【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第3分科会 人口減少にともなう自治体・地域のあり方

 少子高齢化等の影響により地域の担い手が不足するなどの課題を抱えている状況において、これまでの地域活動を今までと同じように続けていくために、江津市において推進している「地域コミュニティ」の取り組みを紹介し、それを受け、行政、職員は何をすべきなのか、実際に行っている取り組みを紹介しながら考えてみる。



地域コミュニティと職員のあり方について


島根県本部/江津市職員労働組合 森脇  淳

1. 江津市の現状

 現在、全国的な人口減少時代に突入している。島根県も例外ではなく、とりわけ石見地方における人口減少は顕著である。2010年国勢調査における江津市の人口減少率は、県内8市中最低の-7.5%となり、さらには2025年には人口が2万人を割り込むと予測されるなど、過疎化が深刻な問題となっている。年齢構成を見ても、1965年における年齢構成と2010年における年齢構成を比較すると、15歳から65歳までのいわゆる生産年齢人口が著しく減少し、一方で高齢者の割合は高いことがうかがえる。高齢化率は年々上昇し、今後2025年には40%を超えると推計されている。
 過疎・高齢化の進展により、地域では今後あらゆる面において課題が出てくると予想される。一つ目は担い手の減少である。自治会などの役員はもちろんのこと、農業や草刈りといった作業の担い手、これまで活発に行われてきた地域の行事を運営する担い手も減少していくと思われ、さらには耕作放棄地や空き家の増加といった事態も考えられる。二つ目は日常生活の不便さの増加である。高齢化が進むことによって足腰が弱くなり、買い物や通院時の移動が困難になることが考えられる。こういった状況から外出の機会が減り、地域住民間のつながりが希薄になることにより、これまで地域で行ってきた活動の停止や組織の存続が危惧される。
 地域だけでなく、行政においても生産年齢人口の減少に伴う市税収入の減、国や県からの権限移譲に伴う業務量の増大、職員数の減少などにより、安定的な公共サービスを確保していくことが困難になることも予想される。

江津市の人口ピラミッド (上:2010年、下:1965年)

2. 地域コミュニティとは

 こうした現状を踏まえ、10年、20年後も現在の活動を維持し続けるためには、地域住民や地域にある各種団体が組織の枠を超えて相互に補完・サポートし合える仕組みを構築していく必要があるため、江津市では「地域コミュニティ」の結成を推進している。
 地域コミュニティとは、地域住民がともに力を合わせ、主体的に地域づくりや地域課題解決のための取り組みを行う『地域自治組織』と位置付けており、日々の生活に関わる様々な課題を話し合って、決定し、実施していく場となるよう取り組んでいる。
 各地域ではこれまで、公民館が住民の活動拠点となり、公民館を中心とした様々な行事が行われてきた。社会教育や生涯学習といった教育活動だけでなく、伝統行事や祭りといった幅広い活動を地域の各種団体と一緒になって取り組んできており、いわば地域コミュニティと同様の役割を担ってきた。しかし、ニーズは多様化してきており、これまでの公民館や自治会といった枠組みだけでは対応できない問題も発生してきている。また、魅力あるまちづくりをしていくにあたり収益事業を行うことも想定されるが、現在の公民館では収益事業に活用することができないといった事情もあるため、現在の公民館をコミュニティセンターに移行し、これまでの社会教育、生涯学習の活動に加えて、地域の実情に応じて自由な発想で活動ができるよう機能を強化することとしている。

公民館→コミュニティセンター移行イメージ

3. 職員に求めるもの

職員向け説明会の様子

 この取り組みをより良いものにしていくためには、地域の総合的課題に包括的に対応できるよう、行政側の体制を整えることも必要となる。行政においてもこれまでとは違った取り組みをしていかなければいけない。
 職員として、部局間の連携をこれまで以上に強化し、地域の様々なニーズに対応できる体制を整える必要がある。まずは職員同士の交流をもち、気軽に話し合える環境を作ることが重要であると考える。現在、日常的に関わりのある職員だけでなく、交流する機会のない職員同士でコミュニケーションを図ることを目的に「若手職員交流会」を実施している。くじを引いてグループに分け、そのグループごとに指定した複数の飲食店でそれぞれ交流会を開催しており、毎回20人程度参加している。これまで4回実施してきたが、参加者が限定的になっている等の課題もある。今後は気軽に参加してもらえる雰囲気を作っていく仕掛けが必要であるが、これを機に新たなグループが生まれ、横のつながりが密になることはもちろん、例えばワーキングチームを作って独自に様々な課題を研究するといった自主的な活動が生まれることを期待している。さらには、若手職員だけでなく中堅・係長職員も交えて実施し、世代間のコミュニケーション向上の一助となるような取り組みにしていきたい。
 また、地域の総合的課題に対応するために、業務に関わるものだけでなくあらゆる分野にアンテナを張っておくことが必要である。市では「全ての業務は定住促進に繋がっている」との考えから「定住対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、江津市総合振興計画において最重要課題と位置付けている定住促進を効果的に進めるための活動をしている。これは、将来を担う若手職員が様々な事例を研究し新たな試みを実践する中で幅広い視野を持ってもらう取り組みで、2012年度から実施している。これまでNPO法人での研修や地域の町並み調査、独自プランの企画、県外実習などを行った。地域の現場との関わりがない部署も少なくないことから、外の取り組みを知ることは、通常業務を見直す上でも有意義な機会であると言える。
 以上のような取り組みを通じ、通常業務ではない部分での職員間の連携を構築していくことが、地域と行政が課題や目標を共有し、同じ方向に進んでいくための一歩であると考える。当然、職員である前に一人の「地域住民」であるため、地域のイベント等に積極的に参加することで新たな魅力・課題を発見し、施策に生かしていくことも必要である。

4. まとめ

 江津市では「2017年度にはすべての地区においてコミュニティ組織を設立し、公民館をコミュニティセンターへ移行する」としており、今後も加速する人口減少や高齢化を背景に、コミュニティの再生と協働の取り組みは急務ではあるが、まずは地域と行政が同じ方向を向くための土台をしっかりと作る必要がある。そのために、「地域」と「行政」両方の顔を持つ我々職員が率先して意識を醸成する働きかけをしていかなければならない。