【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第4分科会 地域から考える再生可能エネルギーによるまちづくり

 日田市においては、10数年来にわたり、市民との協同によって再生可能エネルギーの普及や省エネの推進にむけた取り組みが進められている。本レポートでは、これまでの取り組みと今後の方向性について取りまとめた。



市民との協働による再生可能エネルギーの
普及にむけた取り組み

大分県本部/日田市職員労働組合 加藤  勝

1. これまでの経過

(1) 日田市環境基本計画の策定
 日田市においては、①地球環境問題への対応をはかるための施策および②地域の自然的・社会的条件に応じた施策を総合的かつ計画的に推進することを目的として、2001年3月に日田市環境基本計画(以下、「基本計画」と表記)が策定されました。
 基本計画においては、計画を市民・事業者・行政の協働により推進することが明記されるとともに、3者の協働を促進するための施策の一つとして「ひた市民環境会議」(以下、「市民環境会議」と表記)の創設が掲げられました。

(2) ひた市民環境会議の設立
 基本計画策定を受け、日田市においては2001年12月に「市民環境会議」を設立しました。
 市民環境会議設立の趣旨等については、以下のとおりです。

●資料① ひた市民環境会議設立趣旨(設立大会呼びかけのチラシから抜粋)

 地球規模になっている環境問題を克服していくには、市民・事業者・行政が対等の立場で意見を交わし、共通の目標に向け、各々の役割を明らかにして行動していかなければなりません。
 ひた市民環境会議は、より良い環境を将来世代に引き継ぐため、みんなが一緒になって考え、行動していくための会議です。身近な課題から地球規模の問題まで、現状の把握と解決の方向を一緒に考え、できることから着実に行動していきましょう。そして、一人でも多くの方がこの会議に参加し、環境を守る行動が市民運動として広がることを期待しています。

≪日田市環境基本計画の目標とする環境像≫
「人と地球にやさしい環境共生都市~水と緑あふれる安らぎのまち ひた~」
 の実現を目指します。


●資料② ひた市民環境会議の活動内容(ひた市民環境会議会則 第2条抜粋)
(活 動)
第2条 ひた市民環境会議は、前条の目的を達成するため次の活動を行う。
(1) 日田市環境基本計画の進行管理に関すること
(2) 具体的な環境保全活動の企画・実践および支援
(3) 環境に配慮した市民行動普及のための情報交流および広報
(4) 日田エコロジーセンターに関すること
(5) その他ひた市民環境会議の目的に沿った活動

●資料③ 設立大会までの経過
① 平成13年11月12日(月)
  (内容) ・幹事会による会議立上げ(設立内容)の決定
       ・会議参加の呼びかけ方法について検討
② 平成13年11月12日~12月11日
  (内容) ・広報12月1日号、チラシ等を用いて設立大会及び会議への参加を呼びかけ
③ 平成13年12月11日(火)「ひた市民環境会議」設立大会
  (内容) 場所:市役所7階大会議室  時間:午後7時より
       ・記念講演「環境市民運動について(経験談)」 片山純子氏(1時間)
       ・市長あいさつ
       ・会議の設立趣旨と活動、ワーキングチーム等の説明
      ※設立と同時に第1回企画運営会議を開催し、以下を審議。
       ・会長、副会長、会則、今後の方針などを決定
       ・参加及び希望部会の把握

●資料④ ひた市民環境会議設立趣意書
 21世紀は地球環境時代。私たちはあらゆる活動場面で、「環境」のことを考えなければならない、もはや待ったなしの時期にきています。環境問題が私たちの日常生活や事業活動に起因している以上、従来の意識とライフスタイル、そして社会のシステムを変えていかなければなりません。
 水と緑に恵まれたここ日田市において、このかけがえのない地球を未来の子どもたちに残すため、私たち、市民・事業者・行政がともに手を取り合いながら、活動をはじめます。一人ひとりができることはささやかでありますが、力をあわせることにより、確かな一歩を踏み出します。
平成13年12月11日

(3) 設立後の取り組み
① 市民環境会議全体の運営について
  市民環境会議の運営にあたり、会議全体を統括していくための組織である「企画運営会議」が設置されました。
  企画運営会議の役割は、(ア)具体的環境保全活動計画の取りまとめ (イ)部会の設置及び運営に関する調整 (ウ)市民、事業者、各種団体への広報及び情報の収集・提供 (エ)年次活動報告の取りまとめ (オ)その他ひた市民環境会議に関する事項の立案などとなっています。
  また、企画運営会議の下に「エネルギー部会」「水と森部会」「ごみ・リサイクル・景観部会」という3つの部会が配置され、それぞれの部会のテーマに沿った活動を行っていくこととなりました。

●図① ひた市民環境会議組織図 ※2014年4月現在のもの(現在、3部会)

② 各部会の取り組みについて
  各部会は、年度当初に年間スケジュールを決定し、毎月1回行われる定例会において年間スケジュールに基づく活動内容を具体化するための議論を行い、市民に対する啓発事業等を推進しています。
  また、2013年4月には「市民の自主行動計画」が策定され、各部会の活動方針や活動計画がより具体的なものとなりました。
  各部会の活動内容の概要は、以下のとおりです。

