【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第2分科会 地方税財政と公共サービス

 2000年の地方分権一括法の施行により、地方自治法が大きく改正された。その結果、分権改革が進行し様々な権限が国から地方自治体へ移譲され、地方議会はその新たな時代を切り開き適応できる役割と機能が要求されるようになった。竹田市議会はその要求に応えるべく議会条例制定に取り組むこととした。



竹田市議会基本条例の制定について


大分県本部/竹田市議会議員 佐田 啓二

1. 制定の背景

 地方分権が進む中で地方議会の役割は、市長とともに二元代表制の一翼を担う重要な役割を担っている。執行機関に対する行政監視と議員自らの資質を向上させ政策立案能力を高め、開かれた議会で民意を市政に反映させるという役割と機能が求められている。
 竹田市議会では、この課題を克服するために議会改革に向けた議論を重ねてきた。また、市民との意見交換会などを通して議会の使命と役割を明確にし、その機能をさらに強化することの必要性も実感した。
 議会と議員の活動原則並びに市民と議会と市長等との関係など基本的な事項を定めた「議会基本条例」の制定は、特別委員会の結論としては、市民福祉の向上のためには避けて通れないとの認識に到った。
 制定について会派並びに議員全員協議会において提案し協議をした結果、議員個々の認識に大きな差異があった。しかし、議会不要論まで聞こえてくる今日、議会の基本的役割を議会・議員が果たしているのかという点が市民に問われている、との共通認識に立ち、制定に向けた検討を進めることとした。


2. 経 過

 当初は議会改革についての任意の検討会として2007年7月に「議会活性化・改革委員会」を立ち上げた。
 議員定数の改定、報酬・費用弁償の廃止、政務調査費活用の充実など21項目について15回にわたり検討を重ねてきたが、大きな目的である「議会基本条例」の制定に向けた取り組みについては、検討を深めることができないまま2009年の改選を迎えた。
 改選後の2009年6月議会において、正式に「議会改革調査特別委員会」を設置し11項目について、32回の会議と現地調査等を実施し検討を重ねた。
 11項目の主要項目である「議会基本条例」の制定については、調査研究を促進し、条例化を早期に実現するために、条例制定に特化した、「議会基本条例制定作業部会」を2011年12月に立ち上げ本格的な検討・制定作業に入った。
 検討作業は2012年1月から2012年12月まで計16回に及んだ(途中2012年7月12日竹田大水害のために作業は一時中断した)。2012年12月に会派代表者、並びに議員全員協議会で最終案を提案し、了解を得た上で、2013年1月10日から1月31日までパブリックコメントに付し、3月議会で条例を制定することができた。


3. 議決された条例の項目

竹田市議会基本条例
目 次
 前 文
 第1章 目的(第1条)
 第2章 議会及び議員の使命と活動原則(第2条-第4条)
 第3章 市民と議会の関係(第5条)
 第4章 市長等と議会の関係(第6条-第8条)
 第5章 自由討議による合意形成(第9条)
 第6章 委員会の運営(第10条)
 第7章 政治倫理(第11条)
 第8章 政務活動費(第12条)
 第9章 議員定数及び議員報酬(第13条・第14条)
 第10章 議会及び議会事務局の体制整備(第15条-第19条)
 第11章 最高規範性(第20条)
 附 則

4. 制定にあたってポイントとなった条項

 紙面の制限で全てを紹介できないので、制定にあたって特にポイント(苦労した部分)となった、次の3点について報告する。

<1点目=反問権>
(市長等との関係の基本原則)
第6条 議会審議において、議員は、市長等に対して、緊張感を保持しなければならない。
2 議会における、代表質問及び一般質問は、広く市政上の論点及び争点を明確にするため、一問一答の方式で行う。
3 市長及び本会議に出席を要請されたその他の者は、議員の質問等に対して、議長の許可を得て反問することができる。

 1項2項については記載の通りである。問題は3項の反問権である。全議員がよく理解できなかった部分である。反問権を議会並びに執行部がどのように解釈し、議員としてはどのように行使されるのか、執行部としてはどのように行使するのかが理解できないのである。そこで反問権の解釈を次のようにした。

