【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 このレポートは著者が川本町の地域コミュニティの課題についてスポーツを解決手段として行政職員に求められるものは何かということを論じたものである。



川本町における地域コミュニティの再生


島根県本部/川本町職員組合

1. 川本町の現状と課題

(1) 川本町の概要
 本町は、島根県のほぼ中央に位置する典型的な中山間地であり、総面積106.39km2で東西に16.5㎞、南北に10.5㎞の台形をなしている。町の中央部には、総延長192.0㎞の中国地方随一の一級河川「江の川」が貫流し、町を東西に2分している。町は大きく3つの地区(弓市、因原、三原)にわかれ弓市地区は行政機関等が集中する中心地、因原地区は商業地、三原地区は農村地域となっている。
 交通については、江津市と広島県三次市を結ぶJR西日本の三江線と石見交通の生活交通路線バスが広島市まで運行している。主要道路については陰陽を結ぶ国道261号線が本町の南西端を通過し、これを連絡する主要地方道川本波多線が町の中心を走っている。また中国横断自動車道広島浜田線などの高速道路によって、広島県との時間距離は1時間30分程度となり広島市との経済的な繋がりが強まっている。
 町の人口は2010年の国勢調査人口3,900人(高齢化率41.5%)と1995年の調査5,099人(高齢化率30%)を比較すると、急激な人口減少、高齢化が進んでいる。近年の人口減少と高齢化率の進展により1次・2次産業をはじめ町の主幹産業の第3次産業も、急速に衰退している。特に本町はこれまで国・県等の行政機関の集積による経済効果に支えられてきたところが大きく、なかでも県の組織再編による県職員の減少は商店を中心として町の経済に大きな影響を及ぼしている。

(2) 川本町の職員構成
 川本町の課題に触れる前に町の職員構成に触れておく。川本町の役場職員は2013年度当初で59人(嘱託員・臨時職員除く)の職員が勤務しており職員構成は以下の図表のようになっている。

表1 年齢別職員構成
20代以下 30代 40代 50代
14人 15人 17人 13人
図1 町外出身者割合

(3) 課 題
 私は町外出身者で川本町役場に勤務してから4年が経過した。役場への就職を契機に川本町で生活するようになり職場の仲間や町民の皆様に支えられて現在の私がある。わずかな期間ではあるが川本町で生活するなかで感じた地域コミュニティの課題について述べたい。
 「地域コミュニティ」とは地域住民が生活している場所、すなわち教育、スポーツ、祭り等に関わり合いながら、住民相互の交流が行われている地域社会、あるいはそのような住民の集団のことである。川本町においては自治会や各集落規模でみると昔からの祭りや運動会、学芸会等の開催などコミュニティを維持できている。しかし、町全体が1つのコミュニティとして機能していないように私は感じている。図2の主要地区位置図のように主要地区が町内に点在しているため連携がとりにくく、主要地区間で過当競争が発生しているように感じる。
図2 主要地区位置図
 では、川本町が1つのコミュニティとして機能するためにどうしたら良いのであろうか。私は「スポーツ」を解決手段としたとき、行政の役割について次から述べる。

 


2. 「スポーツ」と職員の役割

(1) スポーツの重要性
 「スポーツ」には体力の向上とともに大切な役割がある。スポーツは元来、強制されるものではなく楽しむことを目的としており、スポーツを通じて連帯感を生むことができる。
 地域における「つきあい・交流」、「信頼」などを置き去りにしては社会資本が整備されたとはいえず、「スポーツ」の奨励をすることで、ソーシャルキャピタルとしての社会資本整備にもつながる。
 このように、「スポーツ」は地域コミュニティの構築において重要な役割を担うといえる。では、「スポーツ」をどのような方法で用いれば町全体のコミュニティの活性化につながるのであろうか。私は「町内運動会」を復活させるべきだと考える。

(2) スポーツと職員
 2011年3月に川本町では地域住民により自主的・主体的に運営される総合型地域スポーツクラブが立ち上がり、子どもから高齢者までそれぞれの志向やレベルに合わせてスポーツに参加できることが可能となった。これによりスポーツで地域を活性化させようという機運が高まりつつある。また、スポーツクラブのコーチやスタッフ等で関わりを持つ役場職員も多く、地域のスポーツ振興の一翼を担っている。

(3) 職員の役割
 では、「町内運動会」を開催するために職員に求められることは何であろうか。行政側から呼びかけるだけでは実現しないように感じる。まずは、職員一人一人が各地域において「顔」をもつこと、特に町外出身職員においては必須だと感じる。小規模な自治体職員であれば住民の方々に知っていただき、また知らなければ仕事にはならない。また、業務以外でも知ることが望ましいと考える。川本町では図1のように町外出身職員が2割を占めており年々増加傾向にある。町外出身者が増えることについて異論は無いが、町外出身であるからこそ積極的に地域に出てコミュニティの活性化を担い「顔」を売ることが必要ではないだろうか。「顔」を売り、職員が地域の方々に信頼されて初めて、行政と住民との協働関係が作れるのではないだろうか。地域に溶け込んだ職員が情報提供を行い、また地域からの要望を吸い上げることが「地域コミュニティ」の活性化につながる。

3. まとめ

 以上のことから、町全体の「地域コミュニティ」の活性化のために、「スポーツ」を手段として用いることが必要である。「町内運動会」を開催し、集落間の住民の関係を再構築することと、運動会を開催するためには、職員が地域の「顔」となるべく職務や私生活において地域に出て行くことが必要である。