民参加のまちづくりに向けて
―― 情報の一括集積の必要性 ――

島根県本部/邑南町職員組合・組織対策部 一岡 洋治

1. はじめに

 邑南町職員組合では、2011年にレポートした「町民参加のまちづくりに向けて~自治会行政連絡担当職員の設置~」について研究した。この研究は次のとおりであった。

(概 略)
 町民参加のまちづくりには「町民と行政の協働」と「地域の自治機能の向上や自立」が必要である。
① 「町民と行政が協働」するためには
  町が積極的に情報提供し、まちづくりへの町民参加の機会と場の拡充をすることが必要である。そして町民と行政が同じ情報を共有し町民自ら積極的に町政に参加し、町民の意向をまちづくりに反映することが重要。
② 「地域の自治機能の向上や自立」を図るには
  世帯数の減少、高齢者世帯の増加、少子化等により自治機能が低下した集落を再編する必要があった。みんなが力を合わせると強い力になるという発想から、複数の集落を自治会として新しいコミュニティに集約した。
  (地域コミュニティの再編成)
  これらを円滑に推進するため2011年に自治会行政連絡担当職員が配置された。今後の活動が期待される。
まちづくりの過程

 このように、自治会行政連絡担当職員の役割には、「町民に行政情報を発信すること、町民の意見や意向を受信すること」が大きな役割である。
 今回のレポートでは、「町民の意見や意向の受信」について検証していく。
 町民の意見等を受信するところは自治会行政連絡担当職員だけではなく、それよりも前に公民館がある。また、邑南町職員育成基本計画の一環として、本年より始まった若手職員育成研修の中でも、地域住民の意向調査がある。これら3つの施策の「受信」について、情報の共有化が出来ているかあらためて検証する。

2. 公民館全館に町職員の公民館主事を配置

 邑南町内には12の公民館があり、その全てに町の正規職員が配置され常駐している。
 各公民館主事は「ふるさとを知り、人をつなげる公民館」をめざし、地域の人々の要望と地域社会の要請に応えるべくさまざまな事業と活動を展開している。又、地域づくりの拠点施設としての役割も公民館が担っており、各主事は地域の中に溶け込んで業務をこなしている。
 町の正規職員が配置されている利点は次の2通りあると思われる。

(1) 住民から見た場合のメリット
① 身近で困っていること等への行政支援の紹介がスムーズに行われる。
② 日々職員が行政情報を蓄積しているため、各種補助金制度など地域の相談窓口になりえる。
③ 職員は研修機会が多いため、質の高い事業の提供が期待できる。

(2) 職員から見た場合のメリット
① 住民目線で物事を見ることができるようになる。
② 今まで培ってきた得意分野を発揮できる。
③ 地区の住民の方と強い絆ができる。
④ 行政の様々な課への各地区の情報提供が素早くできる。

 邑南町の公民館は教育委員会管轄で直接町行政の窓口にはなっていないが、町職員が配置されているが故に、自然と各種会合などで町行政の情報伝達が行われている。
 このように公民館は、町民と密接に関係しており町民の意見や意向を多く「受信」できる環境にある。また、公民館は複数の自治会が繋がるコミュニティの場という性質を持つ。自治会を超えた情報が集積される場でもある。

3. 自治会行政連絡担当職員の配置

 自治会行政連絡担当職員は、2011年に設置され2年目を迎える。自治会行政連絡担当職員は、「定期的に自治会に出向き、町からの行政連絡事項の説明を行い地域住民への周知を図るとともに、様々な意見を聞き取り、町へ報告し、今後の施策立案や行政運営改善の糧とする。」という目的があるため活動状況を調べてみた。また、町職員がどれだけ自治会役員として活動しているか、又自治会行政連絡担当職員であり自治会役員としての職員もいるため役員として出席した実績も併せて調べた。

自治会行政連絡担当職員の活動状況(2012年度)
自治会数 自治会行政
連絡担当職員数
自治会に出向いた回数 1自治会に出向いた
平均回数(年)
(①役員として
も含む)
(②職員として
のみの回数)
39自治会 49人 98回 63回 2.5回 1.6回

自治会役員中の町職員数(2013年度:39自治会)
職員の自治会役員者数 うち行政連絡担当職兼務 ひとり以上の町職員が
役員である自治会数
62人 16人 25% 28自治会 72%

 自治会行政連絡担当職員は、設置要綱により全ての自治会に配置されており、町からの行政連絡の説明や様々な意見を聞き取り、町に報告する義務がある。町民が聞きたい時と、行政が伝えたい時のタイミングの調整役として重要な役割を果たしているが、自治会からの要請がないと、担当職員も会議参加ができないこともあり、各自治会によって要請頻度にばらつきがある。また、自治会行政連絡担当職員としての立場での年平均出席回数は1.6回と少なく見えるが、39自治会中、28自治会に職員が自治会役員として活動しており、自治会行政連絡担当職員の役割も担っていることが分かる。
 自治会行政連絡担当職員の役割は、前文で述べたとおりだが実際には、「町民に情報を伝える」「町民からの意見要望は、担当部署に伝える」ところで留まっているようである。
 一つの自治会からの情報を収集でき、公民館とは違いこまめな情報を「受信」できる自治会行政連絡担当職員の情報をもっと利活用できる場が必要である。

4. 若手職員育成研修について

 邑南町では、地方公共団体における増大化・複雑化してきた行政需要の中、「日本一の子育て村」「A級グルメのまちづくり」等を掲げて今後も新たなまちづくりを推進していく。
 「限られた財源」と「限られた人材」の中で、今後新たなまちづくりに取り組んでいくためには、住民からの信頼感等の基礎的な能力向上はもちろんのこと、地域住民等とのパートナーシップを進めるスキル、時代を見据え、地域の独自性や現状に根差した政策を立案し、実行することのできる政策形成能力などがますます求められていくことになる。こうした課題に積極的に対応できる人材を育成するため、職員育成基本計画の一環として若手職員の育成に取り組んでいる。

(1) 若手職員の役割
 理想像は、「高いコミュニケーション能力をもち、分権時代の新たな地方自治を担える職員」。
 本町が新たなまちづくりに取り組んでいく上で、社会の変化に即応し、自らのもつ可能性や能力を最大限引き出すことのできる元気で実行力のある公務員であること。

(2) 若手職員育成の取り組み
 邑南町が取り組んでいる「日本一の子育て村」「A級グルメのまちづくり」等の各種施策をより充実させるために、地域住民が真に必要としていることの調査が必要である。これらの調査を実施することと併せて人材の育成を進める。地域に飛び出す公務員として、各地域住民の生活の拠り所となっているコミュニティに積極的に参加させることを目的の一つとして、「地域住民が真に必要としていることの調査」を若手職員に実施させる。
 このことは、若い職員の目線から地域住民の意見や意向を探ることができ、違った角度からの情報を「受信」できるメリットがある。