【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第2分科会 地方税財政と公共サービス |
|
1. はじめに "公共施設(ここでは、いわゆる「ハコモノ(建物)」を示す)"は何だろうか。 2. "公共施設の更新問題"ってなんだ?
学校や公営住宅など、公共施設の多くは、1970年代以降の高度経済成長期に集中して建築・整備された(もちろん道路・橋りょうなどの「インフラ」も同様)。それから数十年が経過し、公共施設の多くが建替えや大規模改修といった"更新"が必要な時期を迎えつつあり、多額の出費が予想されている。さらにこれらの施設は建築時期が集中しているから、当然、更新時期も集中することになる。世界でも稀な経済成長を果たした日本は、世界でも類を見ないスピードで訪れる「公共施設の更新に対応する必要があるということになる。 |
3. 鳥取市における人口減少と公共施設のバランス
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口は減少を続け、鳥取市の人口は現在の20万人弱から、2040年には15万人台となる。これは、高度経済成長期以前の規模であり、鳥取市は市町村合併(2005年に9自治体が市町村合併した)前の数値となる。数字だけ見ると、合併した8自治体の人口規模がいなくなる。 |
4. どのシナリオを選択するのか、住民と共通認識を図る ほとんどの自治体で財政状況が厳しく、施設の修繕費を十分に確保できない状況にある。施設は、刻一刻と崩壊に向けて進んでいる。昨日まで使えた施設の壁が突然、剥がれ落ちる可能性もある。「あなたの大事な人が、いつもの体育館でいつもどおりバレーをしていて、急に天井が落ちてきて命を落とす……」。有り得ない話ではない。施設は建ててから劣化し続けていて実際に色々な施設の不具合や事故が起き始めている。 5. 施設に対するイメージを"見える化" 鳥取市では、決断することとした。「公共施設白書」を作成し、公共施設の現状や課題を「見える化」したのである。白書の中には、行政・施設利用者・地域住民にとって見たくなかった、伏せておきたかったデータが数多くあったと思う。例えば、
公共施設は、自治労組合員も働く場でもあり、"見直し"は慎重に検討する必要があるが、鳥取市職労においては、"見直しを図らないと財政破たんにつながり、組合員も職場、自治労運動も守ることができない"という認識にある。 他自治体では、"見直しに反対"という姿勢を取る組合があると伺っているが、鳥取市職労は、自治研究の一環として「公共施設の更新問題」を取り上げるなど、この問題に対して真っ向から立ち向かっている。労使一体となって取り組まなければ全てを失ってしまうのではないかという危機感の中、日々検討を行っている。 |
6. 施設は減らすが機能は残す 公共施設は、公共サービスを提供する場、または住民が直接利用する空間として設置されている。公共施設の見直しには、まずどういった住民ニーズがあるのか、どういったサービスを提供する必要があるのか、を考える必要がある。 7. 縦割り行政からの脱却 今後、鳥取市では公共施設のあり方を考えていくが、そのためにはこれまでの慣習を打ち破る必要があると思っている。自治体が持つ財産は、「ヒト」「カネ」「情報」「モノ」と言われ、これらの限られた財産を有効活用して公共サービスを提供している。
8. 公民連携の必要性 こうした公共施設のあり方を見直していくうえで、自治体(行政)だけの取り組みでは限界があると思われる。
9. 地方から始まった見直しの動き こうした公共施設を見直す取り組みは、各地方自治体で研究がなされ、全国の自治体で連絡会も結成されている。国と違い、住民に近い公共施設を持っており、住民と直接対話する機会が多いのが地方自治体である。 10. 将来に負担を先送りしない 「公共施設の更新問題」を語れば、大多数の方は「公共施設を見直そう」「施設を減らして経費削減しよう」など、施設の縮減に肯定的な意見が出される。鳥取市におけるモニター調査でもそうなっている。しかし、個別の施設名が出た途端に「なくなっては困る」「なぜ減らすのか。反対する」といった意見が出てくる。 |