2. 条例制定の経過
(1) 取り組み方針
自治基本条例案の策定にあたり、既に制定済みである全国の自治体へのアンケート調査や、取り組みを進めている近隣自治体への視察を実施しました。その結果、課題として意見が多かったのが、取り組み開始から施行までに膨大な時間と労力がかかるということでした。臼杵市としても、まちづくりを行う上での最高規範となるこの自治基本条例は、市民の声を十分に反映させ、一から作り上げていくことを想定していました。しかし、原案づくりの段階から市民の声を反映させることに取り組んだ自治体では「原案無しで市民に意見を求めることは非常に困難で、地域説明会でも反応が薄かった」「市民委員会の期間や回数などが負担になり、辞任する委員もいた」「長期に渡り議論を重ねたが、結局隣の自治体と同じような内容になったことに対し不満の声もあった」などの意見が多く、これらの意見をもとに庁内で検討を重ねた結果、臼杵市が全庁体制で原案を作成し、市民による検討が必要な事項を整理した上で、市民へ意見を伺っていくことになりました。
(2) 原案の作成
前述の方針に従い、財政企画課で条例の骨子を整理し、各種政策分野の担当部課長等からなる自治基本条例庁内検討委員会にて原案づくりに着手しました。自治基本条例の性質上、どこの自治体も似通った条文になりやすく、条例の中身や構成について協議していく中で、臼杵市ならではの特色が出せるのかが大きな議論となりました。議論を深めていく中で、臼杵市として最も強調すべきキーワードとなったのが「地域コミュニティ」でした。臼杵市では地域振興協議会(※)への活動支援を中心に地域コミュニティの推進に力を入れてきましたが、この地域コミュニティとまちづくりの関わりをどうするかが大きなテーマとなり、その後市民を交え、改めて地域コミュニティの位置づけや役割を考えていくことになります。
また、制定済みの自治体のアンケート結果や庁内検討委員会で出された意見をもとに、市民による検討が必要な事項を整理し、用語や条文の意図を詳細に説明した「検討シート」を作成し、効率的かつ効果的に市民の意見が反映されるよう入念な準備をしました。
(3) 市民の意見の反映と素案の作成
原案及び検討シートの作成と並行して、市民の意見を反映させるためのアンケートを実施しました。アンケートの内容は、「市民」や「地域コミュニティ」の定義、まちづくりの主体それぞれの役割と責務、まちづくりを進めるうえでの基本原則といった、条例の根幹を成すものについて意見を求めるもので、2011年度は全地域での市政懇談会やまちづくり団体との意見交換会である「くるま座トーク」において市長自らが条例の目的や概要について説明し、その場に参加した方々を対象に調査しました。
また、原案やアンケート結果などをもとに条例案の策定に向けた検討を行う委員会を設置するため、2011年9月に臼杵市自治基本条例策定委員会条例を施行しました。これを受け、有識者2人、経済団体やまちづくり団体等からの推薦者14人、一般公募1人の計17人を委嘱し、同12月に第1回の策定委員会を開催しました。策定委員会では、まずは自治基本条例の概要や原案について知ることから始まり、その中で気になったことや分からないことを各自提出してもらい、次回の委員会までに事務局が整理したものを報告するという方式をとり、原案の各条全てについて学んだ後、協議に移りました。また、早い段階で条例の策定時期の目安を示したことにより、委員の中にも目標意識が芽生え、毎回の協議に提案や意見を持って臨むようになり、効率良く深い議論が成されるようになりました。
策定委員会での協議を深めていく中で新たに浮き出た課題や、さらに多くの市民の声が必要な事項については、2012年度の5月より各種団体の総会や会議、生涯学習教室さらには高校等にも訪問し、意見交換やアンケートを実施し、策定委員会の基礎資料としました。
これらアンケート結果やパブリックコメントをもとに全10回に及んだ策定委員会において検討を重ね、可能な限り市民の誰が見ても分かりやすく親しみやすい条文作りを進め、最終的に「臼杵市まちづくり基本条例」と名付けられた条素案は2012年の12月議会に上程しました。
(4) 制定後の取り組み
2012年12月議会で承認され、制定された臼杵市まちづくり基本条例ですが、大きな課題として残ったのが、この条例をいかにして市民の身近なものにするかということです。検討段階においても市報やホームページ等で市民への周知に取り組んできましたが、この条例ができたからといって生活に大きな影響があるわけではないため、市民の関心は高くはありませんでした。
そこで、2013年4月1日の施行に至るまで、これまでの広報活動に加え、大きく3つの柱で周知に取り組みました。1つ目は条例のパンフレットの作成で、イラストを交えて分かりやすく条文の解説を行ったものを市内全戸に配布しました。2つ目は2013年3月3日に実施した条例の制定記念シンポジウムです。条例についての説明や策定委員などによるパネルディスカッションに加え、南三陸町からお招きした講師による実体験に基づく基調講演が行われ、東日本大震災からちょうど2年が経過した中で、多くの市民が地域防災と協働のまちづくりについて深く考える場となりました。そして3つ目が子どもたちへの周知です。市内の全小中学校を訪問し、先生方へ条例の趣旨説明や憲法学習・郷土学習の一環として子どもたちへの教育に取り入れて頂くことを依頼しました。また、条例のパンフレットを子ども向けの副読本として編集し、臼杵市の未来を担う子どもから保護者へ、そして地域へと広がっていくことを願い、配布しました。 |