【論文】 |
第35回佐賀自治研集会 第1分科会 住民との協働でつくる地域社会 |
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1. 出口の見えない行政改革 1994年、当時の自治省からの「地方公共団体における行政改革推進のための指針」をうけ、翌年、直方市においても、民間有識者、住民代表、市議会代表などによる「行政改革推進委員会」と、労使代表による「行政改革推進本部」が設置された。 |
2. 行政改革の方針変換 行政改革の考え方が変わる一つの大きなきっかけとなったのが、市立保育園の民営化であった。市立保育園の民営化は、行政改革推進計画に掲げられてはいたが、職員の努力により入所児童数を増やすことで議論には上がらず、直営を維持していた。 |
3. 公契約改革の必要性 行政のみが公共サービスの担い手であることは、質的にも量的にも限界である。どこの自治体でも、電算システム構築・管理、コンサルへの調査業務委託、業者への工事発注など、ちょっと見渡せば委託業務はたくさんあり、アウトソーシングしなければ行政運営は成り立たないといっても過言でもない。 |
4. 公契約条例制定へ 2011年、現職市長3期目の推薦決定にあたり、雇用継続、地元雇用・地元調達、労務報酬下限額設定、各労働法規の遵守といった公契約条例に係る部分と、公共サービスの評価と中長期的な財政計画に必要な公会計、そして、これらの実効性の確保のための情報公開、住民参加という自治基本条例に係る内容について、政策協定を締結することとした。
(選対事務所の判断により大きく変わってしまったが)組合がマニフェスト作成を任され挑んだ選挙は、東日本大震災の影響もあって投票率が下がり、現職には大変厳しいものとなったが、なんとか推薦候補が当選することができた。そして、方針を新たに行政改革に取り組もうとしたものの、だれもがこのままではいけないとは思っていても、当局はもとより、組合も慣れた10年来の方法を手放すことができなかった。 |
5. 新たな気づき~人材の流出・地域の疲弊 公契約条例審議会は5回開催されたが、そのなかで、使用者側委員の建設会社社長から、「このままでは、10年もすれば市内に建設業の技術者はいなくなり、隣のまちから高いお金を払って連れてこなくてはならなくなる。まちづくりができなくなることをあなたたち(市役所)はわかっておかないと。」との発言があった。 |
6. 同一価値労働・同一賃金の確立 公契約の関係する分野は、建設・土木、印刷、清掃、給食調理、福祉、教育など幅広く、公共交通や水道の分野でも多くの人が働いており、その市場規模は7兆円を超えるといわれる。業務内容は、継続して必要とされる役務の提供が多いため、安定した雇用による熟練と専門性の維持が求められる。その雇用を一定期間で途切らすということは、育成に投資したお金を無駄にし、また一から人材育成を行うことになるため、決して効率的とは言えない。 |
7. 周りの人を引下げる平等でなく、全体を引上げる平等を 2013年12月、公契約条例は議会で可決され、2014年4月より施行された。公契約条例とともに進めた公会計制度も2014年度に導入されるが、まだまだ、組合員どころか役員間でも、そのツールを使って達成していく「目標」の共有ができているとは言い難い。 |
8. 労働運動と自治研活動を両輪で 働く時間は正社員並みでも賃金は著しく低く、各種手当、社会保障等も手薄といった劣悪な環境におかれる労働者が、地場中小企業、若年・女性層を中心に増え続けている。 |