●資料⑤ ひた市民環境会議の活動状況(2012年度版「日田市環境白書」より抜粋)
【資料⑤-1 活動状況】

《エネルギー部会》
・小水力発電施設めぐり
・自然エネルギーコーナー(市民健康福祉まつり)
・東峰村ペレットストーブ見学会
小水力発電施設めぐり(マイクロガスタービン)

《ごみ・リサイクル・景観部会》
・ひろえば街が好きになる運動
・放生会期間中のポイ捨て防止啓発活動
・環境ひろば(健康福祉まつり)
牛乳パックを利用したリサイクル工作教室

《水と森部会》
・水質調査(国交省との調査)   ・自然の森の成長量調査
・菊池川流域現地視察       ・玖珠川沿い発電所めぐり視察研修

松原ダム湖畔林生育調査
玖珠川沿い発電所めぐり視察研修

【資料⑤-2 市民環境講座(2012年度 ひた市民環境会議主催)】
第1講(エネルギー部会:2012.9.5)
講 師:別府大学准教授 阿部博光 氏
内 容:講演「大分発自然エネルギー最前線」
    ~自給率日本一の実力とは~
第3講(水と森部会:2013.3.7)
講 師:九州大学准教授 清野聡子 氏
内 容:講演「日田の川の環境再生」
第2講(ごみ・リサイクル・景観部会:2012.10.12)
講 師:羽田多目的交流館 館長 秋吉陽典 氏
内 容:「環境研修視察」
    行先 羽田多目的交流館、大山ダム
【参加者数】
講 座 参加者数
第1講 62名
第2講 22名
第3講 84名
合 計 168名
【市民環境講座の受講者数の推移】
*2007年度(平成19年度)以降は、年間を通じた受講生を募集せず、講座ごとに募集。

2. エネルギー部会の取り組み

(1) 活動のテーマ
 「未来の子どもたちのために住みよい地球を

(2) 基本方針
 私たちエネルギー部会は、昨今の地球温暖化問題を受けて、日田市における市民のエネルギー利用のあり方を見直し、家庭や事業所に対して省エネルギーの普及や自然エネルギーの利用拡大をめざす取り組みを進める部会です。
 深刻な地球環境問題を引き起こす化石燃料の大量消費や危険な原子力依存から脱却し、未来の子どもたちが安心して暮らすことのできる地球を引き継ぐため、無理なく無駄を省く賢い省エネの方法に加え、地域の自然や資源を活用したエネルギーの地産地消などを研究し、市民・事業者に普及していきます。

(3) 活動計画
① 省エネルギー活動の普及に向けた取り組み
  ・省エネチラシの配布
  ・省エネアンケート調査の実施
  ・エコドライブ講習の実施
② 自然エネルギーの普及に向けた取り組み
  ・自然エネルギー見学会の開催
  ・木質バイオマス、ペレットの利用拡大・提言活動
  ・地域内への自然エネルギー発電所の設置

(4) 平成25年度活動実績
① 省エネルギー活動の普及に向けた取り組み
 ア 「エコドライブセミナー」
  講 師:株式会社アスア 富田 周作 さん
  演 題:「エコドライブによる改善活動」
  日 時:2013年10月24日(木)
  場 所:日田市役所中会議室
  参加者:26人
 2013年10月24日(木)に、大分県地球温暖化防止活動推進センター(以下、「センター」と表記)との共催により「エコドライブセミナー」を実施しました。
 参加者には、モニター登録のうえ、レポートを提出していただきました。センターが作成した報告書によると、参加者一人当たりの平均燃費は、約1.8km/リットル改善されていました。2014年度は、実技を交えたエコドライブ講習会の実施を検討しています。

② 自然エネルギーの普及に向けた取り組み
 ア 「再生可能エネルギー施設見学会」
  日 時:2014年2月25日(火)
  場 所:日田市浄化センター、ソーラーフィールド日田、グリーン発電大分
  参加者:19人
 2014年2月25日(火)に、市内の再生可能エネルギー施設の見学会を実施しました。各施設の職員からは、市内の資源を活かして発電していることの説明を受けました。

 イ 市民健康福祉まつり啓発活動
  「自然エネルギーコーナーの設置」
  日 時:2013年10月6日(日)
  場 所:日田市中央公園
  参加者:56人(クイズ参加者等)
 2013年10月6日(日)に行われた市民健康福祉まつりにおいて、ブースを間借りして「自然エネルギーコーナー」を開設しました。当日は、株式会社大日、清水住設株式会社、株式会社トライウッドの協力を得て太陽光発電、太陽熱温水器、ペレットストーブの展示を行いました。また、エネルギー部会が作成した自然エネルギーマップを活用したクイズコーナーを開設し、多くの方に参加していただきました。

(5) 今後の方向性
 地方公共団体においては、環境基本法に基づき国の施策に準じた施策や地域の自然的・社会的条件に応じた施策を策定し、推進することが義務として課されていますが、すべての施策を行政の主導により行うことには限界があります。また、近年は国の主導により、再生可能エネルギー固定価格買取制度の施行や、再生可能エネルギーの導入に対する補助メニュー(自家消費が基本)の創設など、民間事業者の活力を活用するための施策が多くみられるようになってきました。
 このため、日田市においては、今後も市民環境会議とのパートナーシップを強め、民間事業者や市民による再生可能エネルギーの活用を促進していくこととしています。