【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第1分科会 住民との協働でつくる地域社会

 平成の大合併といわれた市町村合併で、県下でも数少ない自立の道を歩むこととなった大分県玖珠町の地域コミュニティ確立に向けた取り組み報告。



地域コミュニティの確立について


大分県本部/玖珠町職員労働組合

 平成の大合併といわれた市町村合併で玖珠町においては、県下でも数少ない自立の道を歩むこととなりました。2005年3月に「協働」「簡素」「効率」の三つの視点を基に自立の町づくりをめざし、「玖珠町行財政改革緊急4ヶ年計画が策定され、翌年度に1年延長したものとして、「玖珠町集中改革プラン・行財政改革5ヶ年計画」が策定されました。この計画の具体的方策の中で「住民との協働による地域づくりの推進」の中に、自己決定・自己責任の原則に基づき、「自分たちの地域は自分たちでつくる」という住民意識を醸成し……と謳われております。これを具体化するため2005年度に内部で検討・協議を重ね、地域コミュニティの確立に向けての取り組みを進めてまいりました。
 そして2006年度に、町内全域を4地区に分けコミュニティ運営協議会が設立され、自治会館を拠点に、地域住民が主役となって、地域みずからのまちづくりに向けて取り組んでいます。

1. 新しいまちづくりの背景

 玖珠町には288の自治区が存在し、コミュニティの基盤となっています。しかしながら、近年少子・高齢化や過疎化により世帯数が10戸以下の自治区が87箇所にのぼり、うち5戸以下が21箇所、高齢化率が50%以上の自治区が50箇所と地区での草刈や清掃、祭りなどの共同作業を継続することが難しくなっています。
 そのため、2007年度より自治区合併統合推進交付金要綱が設置され、自治区合併の推進が図られました。そのほか、国と地方の関係では、地方分権、市町村合併、行財政改革の推進等により、玖珠町においても職員数を2003年度約200人から2018年度には150人体制とした大幅な削減目標が設定されました。このため、従来と同じように行政が何でもやっていける時代ではなくなってきました。
 このようなことから、地域の住民一人ひとりがお互いに助け合って、みんなで地域の課題解決に取り組んでいくため、「行政がすること」と「住民の皆さんができること」を明確にし、行政がもっている権限と財源を地域に渡し、地域と行政が対等なパートナーシップを築きながら、住民が主役のまちづくりを進めることとなりました。

2. 組織づくりの取り組み

 現在の玖珠町は1955年(昭和30年)に「森町」「玖珠町」「北山田村」「八幡村」の4か町村が合併して誕生しました。これまで、この4か町村の区域を大きな地区として、様々な地域活動が行われてきました。そこで、4地区それぞれに、自治会・婦人会・老人会・各種団体などの地縁組織で構成する地域全体のコミュニティ組織づくりに取り組んでいます。
 まず、2005年度より組織の設立に向けての庁内会議を進めるとともに、自治会及び各種団体への説明会を開催しました。また、先進地視察を重ね、コミュニティ組織の活動状況を学んでいます。
 2006年度からは「森」「玖珠」「北山田」「八幡」の4地区に設置されていた社会教育法に定められた地区公民館の名称を廃止し、地域住民が自主的に活動でき、コミュニティ組織の拠点となるよう自治会館として位置づけられました。
 また、組織づくりがスムーズに行われるよう自治会館に館長と事務職員を配置し、研修や協議を深め、規約や組織の内容、自治会館の管理・運営、今後の活動などの素案作りを進め、地域の自治委員などと協議を重ねるなかで、組織の設立を進められました。
 そして、2006年度中に全ての地区においてコミュニティ組織が設立されました。玖珠町においては、「玖珠町コミュニティー推進条例」により、町民が自己の責任においていて行動し、互いの立場を尊重しながら自発的に交流することを基本理念に組織が設立されています。

3. コミュニティ組織

 協議会は、自治会・婦人会等を中心に、多いところでは30団体が参加し組織され、地域の中で役員等が決定されています。総会は組織の最高決議機関で、そのほか運営委員会や役員会があります。さらに生活環境部会、教育文化部会、健康福祉部会、地域づくり部会が設置されています。なお、地域が必要な事業などの企画、立案、実行までを協議会で行っています。

