【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第2分科会 地方税財政と公共サービス |
2014年3月、国は能力及び実績に基づく人事管理の徹底及び等級別基準職務表の条例義務化などを中心とした「地方公務員法の一部を改正する法律」を成立させ、自治体へ職場環境の悪化を招く恐れのある「人事評価制度の導入」を行財政改革の名のもとに強制させようとしている。行財政改革は本来、地域に活力をもたらすために行われてきたものであるが、国が強制させる行財政改革は、地域を切り捨て、我々地方公務員の職場環境をも疲弊させていることは明らかな事実である。本レポートは網走市の行財政改革の背景でその実態がいかなるものかを研究し、本来あるべき行政改革について考察する。 |
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1. はじめに 度重なる自治体の行財政改革(以降「行革」)の流れはとどまることを知らない。網走市においても第3次行政改革推進計画に基づき、2011年、網走市役所労働組合連合会は市当局より「賃金の独自削減」提案を受けるに至った。 |
2. 網走市における行財政改革の推進経過 (1) 地方分権時代における網走市の行財政改革 (2) 三位一体改革下の網走市の行財政改革 (3) 地方交付税削減下の網走市の行財政改革
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3. 網走市における行財政改革下の職場環境 国の行政改革の影響を受け、網走市では「退職者不補充」、「外部委託の導入」、「職員定数の削減」、「職員給与の抑制」等々、様々な改革に着手し、その度ごとに職場環境の変化を余儀なくされてきた。 (1) 職員定員数削減下の職場環境変化
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(2) 賃金抑制政策下のモチベーションの低下と地域への影響
(3) 独自削減の受入れと地域格差の拡大 |
4. 第3次行政改革推進計画に見る当局の思惑と行革がめざすべきもの 2011年11月、網走市において新たに作成された「第3次行政改革推進計画」(2011~2015年)(以降、第3次計画)は、少子高齢化による社会保障費の増大、東日本大震災による復興財源の確保から、今後、地方交付税の増額が見込まれないとの立場から、より一層の「財政健全化」、「市民満足の向上」に取り組むとの視点で計画が立てられている。 |
5. おわりに 2013年12月、政府は「給与制度の総合的見直し素案」を人事院へ提示し、2014年5月、人事院は素案よりも一歩進んだ「措置事項案」を示した。内容は、地方交付税の大幅削減、地方公務員の給与水準の引き下げ、地方公務員の諸手当の見直しを目論むものであり、今後は自治体の自主的行革に止まらず、政府が直接、地方公務員給与の削減を行うことを示す内容である。また、2014年3月、政府は人事管理の原則、等級別基準職務表の条例義務化などを中心とした「地方公務員法の改正案」を閣議決定し、4月に衆議院、参議院にて賛成多数で可決・成立させた。法律を盾として今後ますます、自治体へ「人事評価制度の導入」を推し進めてくることが予想されている。 |