【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第2分科会 地方税財政と公共サービス

 2014年度自治労新潟県本部自治研集会において臨時・非常勤職員課題についての作業グループを作り、新潟県内における各自治体の状況や保育園及び一般事務職の「臨時・非常勤職員」等の現状・課題・問題点について報告し、今後のあり方について問題提起するものである。



自治体の臨時・非常勤職員の実態とあり方
―― 自治労実態調査における現状報告と課題 ――

新潟県本部/自治研推進委員会・第4分科会

1. はじめに

(1) 県内各自治体における臨時・非常勤職員の職域・人数等の実態(自治労2012年実態調査より)
① 総体として
  職種として10区分、臨時・非常勤職員の総数は14,504人となっています。
  【A.保育士 B.学童指導員 C.学校給食関係職員 D.学校用務員 E.図書館職員 F.看護師・准看護士 G.消費生活相談員 H.ケースワーカー I.一般事務 J.その他】
② 主要自治体での人数について
  新潟市3,787人、上越市1,665人、新潟県1,655人の3自治体で7,107人(49.0%)となっています。
③ 職種的な人数について
  保育士4,294人(29.6%)、一般事務3,471人(23.9%)、その他職種4,239人(29.2%)と3職種で82.7%を占めています。

(2) 県内各自治体における臨時・非常勤職員の構成比率(自治労2012年実態調査より)
 各項目について、全体数や職種についての新潟県内上位3自治体をグラフ化し視覚化しました。
① 各自治体での臨時・非常勤職員の構成比
  構成比の多い順……新発田市50.1%、燕市49.5%、聖籠町49.0%が約半数近い水準となっています。
② 保育士職場での臨時・非常勤職員の構成比
  構成比の多い順……糸魚川市76.6%、新潟市71.9%、村上市69.3%で高い水準です。
③ 一般行政職場での臨時・非常勤職員の構成比
  構成比の多い順……新発田市36.9%、柏崎市34.5%、十日町市33.7%が高い自治体です。
④ その他、構成比の高い職種
  学童指導員・消費生活相談員がほぼ100%に近い水準です。
 これら県内自治体の数値の状況からしても、一口に臨時・非常勤職員といっても自治体の規模・組織体的事情や職種によって大きな差があり、正規の公務員と比較して非常に労働条件が厳しいにも関わらず、問題が顕在化しにくい、また組合のような組織化がほとんどされていないこともあり、働く者としての声を上げにくい現況が容易に理解できることと思われます。

2. 臨時・非常勤職員の推移

(1) 自治労調査結果の推移
① 自治労調査
  自治労調査では臨時・非常勤職員の数値を調査しており、2008年と2012年に実施しています。一部調査対象職種が異なっていることや回答がなかった自治体がありますが、概ねの実数を把握することができます。
② 4カ年の変化・推移
  2008年では総数7,738人(うち保育士1,591人)であり、2012年では総数9,062人(うち保育士2,526人)です。4カ年変化では総数として1,324人(うち保育士935人)増加しており、率にして17%(うち保育士58%)増加しています。一部自治体回答がないものもあるため、単純ではありませんが、4年間で増加していることがわかります。特に保育士では伸びが顕著になっています。

