【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第3分科会 人口減少にともなう自治体・地域のあり方

 ホッカイドウ競馬場での組合員家族の交流を初めて5年が経過しました。毎年交流することにより組合員や家族の労をねぎらうことが当初の目的ではありますが、ホッカイドウ競馬の売り上げ貢献まで達成できていないのが現状です。これまでの実績を踏まえて、今後何が出来るかをめざしていくものです。



ホッカイドウ競馬の将来と日高町
―― 競馬場との共生 ――

北海道本部/自治労日高町職員組合 成田  治

1. はじめに

 皆さんは、ホッカイドウ競馬をご存じでしょうか、競馬をやる人にとってはご存じの方もいると思いますが、競馬をやらない人にとっても、ここ数年の間で「廃止・存続」の見出しが新聞に掲載され、競馬に興味のない方においても知られることになったと思います。
 私自身、実家の近くに牧場があり、競馬については昔から身近なものでありました。ただし、社会人になるまで、中央競馬については知っていましたが、ホッカイドウ競馬の存在は知りませんでした。むかわ町との境界に、フェンスで囲まれた施設があることは知っていましたが、これがホッカイドウ競馬のトレーニング施設であることを社会人になってから知りました。
 私自身、高校を卒業し就職してすぐバブル景気が到来し、ギャンブル業界においても、売り上げ増を毎年更新する状況でありました。私とホッカイドウ競馬との出会いは、職場の上司に運転手として誘われ、休暇を取って岩見沢競馬場へ行ったのが最初です。その当時は、「平日の昼間にこんなに人がたくさんいてこの人たちはいったいどんな仕事をしているのだろう」と思いながら馬券を買っていた記憶があります。

2. 経 過

 ホッカイドウ競馬は、北海道庁が1948年に競馬法のもとで始められ、戦後復興の時期と重なり、また、娯楽が少なかったこともあり、大勢の人たちが詰めかけ、1991年に454億円を売り上げピークに達したこの間、北海道に対し290億円も一般会計に繰り出すことにより、北海道財政に対し多大な貢献をしてきました。しかし、1992年以降は単年度収支が赤字になり一般会計から毎年繰り入れて運営するという状態が続き、運営主体の北海道においても、多額の借金を抱える中、お荷物的な存在になってきました。
 1999~2000年の存廃議論を経て、2001年から赤字脱却に向けての課題を取り組んできています。
 運営改善の成果としては、赤字額のピークから縮減させた効果はあったが、依然として赤字の脱却ができない状態が続き、道財政も危機的状態が続いていたことから、2005年11月開催の道議会において、知事により赤字のまま競馬を続けていくことは困難であるが、競馬は雇用や地域経済への寄与、生産地を支える役割を果たしているため、地域社会に与える影響は大きい、そのため3年を限度として競馬を存続させるが期間途中でも収支均衡の見通しが立たない場合は廃止せざるを得ないとの答弁がされました。

3. ホッカイドウ競馬と日高町

 日高町(門別地区)においては、軽種馬生産が盛んで、軽種馬農家戸数は176戸、生産頭数や繁殖頭数、預託頭数を含めると5,700頭以上の軽種馬がおり、国内有数のサラブレットの故郷となっています。2010年の農業粗生産額は11,140百万円でこのうち軽種馬生産が6,860百万円と町全体の生産額の6割以上を占めており、町内のサラブレットの生産や育成、牧草や飼料等の販売、軽種馬に携わる就労人口は1,000人以上とも推計されます。近年個人牧場が高齢化や経営難により廃業し、本社が他町村にある分場の設置が増えており、日高町としての生産額が正確に算出できないのが現状です。
 また、日高町にはホッカイドウ競馬唯一の門別競馬場を抱えており、競馬場関係者のみで約300人が生活しているため、日高町での経済波及額は相当大きいものであり、ホッカイドウ競馬が廃止されることにより、日高町の財政は一層厳しいものになるとともに、その影響は、職員の賃金に反映する危険性もあります。また、中央競馬にだけ出走できればいいと考えている生産者はいますが、中央競馬で出走できる頭数は限られており、特にサラブレットにおいては、血統を重視することから、全てが中央競馬に出られるものではありません、そのため、受け皿となるのがホッカイドウ競馬を含めた地方競馬なのであり、全ての地方競馬、中央競馬に対する影響は大きいものとなるでしょう。

4. ホッカイドウ競馬との共生に向けて

 自治労日高町職員組合は、日高の基幹産業である軽種馬生産は、ただ単なるギャンブルとしてではなく、日高地方の農業を支える機関産業であるということに目を向け、ホッカイドウ競馬を存続するために、何かできることはないかと考えたのがきっかけでした。2006年に日高町と門別町が合併して日高町になりましたが、合併前の門別町においては、毎年組合員と家族との交流会を実施していましたが、ホッカイドウ競馬が大変であるというところに目を向け2010年より競馬場において組合員への交流会を実施することになりました。交流会当日は、職員組合の冠名を付けた特別レースの実施、また、組合員及び家族に対する慰労の意味を込め、焼き肉や抽選会を行っています。この取り組みを成功させるための一環として、北海道本部のホームページを利用し、全道の自治労の皆さんに周知してもらい馬券購入の協力をお願いし、最初の2年は家族を含めた100人程度の参加で実施してきました。   
 2012年度より、日高地方本部を通じて管内単組に呼びかけ、近隣町村の単組に対して、一緒に交流会に参加し、ホッカイドウ競馬をさらに盛り上げてもらおうと思い、打診したところ、近隣の新冠町職・平取町職労をはじめ全ての単組・総支部から多数参加して頂き、その数は年々増加傾向にあります。
 過去5年間の取り組みとしては、組合員及びその家族が集まり競馬場に参集しジンギスカンを食べたりビールを飲んだりという交流のみに特化され、なかなか本旨である、ホッカイドウ競馬を支えるために、日高町職員組合もがんばっているというところまで達していなかったのが現状でした。今年度は、特に競馬場本場での売り上げ貢献に向けて何が出来るかを考えて行う。そのためにまず参加者の確保が必要と考え例年のとおり参加の呼びかけをしたところ。今年度は大雨の中過去最大の人数を確保できました。

 
雨のためテントを張って応援   レース後騎手・調教師と記念撮影

5. 今後の課題と取り組み

 2009年度より、開催や運営に係る業務については、社団法人北海道軽種馬振興公社が全面受託で行っています。この振興公社には、関係自治体から職員が派遣されており、北海道の経費節減の一翼を担っていることは確かであります。しかし、一昨年の東日本大震災や競馬場が海に近いため濃霧による中止という自然災害による売り上げ減も大きく影響することから、毎年毎年が勝負の年となっています。
 振興公社においても、競馬場で行う日高の特産市等様々なイベントや全道各地のミニ場外施設による特産市を開催し、売り上げ増をめざしています。
 これまでの取り組みの成果が相まって2013年度においては21年ぶりの黒字化となりました。黒字の大きな要因としては、JRAの電話投票によるホッカイドウ競馬の購入が出来るようになったことやJRAのレースをホッカイドウ競馬の場外発売所で発売することによる手数料収入が大きいものになっています。しかし、今回の単年度黒字で喜ばずに累積赤字解消に向かって今後とも継続した努力が必要であります。運営を受託している振興公社をはじめとした関係各団体と協力の下、ホッカイドウ競馬の存続に向けて、今後とも日高町職員組合や自治労として何が出来るかを研究していきます。