1. はじめに
清掃部門や学校給食調理員など、いわゆる「現業」と呼ばれる職種の公務員をターゲットにした攻撃が全国的に行われています。
大分市においても過去に2つの大きな行革交渉を行ってきましたが、組合としてはその際、当局からの提案を合理化攻撃と捉えず、市民サービスの維持・向上と自らの業務を確立する機会として、行政責任の確保を第一義に、正規職員を配置する必要性の明確化と業務の確立をめざして取り組んできました。
本レポートでは、2012年度に取り組んだ行政改革交渉において、組合側からの提案で実現した新たな「清掃指導業務」について、執行部役員の立場から報告します。
2. 現 況
(1) 大分市の状況
・人 口 478,179人(2014年6月末現在)
・世 帯 数 212,008世帯
・自 治 区 688区
・ごみステーション 10,800箇所
(2) 組合の概要
・組合員数 1,954人(2014年6月1日現在)
・執 行 部 20人(うち、専従役員5人)
・分会組織 25分会
・現業評議会 19人
・清掃第一部会 12人(現業評議会内の組織)
・県本部現業評議会 2人(2014年6月1日現在)
■大分市職労の組織機構図(清掃職場に関連する部分のみ) |
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3. 行改に抗し、自治体改革闘争の趣旨を捉え"清掃指導員"確立
大分市の清掃職場では、2005年の行革交渉において「収集エリア(一部)の民間委託」「収集品目(一部)の委託」「指導員の増員・配置変更」などに合意し、体制が大きく変化していました。そうしたなか、2011年4月の大分市長選挙において、推薦候補が掲げたマニフェストに複数の行政改革項目があり、そのうちの1つの項目で「ごみ収集・運搬業務の見直し」が示されていました。その後、当局から「職員の大量退職期を迎えるなか、正規職員での退職者補充が困難な状況となっており、収集業務に必要な人員を確保するため、直営で行っている収集エリアの一部を民間委託したい」との考え方が示されました。
組合側(執行部、現業評議会、分会、部会)としては、「将来展望を見据えた職場のあり方」との視点にたったうえで、当局に対し"正規職員でなければならない業務"として、従来から各職場に配置されていた「清掃指導員」の業務内容を拡充するとともに増員させ、市民へ"ごみ分別"や"正しい排出方法"などを指導・啓発する「指導業務」を確立するという対案を示すなか、計5回にわたる協議を行いました。
最終的に、収集エリアについては段階的に民間委託する一方で、「清掃指導員」の配置職場についても拡大することとなり、2013年4月から実施されています。
■新たな清掃指導員の配置職場 |
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4. 新たな課題"家庭ごみ有料化"
大分市では、家庭ごみの減量とリサイクルを推進することとあわせ、ごみ処理に係る費用負担の公平性をはかることを目的に、2014年11月から「家庭ごみ有料化」が実施されることとなりました。(2013年第4回定例会において、付帯条件付きで議決)
今後、「家庭ごみ有料化」の実施に伴い市民の混乱を招かないよう、指導業務はさらに重要視されており、実施後を含めた指導体制の確立が急務となっています。
5. 課題の解消にむけて
(1) 各種交渉
① 2014当初予算交渉
2014当初予算交渉では環境保全に関する要求において「家庭ごみ有料化」について、市民の混乱を招くことのないよう、十分な体制を整え各自治会への説明等を行っていくことを確認しました。
② 2014現業評議会独自要求交渉
2014現業評議会独自要求交渉では、現場の職員も交渉に参加し、現場の職員の生の声として「家庭ごみ有料化」の環境部の対応の遅れを指摘し、今後、早急に市民への対応を職場と議論するように求めてきました。
③ 2014春闘交渉
2014春闘交渉において「家庭ごみ有料化」により市民に混乱を招かないように職場と十分協議し、事前の対応を徹底するよう求めました。
■要求内容と回答 |
「家庭ごみ有料化」にあたっては、市民に混乱を招かないよう対策を講じるとともに、職員に対しても十分な体制を整えること
(回答)
家庭ごみ有料化の実施に当たっては、市民の理解と協力が必要不可欠であることから、各自治体における説明会を実施させるとともに、その説明会に参加できない方を対象に市内13地区において4月及び10月に別途説明会を実施することとしている。また、市報や広報誌「リサイクルおおいた」、ホームページのほか、新聞やテレビなどのマスメディアを活用し、制度の周知徹底を図りたい。職員に対しては、1月15日から17日までの3日間、午後・午前の2回に分けて課長補佐級以上の職員に対する研修を実施し、併せて所属長に対して職員への周知徹底について依頼を行った。また、直接業務に従事する職員に対しても混乱を招かないよう事前の対応を徹底してまいりたい。 |
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(2) 組織内議員との連携
当局は実施後に想定される「課題や問題」また市民からの「苦情や要望」の対策について明確な答えを出さなかったことから、組織内議員と連携し、職場・市民が抱えている生の声を議会の場で代弁させることで、有料化に対する考え方を引き出すとともに当局(環境部)の姿勢を質してきました。
■質問と答弁(要約) |
① 住民の不安を払拭するため、丁寧な説明と理解を得る努力が必要と考えるが、今後の説明会のスケジュールは?