3. 保育園における臨時・非常勤職員について

(1) 自治労組織実態調査における保育士部門の結果
① 任用(採用)の法的根拠は、地公法第22条根拠が8自治体、同法第17条根拠が12自治体、同法第17条根拠と思われる自治体が2自治体、不明と回答した自治体は2自治体となっています。
② 週あたり勤務時間は、第22条根拠自治体では「正規と同じ」が最も多く6自治体、「正規の3/4以上」と「正規の1/2」と回答した自治体がそれぞれ1自治体となっています。逆に第17条根拠の自治体(17条根拠と思われるも含め)では、「正規の3/4以上」と回答した自治体が最も多く10自治体、次いで「正規と同じ」が3自治体、「正規の1/2」が1自治体となっています。
③ 賃金の形態は、法的根拠による違いはみられませんでした。時給制が11自治体、日給制が9自治体、月給制が5自治体となっています。
④ 昇給制度の有無についても法的根拠による違いはみられませんでした。昇給制度が有りは6自治体、無しは18自治体となっています。
⑤ 契約上の雇用期間は、第22条根拠の自治体では「6ヶ月未満」が4自治体、「6ヶ月」が3自治体、「1年」が1自治体となっています。逆に第17条根拠自治体(17条根拠と思われるも含め)では「1年」が9自治体で最も多く、次いで「6ヶ月」と「6ヶ月未満」がそれぞれ2自治体、「6ヶ月以上1年未満」が1自治体となっています。
⑥ 雇用年数の限度は、第22条根拠自治体で「上限なし」が7自治体、「1年」が1自治体となっています。第17条根拠の自治体(17条根拠と思われるも含め)では、「上限なし」が5自治体、「5年」が5自治体、次いで「1年」が2自治体となっており、「5年を超える」と「3年」と回答した自治体がそれぞれ1自治体となっています。
⑦ 一時金(期末手当等)支給の有無については、第22条根拠の自治体で有りが5自治体、無しが3自治体となっており、第17条根拠自治体(17条根拠と思われるも含め)で有りが5自治体、無しが9自治体となっています。この結果、第22条と第17条の条例により自治体の対応は大きく分かれており、第22条根拠の優位性が現れています。それ以外の手当の支給については、法的根拠による違いは見られませんでした。
⑧ 休暇制度については、休暇日数等が不明なため一概に比較はできませんが、私傷病休暇と育児休暇においては第17条根拠自治体(17条根拠と思われるも含め)のほうが付与されている自治体が多いようです。

(2) 正規職員との関連
① 保育園職場における正規職員数を基本とし、臨時・非常勤職員数が正規職員数を下回る自治体は、加茂市・阿賀町・南魚沼市・湯沢町・三条市の5自治体となっています。
② 臨時・非常勤職員数が正規職員数を上回る自治体は17自治体となっています。その中で正規職員数の2倍以上の自治体は、妙高市・糸魚川市・見附市・村上市・長岡市・新潟市・聖籠町の7自治体となっています。
③ 特に新潟市では88保育園666人の正規職員に対し1,999人の臨時・非常勤職員配置で、正規職員の3倍超。また聖籠町では規模は小さく1保育園4人の正規職員ですが、14人の臨時・非常勤職員配置で、正規職員の3.5倍超の実態となっています。

4. 一般行政職場(本庁・支所等での一般事務)における臨時・非常勤職員について

(1) 自治労組織実態調査結果
① 臨時・非常勤職員としては採用における適用法律としては、地公法第22条根拠の自治体は9自治体、第17条根拠が14自治体、第3条3項根拠が1自治体となっています。

② 週当たりの労働時間においては、正規職員と同じが第22条根拠で7、他が3の計10自治体、正規の3/4以上が第17条根拠で11、第22条根拠が2の計13自治体、正規の1/2以上が第17条根拠の2自治体となっています。
③ 賃金の支給形態としては、雇用条令別からの特徴は見られないが、時給制10自治体、日給制9自治体、月給制6自治体となっています。
④ 時給制及び日給制の雇い入れ時の時給は800円未満が7自治体、800円から900円未満が8自治体、900円以上1,000円未満が4自治体となっています。
⑤ 月給制の雇い入れ時の額は、10万円未満から20万円未満まですべての階層となっています。しかし給与の格差が最小と最大で約2倍の違いがあり、業務との関連で給与面での検証が必要であると思います。
⑥ 契約上の雇用期間としては6月以下が第22条根拠で8、他が4の計12自治体、1年以下が第17条根拠で10、第22条根拠で1の計12自治体、3年が第17条根拠の1自治体となっています。しかし実際の雇用の上限としては、1年が3自治体、2年が2自治体、3年が1自治体、5年が8自治体、5年超を含め上限なしが11自治体となっています。
⑦ 期末手当等の一時金は、雇用条令別からの特徴は見られないが、支給ありが10自治体、支給なしが15自治体となっています。退職手当は、第22条根拠の新発田市を除いて、他は支給制度が無い実態となっています。
⑧ 各種休暇等の諸権利についても、雇用条令別からの特徴は見られず、制度の有無と制度が合っても無休となっている自治体もあります。また制度の内容(休暇日数)が不明のため、制度内容の精査検証が必要です。
⑨ 当分科会としては、各単組(当該自治体)において、臨時・非常勤職員の雇用形態(適用法律区分)別に労働条件が一定の水準となる整理表を作成します。

