【要請レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第3分科会 人口減少にともなう自治体・地域のあり方 |
過疎・高齢化地域である弁財天集落に活気を取り戻すため、そこに暮らす高齢者自らが一念発起して、毎年一千本以上の石楠花を植栽。計画から6年後の2005年、石楠花の開花に合わせて交流イベントである「第1回石楠花まつり」を開催するに至りました。過疎の現実に向き合いながら石楠花まつりを継続していく中で、地域活性化とは何かを考える機会となった事例を報告します。 |
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1. はじめに 宇陀市は奈良県の北東部に位置し、東側は三重県に接しており、近鉄大阪線によって京都・大阪や名古屋・伊勢方面と結ばれています。また、宇陀市から大阪方面への自動車によるアクセスは、西名阪自動車道で約1時間の距離にあります。 |
かつては、国道369号線が弁財天地域の中を通り、地域の生活道として、また室生寺や曽爾高原など近隣観光地へのアクセス道として地域に活気をもたらしてきましたが、標高が高く冬季の積雪が非常に多いことから、凍結による交通障害を回避するため、1995年に弁財天地域の下を通り抜けるトンネル(開路トンネル)が開通しました。交通量は激減し、最初のうちは「安全で静かになって良かった」と思っていたのが、時が経つにつれ「このままでは弁財天は忘れ去られてしまうのでは?」との危機感に変わりました。 2. 取り組み
(1) 石楠花の丘管理会の取り組み |
・氏神である金刀比羅神社の境内(約3ヘクタール)の山あいを整備し遊歩道などを設置。 |
(2) 青年倶楽部の取り組み (3) 交流イベント(弁財天石楠花まつり)の開催
3. 取り組みの成果 ・地域を活性化しようとする高齢者の熱意が弁財天を離れていった子どもや孫の心を動かし、2006年に地元出身者とその家族などで構成する「青年倶楽部」を組織し過疎の現実と向き合うようになった。 4. 今後の展望・課題
(1) 観光ルートの開設 (2) ヒューマンパワーの充実 5. 考 察 石楠花まつりは今年で10回を数えましたが、石楠花まつりそのものは賑わいをみせるものの、弁財天集落の現在も人口は減少し続け、消滅集落防止への打開策とはなっていません。 6. おわりに 限界集落とは、65歳以上の高齢者が、人口比率で住民の50%を超えた集落のことを指し、中山間地や離島を中心に、過疎化・高齢化の進行で急速に増えてきています。このような状態となった集落では、生活道路の管理、冠婚葬祭など、共同体としての機能が急速に衰えてしまい、やがて消滅に向かうとされており、共同体として生きていくための「限界」として表現されています。旧国土庁が1999年に行った調査においては、やがて消え去る集落の数は日本全体で約2,000集落以上であるとしており今後も増え続けるでしょう。
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