【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第4分科会 地域から考える再生可能エネルギーによるまちづくり

 今回のレポートは、私の地元である大南の戸次・門前地区に、管理型の「産業廃棄物最終処分場」建設の計画が持ち上がったことにより、地域住民あげての建設反対運動の経過についてまとめたものである。
 この運動は、戸次地区のエゴではなく、この地が、最終処分場を建設するには、市内で最も不適切な場所であることを認識してもらうことと、将来的な安心安全な生活を維持することを目的とした運動である。



戸次地区の「産業廃棄物最終処分場建設反対」
運動の経過

大分県本部/大分市議会議員 帆秋 誠悟

(まえがき)

 今回のレポートは、私の地元である大南の戸次・門前地区に、管理型の「産業廃棄物最終処分場」建設の計画が持ち上がったことにより、地域住民あげての建設反対運動の経過についてまとめたものである。
 確かに、現代社会の中で産業廃棄物はどこかで処分しなければならない課題であることは十分認識する上で、戸次地域が建設予定地の下流域にあり、しかも、地下水を生活水としている家庭も多いところでもあり、なにより、大分市の公設卸売市場の野菜の約四割をこの下戸次地域の畑から提供していることからしても、生活に直結する大問題と言える。処分場から染み出た汚染された地下水が流れ込んだ土地で採れた野菜は食べられないといった風な風評被害も大いに危惧されるところでもある。
 この運動は、戸次地区のエゴではなく、この地が、最終処分場を建設するには、市内で最も不適切な場所であることを認識してもらうことと、将来的な安心安全な生活を維持することを目的とした運動である。

1. 事業者と行政との大まかな経過

2008年8月11日 大分市戸次の門前区に、「大分市産業廃棄物処理施設等に関する指導要綱」に基づく
管理型産業廃棄物最終処分場の「設置計画素案」が提出される
2009年3月30日 大分市が同指導要綱に基づく「設置計画素案」に対する意見書を通知
2010年3月24日 同指導要綱に基づく「設置計画書」を受理
2010年10月13日 事業者へ設置計画書の内容について、疑義を照会・指摘
(その後3年以上が経過するも事業者からはほんの一部の回答しかなされていない
状況のまま現在に至る)