⇒ 全自治会での市民説明会の他に、4月・10月にコンパルホールや市役所・各支所など13会場で説明会を開催する。また各地域や団体から要望があれば対応したい。
② 実施後には、指定ごみ袋以外の「違反ごみ」の排出も想定されるが、その対応の事前周知は?
⇒ さまざまな周知方法に加え、職員が早朝にごみステーションで行う啓発活動について取り組みを継続する。
③ アパート・マンションの居住者や自治会未加入の方への周知も必要と考えるが対応は?
⇒ 9月頃に広報誌や指定有料ごみ袋の「お試し袋セット」などを全戸に送付し周知を図る
④ 市全体に周知するためには、あらゆる広報手段を使うことが必要だが、その手段は?
⇒ 市民説明会や「お試し袋セット」などの全戸配布の他に、テレビ番組、CM、ラジオ、新聞広告、ごみステーションでの周知看板の設置などを行う。
⑤ 実際に違反ごみが排出された場合の対応は?
⇒ ごみ袋に違反シールを貼り、ごみステーションに残し、排出者に「正しいごみの出し方」について指導する。
⑥ 残した違反ごみが鳥獣に荒らされることも考えられるが対策は?
⇒ 職員と自治会が協力し、ごみステーションのパトロールを行う。違反ごみが多発するごみステーションで排出者が特定できた場合は直接指導を行う。
⑦ クリーン推進員さんの中には、ごみステーションに貼るビラや回覧チラシを独自に作成している方も多いが何らかの助成はできないのか?
⇒ 必要なポスターや回覧チラシの作成等については、担当の清掃事業所で積極的に支援したい。 |
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(3) 市民意識アンケート
大分市職労は5月31日に「市職労クリーンキャンペーン」を開催し、そのなかで現業評議会は独自に「環境意識アンケート調査」を実施しました。項目では「大分市の分別」や「ごみ袋有料化」に関する質問を行い市民の生の声を聞いてきました。市民アンケートの結果にみると、回答者のうち9割は「ごみの12分別」ができていると回答していますが、12分別開始から7年が経過しようとしていますが、ごみステーションには依然として混載ごみ(違反ごみ)が排出されている状況であることから、今後は分別についての効果的な周知・啓発方法を当局へ求めていく必要があります。
また、「ごみ袋の有料化」については8割が導入に関して「知っている」と回答していますが、説明会には9割が「行かなかった」との回答でした。分別に関するアンケート結果に見られるように、認知(知っている)と認識(深く理解する)は必ずしも結びついていないことから、今後は実施後の混乱と市民サービスの低下を招かないよう市民へ深く理解をしてもらえるよう、事前の充分な説明や対策、周知など、指導啓発業務の確立を当局に求めていく必要があります。
■「環境意識アンケート」の概要 |
と き:2014年5月31日(土)
と こ ろ:大分駅上野の森口駅前広場
回答者数:87人
ア."ごみ袋有料化"が11月より開始されることを知っていますか?
⇒ 8割が「知っている」と回答
イ."ごみ袋有料化"の市民説明会に行かれましたか?
⇒ 9割が「行かなかった」と回答
ウ.「行かなかった」理由
⇒ 行かなくても分かる。
⇒ 日程があわなかった。
⇒ 日時・場所などを知らなかった。
エ."ごみ袋有料化"の周知方法に対する意見
⇒ ごみステーションに有料化のビラを設置する。
⇒ 各家庭に有料化のビラ等を郵送する。
オ."ごみ袋有料化"に対する意見について
⇒ 市民のごみ減量への意識高揚につなげる為にも賛成。
⇒ 家計に与える影響が大きいが環境面を考えると仕方がない。
⇒ 反対意見にも耳を傾けて欲しい。
⇒ ごみ袋有料化のみでごみ減量はできないので、他の取り組みも必要だと思う。 |
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6. まとめ
「家庭ごみ有料化」のみならず、大分市の環境行政の前進をはかるうえで「指導業務」は欠かせません。今後も、行政責任としての指導・啓発の充実強化を考えていくことはもちろん、当局に対してもその視点を持って住民サービスを充実させるよう求めていく必要があります。また、市民ニーズを的確に捉えるなか、職場段階でも日頃から「指導業務」の重要性について理解を深め、将来を見据えた業務内容を議論していく必要があると考えます。
7. おわりに
"市民が必要とすれば、職場はなくならない"
このことこそ、民間委託や職場合理化を撥ね返すことができる最大の戦術ではないでしょうか。
これまでの取り組みを通じて、私は"市民目線の自治体改革が、自らの職場を守る運動"ということを強く感じました。市民に最も近い立場の私たち自治体労働者は、市民目線で現在のサービスの充実・向上をはかるための運動を進めていかなければ、市民の理解を得ることは難しいでしょう。
自分達の仕事を市民に理解してもらい、必要性を感じてもらうことこそが、安易な民間委託や合理化攻撃を許さないための最大の取り組みであり、そうすることが結果として、私たちの職場と身分を守ることにつながっていくことを再認識しなければならないと思いました。
今後も、「市民が求めているサービスは何か」「市民のためにできる業務は何か」「公務職場だからこそできるサービスは何か」を模索し続け、自らの業務を職場から発信して創り上げていく取り組みを進めていきたいと思います。 |