【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

 浜中町は、北海道東部の太平洋に面しており、漁業と酪農が盛んな自然豊かな町です。中でも霧多布湿原は、3,168haの広さをもつ雄大な湿原で、中央部が1922年に国の天然記念物に指定、さらに1993年にはラムサール条約登録湿地に認定され、国際的・学術的にも注目を集めております。湿原を中心とした観光産業は町としても重要な位置を占め、町職として地域の貢献・交流を目的とした町内イベントへの参加をめざしています。



「浜中うまいもん市」へ町職としての協力・参加


北海道本部/浜中町役場職員組合・自治体調査部

1. 浜中町の観光産業

 浜中町は、奇岩絶壁をみせる断崖・岬などの海岸線の景勝、国の天然記念物に指定されている霧多布泥炭形成植物群落(霧多布湿原)など学術的に貴重な資源を有する厚岸道立自然公園をはじめ、牧歌的な風景の内陸部の酪農地帯、トウキョウトガリネズミなど貴重な動植物、冷涼な気候により低地でも見られる高山植物など豊富な観光資源に恵まれています。
 しかし、続く景気の低迷により2013年度の観光客の入り込み数は約33万1千人と、近年で最も多かった2000年度の42万6千人と比べるとおよそ10万人減少しています。
 今後は、町の基幹産業である、漁業・酪農から生産される海産物や乳製品を活かした質の高いサービスの提供を各産業団体や生産者との連携をとりながら進めていく必要があります。
 また、滞在型観光を推し進めるために、ガイド等の人材育成、グリーンツーリズムやマリンツーリズムといった農山漁村の地域特性を活かした「体験」と「食」で浜中町の魅力を伝えるツアーメニューの開発が求められています。
 さらに、浜中町の食や自然の魅力を伝える「浜中うまいもん市」・「きりたっぷ岬まつり」、浜中町出身の漫画家モンキー・パンチさんの作品を活用した「ルパン三世フェスティバル」等のイベントは、最も重要な観光商品として更なる発展を期待されており、観光客の要求に見合う高品質で魅力あるサービス提供をめざしています。

【年度別観光客入り込み数の推移】

(単位:人)

年度

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

入込数

426,721

401,698

400,878

394,447

391,295

368,873

345,737


年度

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

入込数

339,142

302,664

350,798

333,440

265,948

282,786

331,188



2. 「浜中うまいもん市」について

(1) 「浜中うまいもん市」の概要
 浜中町観光協会が主催する「浜中うまいもん市」は、1972年から2006年まで34回にわたって続いた「霧多布湿原えぞかんぞうまつり」を引き継ぐかたちで2007年より名称と開催場所を変更して開催されており、合わせると2014年の開催で42回目を数える歴史あるイベントとして定着し、町内外に広く知られています。
 毎年7月の第一土・日曜日の2日間で開催され、霧多布湿原に咲くエゾカンゾウ、ヒオウギアヤメ、ワタスゲ等の植物が見所を迎え、イベント会場や付近の木道から湿原の花々を見渡すことができ、観光客からも高い評価を受けています。
 イベントの内容は、ゆで揚げたばかりの花咲カニや、ホッキ貝・カキの網焼き、トキシラズのステーキなど浜中町の味覚を味わいながら、カキのつかみ取り、地引き網体験、乗馬体験など、浜中町の自然を満喫しながら体験観光ができるものとなっています。

【浜中うまいもん市来場者数の推移】
(2日間の合計、単位:人)

年度

2009

2010

2011

2012

2013

入込数

3,000

3,000

3,500

4,500

4,500


(2) 「浜中うまいもん市」の課題
 イベント会場は、以前は湿原内に設置していましたが、会場スペースの問題や自然保護の関係から、数年前より道道を挟んで向い側の特設会場で開催しています。
 しかし、この場所は普段空地で雑草も伸び放題となっていて、整地や草刈りなどの整備をしないとイベント会場として使えないという課題がありました。


3. 職員組合のかかわり

(1) これまでの経過
 浜中町職は過去にイベントへの参加など町づくりの取り組みを行ってきましたが、公務員へのバッシングが強まる中、組合員個人として地域活動へ参加していても、組合組織としての活動は停滞していました。
 その中で、2009年度にまとめた、町職の組織財政検討委員会の答申で「地域社会参加活動について地域貢献活動の実施を検討」として地域に貢献できる運動を模索してきました。
 特に2011年の東日本大震災へのボランティア派遣を契機に具体的な活動の検討を行いました。

(2) 「浜中うまいもん市」への協力
 浜中町職では、2011年より、「地域産業への貢献」「若手組合員の育成」「組合員間の交流」を目的として、観光イベント「浜中うまいもん市」への作業協力を浜中町観光協会へ申し出ました。
 町職として担当する作業は、イベント開催1週間前の会場の草刈り奉仕作業となっており、毎年20人前後の組合員が作業に従事しています。目標としている地域産業の貢献とまではいきませんが、若手から中堅の職員が同じ作業を一緒に行うことが、組合員同士の交流につながり、仲間意識を育む取り組みであると考えています。
 また、会場の草刈り作業は、組合活動としては目立たず、地味な肉体労働と映るかもしれませんが、浜中を訪れた観光客の皆さんに、気持ちよくイベント会場を利用していただきたいというホスピタリティの精神は、行政職員としての場面でも、相手の気持ちを思いやる気持ちや、気配りができるようになるための注意力など、少しずつですが職員の意識の高揚につながると思われます。


4. 今後の展望

 今後は、町職としてイベント当日の手伝いなど新たな取り組みを増やすことや、他の町内イベントへの参加も視野に入れ、町の観光産業を応援する組織の一つとして、少しずつステップアップしながら継続的な協力をめざしていきたいと考えています。
 今、組合の抱えている課題として、組合員の組合離れが挙げられます。賃上げなど組合活動の効果が上がらない状況では、集会や学習会などは、面倒で、どうでも良いと感じられてしまいます。その中で、地域活動や社会貢献活動といった、割と軽い気持ちで参加できる活動は、組合運動の視野を広げ、地域に運動を理解してもらい、結果的に自分たちや地域の人たちの幸せに繋がるものと思います。