① 反問できる場……代表質問及び一般質問
② 反問の仕方  ア 執行部は、自席から「議長」と発言し、挙手をする。
         イ 議長は、「○○課長」と指名する。
         ウ 指名された者は、「○○議員の質問に反問します」と発言する。
         エ 議長は、「○○課長の反問を許可します」と発言を認める。
         オ 発言する者は登壇し、発言の際には冒頭に「○○議員の質問の○○について反問します」と反問の内容を明確にして行う。
③ 反問の内容  ア 質問の趣旨・内容の確認
         イ 質問の背景・根拠の確認
         ウ 政策に対する意見、または対案を求める場合

<2点目=議員相互の自由な討議の場>
(自由討議による合意形成)
第9条 議会は、言論の府であることを十分に認識し、議員相互の自由な討議の場を設けることができるものとする。
2 議長及び常任委員長等は、議員相互の自由な討議が積極的に行われるように議会政策協議会、常任委員会等に討議の場を設けることができるものとする。
3 議員は、議員相互の自由な討議を通じて合意形成を図るよう努めるものとする。

 この自由な討議の場は当面、常任委員会の場での自由な討議とした。今までは、常任委員会に付託された案件について、賛成であっても反対であっても執行部に対しての質疑を行った上で、最終的には挙手による採決を行っているが、この項でいう自由な討議のあり方は、執行部に対しての質疑は従前どおりだが、賛否両論があれば、委員同士が反対意見、賛成意見をそれぞれが述べ、議論を尽くして合意形成に努めるものとした。そして、これは原則公開としているので、その案件に対しての議論の経過と結果が市民に理解ができるという点において開かれた議会の一端でもある。
 また、本会議での委員長報告の際には、委員会における挙手採決の場合には、その議論の経過(反対意見、賛成意見の趣旨)を報告するものとした。そして、これは本会議における議案質疑及び予算特別委員会の審議の過程において各議員から出された重要な質疑、あるいは質疑はないが重大案件である場合などは、本会議、予算特別委員会が終了した後において、常任委員会に付託されたそれら案件につき委員長は十分に整理したうえで議員相互の自由な討議が行われるように運営するよう心がけなければならないとした。

<3点目=議会政策協議会>
(議会の体制整備)
第15条 議会は、この条例の趣旨に基づく議会運営等を確保するため、常に市民の意見、社会情勢の変化等を勘案して、議会の改革に継続的に取り組むものとする。
2 議会は、議会運営に係る評価及び改善を行い、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
3 議会は、政策形成等の機能を充実させるため、議会政策協議会を設置し、その調査及び研究機関として、議員政策研究会を置く。

 議会の政策形成等の機能を充実させるためには、個々の問題や課題を深堀して、研究・検討をしていく仕組みと機関が必要だとの思いから、議会政策協議会を設置することとした。
① 議会政策協議会は、議長・副議長を除く全議員で構成し、次に掲げる事項について協議又は調査研究をし、提案を行うとした。
 ア 執行部から提案された議案に関すること。
 イ 政策的条例の制定に関すること。
 ウ 市長に対する政策提言に関すること。
② 政策協議の場は、3つの場を設定した。
 ア 全体会=全会員で構成し、会長が招集する。定足数は2/3で採決は出席者の過半数。
 イ 分科会=3つの分科会として、それぞれの所管事項を調査・研究する
   第1分科会(総務常任委員会に所属する会員)
   第2分科会(産業・建設常任委員会に所属する会員)
   第3分科会(社会・文教常任委員会に所属する会員)    
 ウ 議員政策研究会=各会派から1人ずつ選出(5人)、政策や条例を提案するための調査・研究を行う。
③ 議会政策協議会の討論テーマは、次のルールで会長に予め提出しなければならない。
 ア 議員が討論テーマを提出しようとするときは、その提案理由、資料等を添え、議員2人以上の連名でなければ提出できない。
 イ 会派が討論テーマを提出しようとするときは、その提案理由、資料等を添え、会派の代表者が提出する。
 ウ 議会政策協議会が、市民との意見交換会等で出された意見等で、必要があると認める論点テーマについて、全体会、分科会、議員政策研究会のどの会で内容検討・調査研究をさせるのかを決めて付託する。
④ 全体会、分科会、議員政策研究会での研究結果は、議会政策協議会に戻され、議会運営委員会の決定の後、本会議に上程という運びにしている。

以下 資料1と2(フローチャート)を参照してください