【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第3分科会 人口減少にともなう自治体・地域のあり方

 隠岐の島町職員組合が主となり、例年年末に実施している独居老人宅を対象とした年末ボランティア活動。年末ボランティアの実施に向けて関係機関で協力しあい、配布用のそば作りをしています。また年末ボランティアの他に地区海岸清掃や各イベントへの参加について紹介します。



地域ボランティアの取り組みについて


島根県本部/隠岐の島町職員組合

1. はじめに

 隠岐島は島根半島の北方、日本海に浮かぶ4つの島と他の小島からなる諸島です。
 隠岐の島町は4つの島の中でも最も大きな島である島後(どうご)に位置し、総面積は242平方キロメートル、人口約15,000人の町です。
 かつて隠岐郡西郷町・布施村・五箇村・都万村の4ケ町村で構成されていましたが、2004年に町村合併し、現在の隠岐の島町になりました。
 また、日韓をめぐる領有問題となっている竹島が属する町でも知られています。
 人口は合併後に17,000人余りでしたが、減少傾向にあり、現在では15,284人となっています(2013年7月1日現在)。
 隠岐の島町においても、例外なく高齢化が進んでおり、高齢化率35%と特に高い数値となっています。
 さらに年少人口も減少し、学校統廃合が進み、現在小学校7校・中学校4校とここ数年で約半数となりました。
 結果、独居老人宅の増加・地域のつながりが希薄となってきています。
 こうした現状を踏まえ、隠岐の島町職員組合では10年以上前から地域ボランティア活動として、独居老人宅を訪問・お手伝いをしています。
 今回、隠岐の島町職員組合で行ったこれまでの活動について報告いたします。

2. 年末ボランティア活動の経緯について

(1) 年末ボランティア活動の趣旨
 活動自体は、独り暮らしのお年寄りが気持よく新年を迎えられるように、年末に家の窓ガラスを清掃し、そばを配布する事です。
 窓をきれいにする事は、もちろん大切な事……。
 しかし、何よりも、お年寄りの方とのコミュニケーションが最も大切な事です。
 また、それだけでなくボランティアをする側でも互いのコミュニケーションがとれることで、活動を通じ何か感じるものがあればと思います。

(2) 年末ボランティア活動の歴史
 ボランティア活動は、"さわやか小さな親切隊"と題し、町村合併以前の旧西郷町職員組合時代の2001年から活動をスタートし、2004年の町村合併後も引き続き隠岐の島町職員組合として活動を続け、現在に至っています。
 また、2002年からは隠岐高等学校生徒の皆さんが2006年からは隠岐地区労働者福祉協議会との合同開催で他産別の労組の方々も参加し、100人以上がこの地域ボランティア活動に参加しています。
 当初は年末ということでつきたての餅を配布していましたが、2006年からは組合壮年部活動で収穫したそばを年越しそばとして配布しています。





◎活動実績
実施年 参加者数・訪問件数 備  考
2001年 29軒 68人参加  
2002年 54軒 64人参加 隠岐高校野球部参加・もち配布
2003年 43軒 92人参加 隠岐高校野球部参加・もち配布
2004年 64軒 112人参加 隠岐高校野球部参加
2005年 大雪により中止  
2006年 70軒 109人参加 隠岐高校野球部・労働者福祉協議会参加・そば配布
2007年 52軒 100人参加 隠岐高校野球部・労働者福祉協議会参加・そば配布
2008年 64軒 98人参加 隠岐高校野球部・労働者福祉協議会参加・そば配布
2009年 64軒 99人参加 隠岐高校野球部・労働者福祉協議会参加・そば配布
2010年 98軒 144人参加 隠岐高校・労働者福祉協議会参加・そば配布
2011年 58軒 147人参加 隠岐高校・労働者福祉協議会参加・そば配布
2012年 39軒 123人参加 隠岐高校・労働者福祉協議会参加・そば配布

3. 年末ボランティア活動に向けて

(1) 独居老人宅配布用のそば作り
① そば畑の草刈作業
  そば作りと言っても、壮年部員の大半はそば作りに関しては素人です。種をまく時期を決めるのも天気との相談です。
  例年種まきを8月頃にしていますので、2013年は6月29日に草刈を行いました。

② 種まき作業
  種まきの前に一度草刈を行い、耕しておきます。後に再度耕したうえで、種まきをします。
③ そば打ち作業
  そばを刈り取り製粉した後、いよいよそば打ちです。そば作りを始めてから半年、最終工程となります。
  新鮮なそばをお年寄りの方に届けるために、ボランティア作業の実施日に合わせてそば打ちをします。
  そば打ちは地元の方に手ほどきを受けてやるのですが、そば粉をこねてから麺の状態になるまでに悪戦苦闘した事を憶えています。
  写真は2012年の様子ですが、隠岐地区労働者福祉協議会の呼びかけにより大勢の人達が集まりました。この後、そばを食べましたが、やはり自分たちで作ったそばは一味違います。

4. 年末ボランティア活動の内容

 ボランティア活動は、"さわやか小さな親切隊"として独り暮らしのお年寄りの家に訪問し、窓ガラスをきれいにする事であることは先に述べたところです。
 2012年末の活動は参加人数123人、39戸のお宅を訪問しました。
 参加者は、隠岐の島町職員組合を中心にJP労組や電力総連、農団労等、島内の様々な労組や隠岐高等学校の生徒など、普段顔を揃える事のない面々が集まります。
 毎年、居宅介護支援事業所の協力を得て、介護認定を受けている独り暮らしのお年寄りの家をリストアップし、作業班を編成していきます。

