【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第1分科会 住民との協働でつくる地域社会 |
竹田市は山林が総面積の65%を占め、そのうち竹林面積は540haにのぼります。現在、高齢化率が40%以上というこの超高齢化が進む自治体において、15年前に「たけた竹灯篭 竹楽」は始まりました。多くの人たちの手で作りあげる竹楽の一翼を「市職の人」が担うことにより、地域住民との距離を縮め、協働という実を結ぶことができました。一過性のイベントではなく、循環再生的構造の構築が至上命題となっているこの竹楽の取り組みについて紹介します。 |
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1. 竹田市の概要
竹田市は、大分県の南西部にあり、熊本県と宮崎県に接しており、九州のほぼ中央に位置しています。周囲をくじゅう連山、阿蘇外輪山、祖母傾連山など九州を代表する山々に囲まれた中山間地で、大分県一の流路延長を持つ大野川源流を有しています。一日に数万トンの湧出量を誇る湧水群が点在し、水と緑があふれる自然豊かな地域を形成しています。 2. 竹楽を始めた経緯 竹楽の始まりは、16年前に遡ります。合併前の旧竹田市においては、1997年に農林業・商業・観光が三位一体となった活力と風格のある地域振興を推進していくためのエコミュージアム(生活環境や伝統文化そのものが博物館)構想をコンセプトとして、竹田市観光振興計画が策定されました。この計画は、竹田市の歴史や文化、自然を基調として、居住者自身が生活を楽しみ、外部からのお客様を迎えることにより交流の輪を広げ、農村環境保全や商業の活性化させていくことを目的としていました。そしてその先には、その主役である市民が町並みの再生や文化の創造を一体となって進めていくという将来像を描いていました。 3. 竹楽の特徴 竹楽に使用する竹灯篭は、一定の比率によって組み合わされた三本組みを基本としています。彫刻による造作や和紙、セロハンを貼るなどの加工は基本的に行いません。また、灯りも専用のロウソクを使用し、電飾等は使用しません。全てが自然体にこだわったものとなっています。並べる場所にもこだわりがあり、神社や仏閣、歴史的風景が残っている道路の地形をいかした演出を心がけています。そのような市街地の象徴的エリアにおける竹灯篭の風景を「竹楽八景」として認定しています。三本組みの竹灯篭という極めてシンプルな灯りをどこに置くのか、はたまた置かないのかなどそのバランスによって光と闇、建物と影のコントラストを演出していくわけです。竹灯篭を並べるという演出には、その場所が醸し出す独特の空気を熟知しておく必要があり、「竹楽八景」の制作を任せられている団体は化粧師と呼ばれています。竹田市職員労働組合も化粧師の一つとして演出を任せられています。 4. 市職労(竹田市職員労働組合)との関わり 現在、竹楽は、NPO法人里山保全竹活用百人会と竹田市の主催により開催されています。NPO法人里山保全竹活用百人会の役割については後述します。もう一つの主催者である竹田市は竹楽を円滑に運営するために毎年補助金を予算化し交付しています。具体的な内訳は、竹楽のイベントそのものに対し約300万円、里山保全活動(伐竹作業を主とする)の人件費として約200万円、竹楽開催期間中の警備業務委託料として約100万円の合計約600万円となっています。竹楽の運営業務内容はいくつかの部会に細分化されており、竹田市(主管課は商工観光課)は竹楽そのものの企画に携わる企画委員会とお客様の誘導をつかさどる交通委員会に所属しており、業務の遂行にあたっています。 5. NPO法人里山保全竹活用百人会とは NPO法人里山保全竹活用百人会は、竹田市内の事業所(商工会議所、農協、銀行、郵便局、建設業、商店街等)で構成されています。主として、里山の環境保全作業と間伐された竹(モウソウチクやマダケ、そのほかの各種用材)等を活用する放置林活用対策事業を行っているグループです。さらには、竹の新用途研究開発事業や地域経済の振興、環境保全に寄与することを目的とした事業を展開していくことを計画しています。 6. 竹楽のこれから 竹楽は、里山の保全と資源の新たな活用をテーマとしてこれまで様々な分野で取り組みが進んでいます。その一つは循環再生的構造(ゼロエミッション)の構築です。竹灯篭は灯篭としての役割を終えると竹炭や堆肥にしてムダなく資源として再利用されています。また、竹楽関連商品による収益は里山トラストとして、里山を長期間に渡って保全していく計画に利用されます。この循環構造を経済再生モデルとして、環境問題と経済の両立をめざしていきます。その中に人は必要不可欠であり、「市職労の火」を消すことなくこれからも主体的に地域住民と協働していくことが求められています。 |
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