(2) 正規職員との関連
① 本庁・支所等での一般事務職での臨時・非常勤職員の具体的な職務分担は自治労組織実態調査では明らかになっていません。
② 臨時・非常勤職員の具体的な職務分担については個々の自治体や一人一人の職務分担によってもことなることから、今後各単組(当該自治体)において、当該職員配置についての検証が必要です。
③ 本来正規職員の職務(業務)を常勤の勤務形態の臨時・非常勤職員が担う場合は、その職員配置のあり方の検証が必要です。
④ 臨時・非常勤の勤務形態の職員が担う職務(業務)は、正規職員業務の事務補助が一般的な業務であり、正規職員の監督下で、その業務執行責任は負わないことの確認が求められます。
⑤ 正規職員は任期の期限がなく、労働条件も条例及び規則等で一定の水準にありますが、その職務および責任の度合いと、当該職場に配置されている臨時・非常勤職員の労働条件と職務および責任の度合いを検証し、業務対応または身分対応の改善が求められます。

5. 各自治体における、保育士と一般行政職場の任用関係について

(1) 同一任用条例自治体について
① 地方公務員法 第22条任用関係
  胎内市、新発田市、阿賀野市、燕市、加茂市、長岡市、湯沢町、津南町の8自治体となっています。
② 地方公務員法 第17条任用関係
  聖籠町、五泉市、阿賀町、弥彦村、見附市、柏崎市、小千谷市、十日町市、南魚沼市、上越市、村上市、三条市の12自治体となっています。
③ 同一任用自治体での労働条件
  任用形態が同じ自治体での、賃金、勤務時間、各種休暇等の労働条件格差を埋める取り組みが求められます。

(2) 異なる任用条例自治体について
① 異なる任用自治体
  新潟市、佐渡市、出雲崎町、妙高市、糸魚川市の5自治体で異なっています。
② 任用が異なる理由
  保育士と一般行政職場でことなっている理由について、当局見解を質し、同一任用自治体での労働条件との違いについて、整理が求められます。

(3) 任用が不明の自治体について
① 任用保育士と一般行政職場で任用の違いが確認できなかった自治体
  上記①②以外の魚沼市、田上町、刈羽村、関川村、粟浦島村の5自治体は、今回確認ができませんでした。

6. 労働組合(自治労・単組)としての課題

① 臨時・非常勤職員の労働条件の改善に向けて、当該自治体での単組において臨時・非常勤職員の労働組合加盟の運動を取り組む中で、正規職員・臨時・非常勤職員一体になった労働条件の格差解消が求められます。
② 各単組においては、臨時・非常勤職員の職務と労働条件の検証を行うと同時に臨時・非常勤職員同士の人が集まれる場を確保し、学習と交流を深める取り組みが求められます。
③ 各単組においては、正規職員と臨時・非常勤職員の労働条件を引き上げるために、県内各自治体の正規職員及び臨時・非常勤職員の労働条件でより優位な自治体単組との交流を図る取り組みが求められます。

