【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第3分科会 人口減少にともなう自治体・地域のあり方 |
兵庫の人口は約550万人。150万人を有する神戸市から、神河町の1万2千人まで非常に格差が生じている。その人口分布は神戸・阪神間の7都市に約310万人。姫路・明石など播磨地域の5都市に約120万人。残り約120万人が但馬・丹波・北・西播磨地域の29自治体で生活している。 |
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1. はじめに 兵庫県は昔から①摂津(神戸・阪神間)、②但馬(豊岡・朝来など)、③丹波(三田・篠山など)、④播磨(姫路・赤穂など)、⑤淡路(淡路島一島)という五つの国からなっており全国の縮図といわれている。1999年平成の大合併第1号となった篠山市以降、現在は1県+29市+12町の42の基礎自治体が存在する。 2. 神河町とは 神河町は兵庫県の真ん中、播磨の奥座敷ともいえる位置にあり、分水嶺の南に位置する高原と名水の町である。播但自動車道、国道312号、JR播但線が町を南北に縦断し、京阪神から約90分~120分、姫路から約30分で、豊かな自然と利便性を併せ持った「便利な田舎」と広報で紹介されている。
(※)神河町のふるさと納税件数は上記のように非常に少ない。全国ふるさと納税ランキングの上位に位置している隣接する北播磨地区の三木市は2012年は731件となっており、特典商品も和牛ステーキ、日本酒、包丁セット、甘栗、温泉入浴券、ダウンジャケット等などメニューも多彩である。神河町の今後の課題の一つが町の特産品を増やしていくことである。 3. 神河町の人口推移 神河町の人口は1950年をピークに毎年減り続けている。10年毎の経過をグラフにしてみる。
1950年から64年を経過しているが、1970~1990年の間はほぼ横ばいとはいえ、64年間の長期減少傾向に歯止めがかかっておらず、その数は4,641人となっている。年平均すれば70人強の減である。 |
第1弾:「田舎暮らし短期滞在サービス」 |
上記3件の事例を紹介したが如何だろうか。神河町は町内の空き家・空き店舗などを改修・再生してレストラン、民宿、カフェなどの交流事業や宿泊事業などをしようとする個人・法人に対して改修費の一部を支援している。その条件は、①改修施設の向こう10年間用途使用すること、②神河町内在住または事業所がある建築業者による改修であること、③地域産材を使って改修することである。また、留意事項として①単年度内の工事期間、②支援事業費の上限は1棟当たり2,000万円以下としている。 5. まとめ/神戸市との比較から小自治体を考える
【表②】の当初予算を見てみよう。税収の多くを占める市税(町税)は一般会計で神戸市は神河町の84.7倍、全体会計で110.7倍となっている。 |
【表②】は、両市の面積・人口・世帯数・正規職員数を表したものである。職員1人が対応する人口は神戸が神河の1.3倍であるが、面積では神戸が神河の0.03倍となっている。逆に対応戸数は神戸が神河の1.8倍である。都市部では狭い範囲に人口と建物が密集していることがうかがえる。 職員1人当たり予算を見れば一般会計で0.9倍、全体会計で1.2倍となっている。一般会計レベルでは神河が上回り、全体では神戸が上回っている。このことから神戸も神河も職員一人当たりの予算額はほぼニアリーと見ることが出来る。 逆に住民一人当たりの予算は、ともに神河の方が上回っている。少ない予算で大都市にはない、きめ細かな住民サービスが求められていることを表しているのではないだろうか。 具体に考えてみる。神河町は旧大河内町と旧神崎町が合併して以降、行政管轄面積は広くなり居住家屋もより分散している。よって町おこしの一環として、毎月のように住民と一体となった各種イベントが町職員も担い手となって地域を挙げて合同で行われている【※2】 職員が積極的に参加して町おこしのために汗をかいているのである。そしてそれは土曜・日曜・休日を中心に昼・夜を問わず行われている。 住民により身近な運営を提供していく。そうすることで故郷への愛情を育んでいく。大都会のように昼夜分かたず娯楽があるわけではないことから、町職員は業務執行と同時に創意工夫した町おこしを担うことが求められるのである。これは大都市部には見られない傾向であると思われる。 地域の小自治体は苦悩を抱えているのである。これは神河町固有の問題ではない。いまや全日本の過疎地が抱える大問題である。すでに出生率は1.39人(2012年)と2.0人を大きく下回っている。加えて未婚者の増と少子高齢化である。神河町の町おこしの一端を紹介したが、同様の悩みを抱える自治体でもすでに神河町と同様の事業・イベントを多数企画されていることと思う。しかし、なかなか結果が伴わないのが現実であろう。 先に神河町の2013年度の出生者数は46人と紹介したが、この数字は普通の小学校の2クラスにもおよばないものであり町長が危機感を持つのは当たり前である。 政治は都会だけを焦点にするのは間違いである。人口減少に悩み苦悩している自治体に対して手をさしのべていかねばならない。「政治とは国民を路頭に迷わさないこと、戦争をしないことである」と言った政治家がいたが、けだし名言である。 私たち自治体労働者は組合員の賃金・労働条件を考えると同時に、平和・人権・環境を守り、住民との共存・共栄をはかっていく努力が常に求められているということを肝に銘じておかねばならない。 最後に古い文書で大変恐縮であるが、「自治体と自治体労働者:旧自治労綱領より(抜粋)」を紹介しておきたい。 |
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