4. 協議会の運営

 運営については、基本的には、組織する住民の会費と町からの補助金で運営されています。町から組織への助成としては、2007年度から2009年度まではコミュニティ組織の運営費助成金として各地区均等に50万円が交付されています。
 2010年度からは、『童話の里コミュニティ推進事業』の補助対象事業を拡充し、各地区コミュニティ運営協議会におけるコミュニティ推進ための事業に対しても助成が行われています(各地区上限200万円)。
 また、地域のコミュニティ組織の求心力を強めるとともに、協議会が実施するコミュニティ活動の自主的かつ継続的な発展を図ることを目的に、2007年度に「コミュニティ基金造成助成要綱」に基づき、協議会が設置するコミュニティ基金の造成を助成しました。町からの助成金は全体で4千万円を限度とし、均等割の外、世帯数や人口に応じて4地区に助成しました。協議会では、地区住民からの負担金及び運営費の余剰金の一部を基金として積立を行っています。
 この基金の管理・運用については、地区で「コミュニティ基金規程」を定め、コミュニティ基金運営委員会を設置して、地区の活性化及び地域振興を目的として実施される地域づくり事業に対して、基金運営委員会で審査し、助成を行うこととなっています。
 このコミュニティ基金を元手に、協議会が中心となり、地域が抱える問題を解決しながら、新たな雇用を作り出すなどコミュニティ・ビジネスを行えると考えています。
 自治会館は、コミュニティ活動の拠点としてコミュニティ組織の活動のために利用されるほか、各種講座の開催など生涯学習の場として活用されています。
 自治会館の管理・運営については、2007年度より協議会がそれぞれの自治会館の指定管理者に指定され、管理を行っています。
 館長の賃金や会館の維持管理費、事務費、電気料・水道料などは、町から指定管理料として支払っています。また、建物の大きな補修等は町の持ち物ですので、町が行います。なお、住民の皆さんが自治会館を利用したときに支払った使用料はすべて、協議会の収入となり、活動のために利用されています。
 また、2011年度からはコミュニティ推進に伴う業務増大に対処するため、館長・事務員の2人に加え、臨時事務員(多忙時のみ)を基準内で配置することができるように、指定管理料に追加配分されました。

5. コミュニティ組織の活動

 活動は大きく3つあります。まず、「自治会単位では出来ない活動ができます」。少子・高齢化、核家族化などによって、単独の自治会ではできない活動が多くなりました。また、福祉・環境・教育など、それぞれの自治会に共通した課題や問題、さらに自治会の範囲を超えた地域全体の課題や問題に、地域コミュニティ組織で取り組むことができます。今までも地区体育大会や盆踊りなど、地区で取り組んでいる事業がありますが、それ以外の福祉や教育など広範囲な事業に取り組むことができます。
 次に、「地域の権限で事業を行うことができます」。町が行っている業務の中で、地域が行ったほうが効率的なものや住民サービスが向上するものは、地域コミュニティ組織で行えるようになります。これにより、例えば自治会館や公園などの管理・運営、自治会、子ども会、老人会等の育成といった、今まで行政を通さなければ行えなかった事業などを、地域ですばやく行うことができます。
 最後に、「地域独自の事業を行うことができます」。地域によって課題や問題はそれぞれ違います。また、住民の皆さんの要望・要求にも違いがあります。そんな地域ごとの課題やニーズに応じた事業を、住民の皆さんが考えて実施することができます。

6. 今後の課題

① コミュニティの役割等について、まだ、各地域に十分浸透しているとは言えない状況であり、特に若い方の参加が少ないため、今後は町民参加が得られやすい環境づくりと魅力ある組織づくりが求められます。
② 組織的には、少子・高齢化による人材不足が課題となっており、今後は地域やコミュニティを担う人材の育成が優先課題となります。
③ コミュニティ推進事業等については地域で配分するなど消化型となりやすいため、活用方法について検討する必要がある。
④ 地域資源をいかした活動で自主財源の確保に努めている地区はなく、運営資金のほとんどが補助金であるため、今後はコミュニティビジネス等による自主財源の確保についても検討する必要がある。
 玖珠町におけるコミュニティ組織は、本年度で9年目となりますが、まだ試行錯誤しながらの取り組みです。会長、事務局長会議の開催や地域づくりアドバイザーの設置により情報交換や地域課題の検討を行い組織の充実と発展を図り、住民と行政との協働のまちづくりを推進していくことが重要となります。