 

 なかには継続して訪問している家もありますが、高齢化の影響もあってか新しく訪問する家もあり、選択が難しいところです。お年寄りの方の希望に出来るだけ添えればと思っています。
 班の準備が整ったら、各々家に向かいます。もちろん、打ち立てのそばを手にして……
 私が訪問した家は、おばあちゃんの独り暮らしでした。参加していつも思うのですが、高齢になっての独り暮らしって本当に大変だろうなと思います。
 近年高齢化も進み、至る所にと言えば大げさではありますが、地区にこれだけの独り暮らしの家があるとは感じないものです。それだけ、つながりが希薄ということでもあります。
 そう思いながら、窓を拭き始めます。年末ということもあり、水も冷たく時には雪が降ることもあるので、正直言って寒いです。
 しかし、高校生の張り切って頑張っている姿を見るとそうも言ってられません。
 家の外側、内側とまんべんなく窓ふきをしていきます。
 数人で作業するため一軒あたり30分ほどの作業ですが、これをお年寄りの方独りでは出来ないだろうなとつくづく思います。
 窓拭きも終わりそばを渡すと、とても喜んでくれました。特製のさば出汁付きです。
 「良いお年を迎えて下さいね」とお渡しします。
 すると「これを食べなさい」と高校生達にお菓子や飲み物をいただいたり、お互いに温かい気持ちになることができました。

5. 年末ボランティア活動を振り返って

 最初に述べたように今回のボランティア活動は"さわやか小さな親切隊"と題しています。
 活動は①窓をきれいにする ②そばを渡す ③会話をし、コミュニケーションが生まれる。要約すれば、内容はこの3点となります。
 あわよくば"小さな親切"は"大きなお世話"とも、捉えられがちな事もあります。
 しかし、それも奉仕する側の心次第と思います。お年寄り相手に"してあげている"と上から目線になっていないのか? そうであれば、"させていただきます"と謙虚な気持ちを持って行う。奉仕する側の心次第で"小さな親切隊"となるのではないでしょうか。
 私たちも例外なく年を重ねていきます。もちろん高校生もです。活動しながら、自分が奉仕される側になった時にどう思うのか、まだ考えることもないのかもしれません。
 ですが、少しでもこの活動を通じて、次の世代を担う若者たちに"小さな親切"の大切さを感じてもらえればと考えています。
 今後この活動が、我々組合員だけでなく地区の方々も一体となっていくことを願ってやみません。

6. その他地域ボランティア活動について

 隠岐の島町職員組合は、女性部、青年部、壮年部、また公営企業現業労働組合の組織から成っています。
 ここで各組織の活動を紹介したいと思います。

(1) 女性部
 隠岐の島町で毎年8月に開催される《ふるさとにぎわい事業「夏祭り」》に参加しています。職員組合女性部として少しでも地域のためにお手伝いができればいいな、という思いでここ数年、「フリーマーケット」を出店しています。
 「夏祭り」の約1ヶ月前に女性部全員に「フリーマーケット」への出品協力を呼びかけます。役員等による声かけもあり、有難いことに毎年部員から数多くの品物が集まり値段を決めていきます。大体10円から高くて500円です。(思いがけず立派な品物があったりすると、こんなに安くしていいの? と思うこともあります。)
 当日は、(売れれば良いなあ、売れ残ったらどうしよう。)という不安の中、「夏まつり」に来られた地域の皆さんに(安いですよ、買ってください。)と声を掛け買っていただきます。毎年、楽しみにしてくださる方もおられ、1人で3つ、4つ買う方もおられます。嬉しいことにだいたい一時間半くらいでほとんどの品物が売り切れです。また、「寄付するんでしょ? 買ってあげるよ」という嬉しい言葉をかけて下さる方もおられ、ありがたい気持ちでいっぱいになります。
 この「夏祭り」への参加により、品物を買っていただいた地域の方たち、また、たくさんの品物を提供してくれた部員たち、人と人のかかわりの大事さ、また有難さを痛感しました。「地域のために何かできないかな。何かしようよ。」という思いを常に忘れることなくいつまでも持ち続けて活動をしていけたらいいなと思います。

(2) 青年部
 女性部と同じく「夏祭り」に参加しています。青年部では創意工夫を凝らした「お化け屋敷」を出店し、夏祭りを盛り上げました。300人もの来店がありました。
 またクリスマスには出張サンタクロースを行っています。
 町立保育所のクリスマス会へ部員がサンタクロースとトナカイに扮して参加するものです。子どもたちにプレゼントを配り、一緒に歌い、質問に答えるなど、子どもたちの思い出作りへのお手伝いをしました。クリスマス会終了後は子どもたちと一緒に昼食を食べて交流しました。

(3) 公営企業現業労働組合
 地域住民が住みよく暮らしていけるよう、公園の空き缶拾いや草刈を行うとともに、海岸清掃作業も行いました。
 職員も年々退職し、活動する人数も少なくなってきてはいますが、職員も地域へ帰れば一住民です。今後は節度をもって住民と接していく事が重要と考えます。住民と行政と互いに接することにより、今後の隠岐の島町の在り方を探るヒントが得られるのではないでしょうか。

7. さいごに

 一連のボランティア活動を通して、活動する側とされる側の共通認識が必要と感じました。地域活性化のためには、老若男女問わず、一人一人の小さな行動がやがて大きな意思となり、住みよい町づくりに結びついていくと思っています。