1. はじめに
大分県内の市町村状況と自治研活動の取り組み
① 県内の状況
大分県は合併以前は58市町村(2004年4月現在)あった団体数が、現在では18市町村という変遷が行われ、全国でも第5位の市町村数の減少率となる市町村合併が行われました。
② 自治研活動と自治体自立専門部会の役割
県本部では、かねてより自治研活動に力をいれており「地方自治を住民の手に」~第56回地方自治研究大会大分県集会メインスローガン~といった、地方自治に関するあらゆるテーマに取り組んでおり、全8部会によって構成運営をしています。
その中でも「自治体自立専門部会」では、主に「地方財政分析」「市町村合併検証」「行財政改革」といった財政分野に係る内容や、近年では「地域コミュニティ」といった、まちづくりや今後の自治体運営について調査・研究に取り組んでいます。取り組み状況は、毎年7月に開催される県集会に平均約60人の参加者があり、「財政問題」を分かり易く理解するための講義や専門部会独自の発表(模擬断行・グループワーク等)、さらには平均10本を超えるレポート提出があります。また集会前には専門部会員の学習会や現地視察等を行い、通年的な取り組みを行っている状況です。
2. 財政分析を通じた活動の背景と状況
(1) なぜ財政分析なのか?
自治体職員がなぜ「財政分析」を行う必要があるのか? と問う方がいらっしゃるかもしれません。自治体職員なのだから、自分が勤務するまちの財政状況を知っているのは当たり前だと思われるのは至極当然かと思います。しかし実際の状況を提示すると、職員は自分の担当業務や経験した業務のことであれば熟知していると言えます。ただ、すべての職員が常に全体のことを気にしながら業務を行うことはできませんし、仮にできたとするならばそれは専門性に欠けることに繋がる恐れがあります。なので大半の自治体では一部の職員(主に総合調整や財政・経営を担当する部署を経験した)でなければ、その仕組みや状況を読み取ることは難しいというのがごく一般的といえます。また経験した職員であっても現在の地方財政を取り巻く状況は年毎に変化し、制度を全て理解するのは至難ともいえます。
だからこそ、「財政分析」が必要であると考えます。自分の働く職場(自治体)が今どのような状況にあり、国・県との関係性がどのようになっているのか、俯瞰的に全体を見渡すタイミングが必要といえます。県内の自治体では毎年職員向けに「財政状況勉強会」を行っている団体が数団体はありますが、大多数は、決算カード(総務省発表資料)を見ても「分からない・見たことがない」という状況です。我々の取り組みはまさに、その部分をきっかけとして行っています。
(2) 取り組みの成果と状況
私がこの専門部会に加入して、7年を経過しますが、毎年新たな部会員が参加してくれています。その多くは財政未経験者です。しかし専門部会で「財政分析」を行った成果は、『職場で予算要求をする際の参考になった……』『仕組みが分かったので、もう少し詳しく調べてみたい』といった意見や、年1回の集会に参加された方からも『自分のまちの状況を聞いてみたい』といった感想も見られ、やはりボンヤリとしか分からない「財政問題」という内容も、自ら行うことによってより身近な問題として具体的に知ることができるテーマとなっているようです。
また3年前からは、県内それぞれの団体で行ってきた「財政分析」を専門部会で集約・分析することを行うようにしました。というのも自治体の課題というのはその多くが共通したものであり、地域性を除いた財政問題は個別に分析することに加えて、全体の経年変化を追う必要がある(特に市町村合併の検証という意味で)ということで行っています。
※成果事例~資料参照~
資料1
経常収支比率:経常的収入と経常的支出の割合 低い程良いとされる(参考基準:75%)
資料2
現債残高倍率:借金の残高がその団体の財政基準からみてどのくらいあるか(危険値:2.0)
資料3・4
財政力指数と交付税:交付税の推移
資料5~8
財政健全化指標:夕張市の財政破たんを機に、新たにできた指標。財政の健全度合を示す。
○実質赤字比率:普通会計の赤字度合(黒字の場合△表示)(適正値:0以下)
○連結実質赤字比率:普通会計+企業会計等を連結した赤字度合(適正値:0以下)
○実質公債費比率:普通会計内の公債費が占める割合(警戒ライン:25% 危険ライン:30%)
○将来負担比率:普通会計内の将来にわたる負債・収入の割合(警戒ライン:350%)
資料9
財政調整基金残高
3. まとめ
大分県内に限らず、全国どこの自治体でも同じ状況であるに違いなく、「真の住民福祉」を考える際に、現在~今後の運営について議論を深める必要があると思います。その中心は常に住民と共に地域を考える自治体職場の職員であるはずです。その職員が全体的なまちの状況を考えるための資料を分析・調査する機会が乏しい昨今にあって、自治研究活動等でしか知る機会を得られないという状況は非常に残念な状況にあるかと思います。
今後も我々自治体自立専門部会は、職員だれもが分かり易い自治体財政分析と、熊本大学「社会連携科目」での財政分析講座等に積極的に取り組み、さらなる研究の進化をめざしたいと思います。 |