7. 結 び

① 雇用形態(適用法律)は個別自治体により異なり、労働条件も千差万別の状態です。
② 臨時・非常勤職員の問題として、(ア)雇い止め(雇用期間問題)、(イ)低賃金問題(官製ワーキングプア)、(ウ)正規公務員との格差があげられます。
③ 正規職員削減(人件費削減)に伴う、行政の執行と安上がり労働力として臨時・非常勤職員の活用があげられます。
④ 定員管理に伴う人件費と、人件費に算入されない臨時・非常勤職員の賃金(物件費・委託費等)を、本来行政執行に必要な「あるべき必要経費(人件費)」としてのとりまとめが必要と思います。
⑤ 保育園や福祉施設・自治体病院・図書館などの公的施設で、正規公務員が削減され臨時・非常勤職員への置き換えが進められています。硬直する自治体財政の中で人件費の削減が国や自治体議会の中で求められていますが、本来公的サービスに必要な経費は税金徴収により必要額を徴確保することが原則であることから、現在の財政のあり方と社会的な必要経費の配分のあり方に問題があり、あるべき税財政の姿も合わせて追求していかなければなりません。
⑥ 同一労働、同一賃金に抵触する非正規公務員(臨時・非常勤職員)と正規公務員の格差。
  ・自治労本部自治研作業委員会での非正規公務員(臨時・非常勤職員)と正規公務員の職務評価分析による(ア)労働環境、(イ)精神的負担、(ウ)身体的負担、(エ)感情的負担、(オ)利用者に対する責任、(カ)職員の管理・監督・調整に対する責任、(キ)金銭的資源に対する責任、(ク)物的資源・情報・契約に関する責任、(ケ)身体的技能、(コ)判断力と計画力、(サ)コミュニケーション技能、(シ)知識資格、等の実態を踏まえた改善が求められます。
⑦ 労働基準法の最低基準が適用されない法の谷間としての非正規「地方」公務員の実態があります。
⑧ 国家公務員においては臨時・非常勤職員も原則国家公務員法の適用を受け、予算の範囲内で諸手当を含む給与が支給されます。しかし地方公務員の非常勤職員は給与ではなく職務に対する報酬と費用弁償が支給されます。(地方自治法203条の2)
⑨ 一週間あたりの勤務時間が「常勤職員の3/4以上の勤務に従事する職員は地方自治法204条1項にいう『常勤職員』に該当する」大阪地裁判決により、一時金支出は違法とはいえません。
⑩ 諸手当の支給を制限されている非常勤職員は地方自治法172条に任用根拠を持つものに限定されています。しかしこの非常勤職員は地方公営事業に適用するもので常勤職員との区別はなく給料並びに諸手当は法的に支給されています。
⑪ 正規職員が縮減し、臨時・非常勤職員の増加による社会の変化や歪みについて次の視点での整理・検証するのか求められます。
  ・仕事の変化(サービスの低下等)、公正な労働に対する社会的評価と逆行する労働条件
  ・ジェンダーの視点からは女性労働者が大半を占め、勤務時間や労働内容に見合わない必要以上の労働条件の格差
  ・社会保障のあるべき負担、公的サービスの負担
  ・社会の進歩に逆行する格差社会の増大
  ・官制ワーキングプア、社会の劣化

⑫ しかし臨時・非常勤職員の一部の人は、配偶者の扶養の枠の中での働き方や子育てと両立できる範囲での働き方を求めている人もいることから、属人的な「賃金・労働条件」の取り組みだけでなく、臨時・非常勤職員の人の納税や社会保障の負担のあり方を踏まえた抜本的な制度設計を求めていかなければなりません。
⑬ 臨時・非常勤職員のあるべき姿としては、正規職員を含めた求められる職責や労働時間に見合った適正な評価と、法的な労働条件の確立が求められます。また臨時・非常勤職員という名称ではなく、短時間勤務職員等の名称変更など、差別的な各種の実態を是正する取り組みが求められます。
⑭ 当面の取り組みとしては、臨時・非常勤職員の制度改善や政策闘争への次の取り組みがあげられます。
  ・労働条件改善に向けては、要項・要領等の改善として対雇用者(自治体当局)対応があげられます。
  ・法的改善にむけては、(ア)議会闘争として県議会及び市町村議会(各議会議員)での条例制定に向けた取り組みがあげられます。(イ)国政闘争として、支持・共闘可能な政治勢力との連携等があげられます。
⑮ 日本以外の諸外国及び国際労働機関(ILO)における臨時・非常勤職員の現状との比較検証が求められます。具体的には(ア)正規職員から臨時・非常勤職員への対応に伴う仕事の変化(サービスの低下等)、(イ)公正な労働に対する社会的評価などがあげられます。
⑯ 憲法の理念と労働の社会的評価、求められる社会体制の構築に向け、正規職員と臨時・非常勤職員(非正規職員)の格差是正が求められます。そのためには、臨時・非常勤職員がスト権を始めとする労働者の基本的な権利を確立し、その行使と社会的な影響力を自ら認識する主体的な取り組みと、それを支援する広範な労働者の連帯が改めて求められます。