【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第4分科会 地域から考える再生可能エネルギーによるまちづくり

 新たな広域ごみ処理施設建設計画に関する地元住民ならびに市議会議員としての立場からの報告。



宇佐・高田・国東広域ごみ処理(クリーンセンター)
施設(仮称)建設にむけて現地からの報告

大分県本部/宇佐市議会議員 斉藤 文博

1. はじめに

 自治研集会のレポート作成を依頼され、これまでの議員活動や地域での生活者としての感覚を反映させたテーマについて考慮していたところ、自らの居住自治区が宇佐市を含む近隣自治体の懸案事項であった「ごみ処理場建設」の予定地となった。
 偶然ではあるがタイミングが一致したことから、この案件について、これまで私が知り得た経過や感想等も交え、レポートを作成することとした。

2. これまでの経過

(1) 現在の候補予定地選定に至るまでの経過
① 建設予定計画は1999年8月、当時は宇佐・高田2市による広域圏での取り組みで、9カ所の候補地を選定し、その後比較検討業務が開始された。
② 2000年5月宇佐市立石地区を候補地に決定するも、周辺地区からの反対陳情を含め、一部議員を巻き込んでの反対運動が起こった。
③ 以後、2006年度まで合意形成にむけた地元調整等を継続してきたが、市町合併に起因し、2007年3月31日をもって宇佐・高田広域事務組合が解散となった。
④ 宇佐市立石地区は、宇佐市と豊後高田市の境界地域で、交通アクセス等総合的に判断しても候補地としては最善の位置にあった。しかし、ダイオキシン・悪臭公害・交通量増加による環境悪化を懸念して地元住民の反対運動は根強かった。
  一議員としては、いずれどこかに建設しなければならない施設の重要性とごみ処理施設の機械設備等の技術力が進歩し、排煙や悪臭等の課題は以前に比べ改善されているとの知識は持ち得ていた。しかし、建設反対住民に対して懸念される課題に何一つ解決させる根拠も材料も無かったことも事実であるとともに、ごみ処理施設が地域住民にとっては迷惑施設と位置付けられていることを痛感し、将来的な課題であることを改めて認識した。
⑤ 2007年9月1日に、新たな建設計画の策定に向けて、国東市を含めた宇佐・高田・国東広域事務組合が設立された。その後も協議・検討は継続されたが、2009年1月に、宇佐市・豊後高田市両市長名で立石地区をごみ処理場建設候補地に推薦しないこと(事実上建設断念)が、周辺区長へ通知された。
⑥ その後、2009年1月からの宇佐・高田・国東広域議会定例会、臨時会、全員協議会、正副管理者・副市長会議を経て、2009年10月に大分県内で初めてごみ処理施設建設候補地の公募方式について決定した。
⑦ 2009年12月より各市で公募説明会を開催し、所定の手続きを経て、2010年9月に宇佐市乙女新田地区を第一候補地に決定した。直ちに地元地区並びに周辺地区への説明会を開始、以後2年5カ月間、再三にわたる地元地区説明会・地元住民を対象とした視察研修を含む研修会・戸別訪問による資料配布等、広域事務組合が全力を挙げて理解を求める努力を続けてきたが、2013年2月13日、乙女新田地区より正式に建設辞退の申し入れがあり、2月26日の広域議会定例会で乙女新田地区での建設を断念し、建設候補地の再公募を表明した。
⑧ 公募にあたっては「乙女新田地区住民の9割以上の賛成で申請した」と聞いていた。建設位置としては好適地まではいかないが、土地購入や造成費などに利点があった。また、隣接する高家地区には現在稼働中の宇佐市ごみ焼却場があり、住民の理解は一定程度あったと思われる。
  しかし、以前建設を断念した宇佐市立石地区の反対理由に加えて、隣接する高家地区で民間企業の産業廃棄物処理場進出に対する反対運動が起こったことが、住民感情に影響を及ぼしたことも一因と考えられる。