2. 最終処分場建設反対地元実行委員会の活動経過等

① 2009年の経過
5月21日 旧大南支所で、大分市の産廃室から状況説明あり
10月4日 反対準備委員会を開催し、「戸次・大南地区産廃阻止期成会」を結成
10月31日 戸次、大南地区産廃阻止期成会主催の決起集会に約500人集まる
② 2010年の経過
1月28日 市役所担当部署と測量士とともに、門前区の役員が現地視察。その後大分合同新聞の
取材あり。
3月30日 戸次地区の「反対実行委員会」結成について協議
4月10日 門前区で産廃室からの説明会あり。約260人参加。
4月13日 第2回戸次地区区長会で、活動の実行組織を結成
4月28日 「戸次地区反対実行委員会」結成。大分合同新聞の取材あり。
5月8日 第2回実行委員会を開催し、土部会・水部会・人部会を組織した
~12月までの間 毎月10回の実行委員会を開催
5月18日 楠木生区で「説明会」開催。約140人参加。
5月20日 佐柳区で「説明会」開催。約100人参加。
5月22日 本町区で「説明会」開催。約120人参加。
5月25日 尾津留、大内区で「説明会」開催。約60人参加。
5月27日 嶺区で「説明会」開催。約100人参加。
6月4日 備後区で「説明会」開催。約90人参加。
6月6日 大南公民館で、約700人参加の戸次地区総決起集会を開催。報道各社の取材あり。
6月7日 大分市議会議長あて、「戸次地区の産業廃棄物処分場建設計画反対に関する請願書」提出
6月11日 地元藤田市議の質問傍聴
6月17日 地元帆秋議員の質問傍聴
6月18日 厚生常任委員会にて請願書の審議。最終日には全会一致で採択される。
7月14日 厚生常任委員会が現地視察
7月19日 今後の対応を弁護士と相談
7月30日 釘宮市長に、約15,000人の反対署名を手渡す。行政に対する「公開質問状」手渡す
8月3日 弁護士に相談
8月5日 事業者と、実行委員会役90人で第一回目の話し合いを実施
8月23日 市長から「公開質問状」の回答あり
8月28日 門前区と「地域別意見交換会」開催。OBS大分放送の取材あり。
9月2日 熊本の熊本学園大学で、専門家の中地教授と打ち合わせ
9月22日 大南公民館で、熊本学園大学の中地教授による勉強会開催
~11月13日の間 9会場にて「地域別意見交換会」開催
11月5日 大野川合戦祭りでブースを構え、建設反対の署名活動実施
11月16日 公明党市議団が現地視察
12月3日 自民党市議団が現地視察
12月4日 第2回戸次地区総決起集会を開催し、約850人が参加。OBS大分放送の取材あり。
12月8日 事業者と実行委員会で二回目の話し合いを実施。OBS大分放送の取材あり。
③ 2011年の経過
1月5日  
~12月の間 10回の実行委員会を開催
1月12日 社会民主クラブの市議団が現地視察
1月22日、29日 けやき地区で「地域別意見交換会」開催
1月28日 事業者に「申し入れ書」郵送
2月9日 市長に、事業者の計画書に対し「質問状」提出
3月20日 事業者から「申し入れ書」に対する質問書届く
3月29日 市長から「質問状」の回答届く
4月6日 事業者から「申し入れ書」の回答届く
この後、事業者とは8月上旬まで文書でのやり取りあり
6月1日 厚生常任委員会で現地視察
6月27日 帆秋議員が、業者への経営監視の強化について質問す
8月10日 市長に、搬入路に関する等「質問状」提出
8月25日  
~11月4日の間 12会場にて「活動報告・討論会」開催
10月6日 市長から搬入路に関する「回答」届く
11月12日 大野川合戦祭りにて実行委員会によるPR活動実施
11月27日 熊本県水俣市ボランティアリーダーの講演会開催。
総決起集会を開催し、「水俣はなぜ産廃場に反対し、どのようにして断念を勝ち
取ったか」について講演。約1,200人の参加あり。講演も大好評であった。
12月27日 事務局会議を開催し、総決起集会の総括と来年の取り組みの確認す
④ 2012年の経過
~12月の間 事務局会議と実行委員会を15回実施
2月21日 厚生常任委員会を傍聴
2月25日 現地管理事務所建設。30人参加。
3月21日 厚生常任委員会を傍聴
4月15日 現地管理事務所建設。24人参加。
4月20日 大分合同新聞が、事業者は19日、大分地検から国税徴収法違反の罪で杵築簡易裁判所
に略式起訴され、罰金30万円の略式命令を出したことを報道した。
4月30日 千葉工業大学の教授と意見交換会開催
5月25日 産廃室と意見交換会開催
7月3日 緊急三役会議を開催し、今後の対応について検討す
7月20日 弁護士に相談
8月23日   
~9月30日の間 14会場で「地域別意見交換会」開催
9月6日 司法書士に相談
10月10日 大野川合戦祭りにてPR活動実施
12月10日 産廃室の職員を簡易水道の水源地に案内
⑤ 2013年の経過
~12月の間 10回の事務局会議と実行委員会を開催
1月8日 産廃室との意見交換会
1月18日 実行委員会で、3月に現地でしいたけ祭りを開催することを確認
2月14日 朝日新聞の取材あり。2月20日の朝刊に掲載。
3月9日 しいたけ祭り実施。150人の参加あり。
3月15日 帆秋市議の代表質問を傍聴
4月22日 大南公民館で、行政からこれまでの経過の報告あり
6月6日 実行委員会にて、地域別意見交換会の実施と標語の募集について確認す
6月30日 現地の共有地の竹伐採作業実施。25人参加。
7月17日  
~9月28日の間 14会場で「地域別集会」を開催
10月29日 野津原の産廃処分場建設予定地の視察
12月1日 産廃対策課との意見交換実施。229人の参加あり。
12月5日 大分合同新聞の朝刊に、大分市が事業者に対して計画の取り下げの打診をしたとの
記事が掲載された。
12月12日 土地の所有業者との話し合い
⑥ 2014年の経過
~ここまで   毎月の実行委員会開催
いよいよ、行政、事業者との話も佳境に来ている状況である。

(まとめ)

 この問題が起こり、地元地域での反対運動も5年が経過しようとしている。地域を挙げて周辺地域や漁協、大野川下流域の住民等、多くの応援を受けながら地道に反対運動を継続してきた。
 これまで、法的根拠の調査や、地権者との協議、頻繁な行政との意見交換等を息つく暇もなく精力的にこなし、運動の中心を担っている地元実行委員会の皆さんや、自治会の役員の皆さんに頭が下がる思いでいっぱいである。
 地域が一体となったこの運動の成果として、戸次の体育大会や夏祭りの在り方について前向きな協議が行われることとなり、今では、この課題に対して感謝の念を覚えるところでもある。
 私も、地元議員として「自分たちのまちは自分たちでつくる」という、市民協働の精神に立ち、故郷のために尽力したいと思う。
 まだまだ続く戦いではあろうが、行政が取り下げ指導をするまでに至っている状況でもある。最後まで気を引き締めて頑張る所存である。