3. 現在の状況

① 2013年3月にプロジェクト推進委員会を開催、4月より新たな公募実施を始めた。各地区で公募チラシ配布・公募説明会・施設見学会を実施した上で、7月19日に締め切った結果、3地区5カ所(宇佐市2地区・国東市1地区3カ所)より申請があった。
② 正副管理者・副市長会議、広域議会、入札によるごみ処理施設建設用地比較検討業務委託・建設用地選定委員会を経て、2013年11月に宇佐市西大堀地区を建設予定候補地に決定した。
③ 紆余曲折を経ながら候補地は決定したが、再公募についてはもう少し時間をかけ、前回の反省の総括を十分行ってから説明していくべきではなかったか。人口割合から見ても宇佐市の負担が大きいのは理解できるが、地理的に中心に位置する豊後高田市から1カ所も公募申請がなかったことは、施設業務内容がいかに住民から歓迎されていないかを印象づけることとなった。
  この結果は、公募方式の短所が浮き彫りになったとも考えられる。
④ 候補地決定後、地元地区を中心に周辺部地区へ管理者を中心に説明会が開催され、2014年5月現在、隣接する1地区より署名添付の反対陳情があり、宇佐市と広域事務組合が合同で対応している。一方、広域議会では5月21日に臨時会が開催され、管理者より現状報告があり、建設地区及び周辺地区への配慮目的とする振興事業の財源基金を積み立てる補正予算を可決した。事業としては初歩ではあるが、ようやく一歩前進したとの印象である。

4. 今後の建設計画及び課題について

(1) 今後の建設スケジュール

宇佐・高田・国東ごみ処理施設建設スケジュール

(2) 今後の課題
① 現在の計画では、施設建設に必要な土地の総面積は概ね3haとされている。西大堀地区からの公募申請用地は6ha(第1種農地)あまりで、具体的な建設位置の決定後に残地となる3haをどの様な取り扱いとするのかが課題となる。この土地の取り扱い如何では、用地買収等に支障を来たすことが想定されることから、施設から出る余熱を利用した温水プールを含んだ健康福祉センター等の設置等、周辺施設の整備も今後の検討が必要である。
② 現在、宇佐・豊後高田・国東の3市のごみ処理施設の運営形態は、異なったものとなっているが、自治労方針等からもごみ処理施設は本来行政における直営が望ましい施設である。
  しかし、現在の各市の運営形態から直営が困難であるとの判断から、民間委託での業務運営が図られるのであれば、業者選定にあたっては公契約制度を活用した入札が実施されるべきであり、今後の調査・研究が必要であると考える。
③ 豊後高田市および国東市からの回収ごみの輸送コストを勘案した場合には、集積所等の中間施設の設置や現在各自治体で利用されている施設について、運転しなくなった後も一定期間の施設に対するケアが必要なことも明らかになっている。また、現在利用されている施設用地の活用等も各自治体では検討が必要である。
④ 今回のレポートでは主に建設用地決定に関する事項に触れたが、焼却炉の焼却方式等についてもごみ焼却後に排出される焼却灰の最終処分や施設建設後の維持・管理の観点からも看過できない重要な要素といえる。
  現段階の計画では、焼却方式は「ストーカ式」を採用するとの案が広域事務組合内部で検討されているとの情報もあるが、この焼却方式では「地域の関連企業等へのメリットが低い」との評価もあることから、拙速な決定は避け、各機関での慎重な議論が求められる。

5. 議員としてのスタンスについて

① 現時点では、ごみ処理(クリーンセンター)施設は、宇佐市の建設予定地区内においても両手を挙げて賛成するまでの住民理解は得られていないと思われる。一例を挙げれば「大分空港で収集された可燃物が宇佐市まで運ばれ処分されること」を考えれば疑問の一つもわいてくる。
② しかし、公募申請の地区住民として公募方式の地区責任を考えれば建設計画は予定通り進んで欲しい。現在起こっている反対運動を否定するつもりはないが、その解決については、議会にも一定の責任を感じている。
③ 個人的なことであるが、私は建設予定地に最も近い水田で農作物(米・麦・大豆)を耕作している。常識論ではあるが、環境悪化の懸念については常に監視し、管理体制は万全を期すべきである。また、風評被害は実害であり、もし発生した際の責任は施設管理者が負うべきと思われる。
④ 未解決の課題や今後の具体的な建設計画の進捗による新たな課題の惹起等も想定されるが、各自治体で利用されているごみ処理施設が耐用年数や処理能力において限界を迎えている昨今の状況を勘案すると、早期の着工・完成にむけて、私自身も議会や地域における諸活動の中で、微力ながら尽力していきたいと考えている。