【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第5分科会 発信しよう地域の農(林水産)業 つながろう生産者(地)と消費者(地)

農商工連携事業による地産地消の取り組み


京都府本部/京都府中小企業団体中央会職員組合 佐々木克己

1. 白い大豆の誕生から農商工連携が始まる

 京都は多くの伝統野菜があり、京野菜として全国各地に広まり、その代表的なものとして、「九条ネギ」、「堀川ごぼう」、「万願寺とうがらし」、「賀茂ナス」などは全国的に有名。この京ブランド食品の仲間入りをめざす白い大粒大豆の「京白丹波」がある。
 この白い大豆の生い立ちはちょっと変わっており、京都の代表的な枝豆の品種である黒大豆「むらさき頭巾」をダイズモザイクウィルスという病気に抵抗性のある品種に改良することを目的に、病気に強い品種である黒大豆品種「玉大黒」と交配過程で、突然変異として現れたのが「京白丹波」である。京都府農林水産技術センター生物資源研究センターが、この白大豆を1998年から12年間にわたって交配を繰り返し、その形質を固定した。通常、新品種・改良された大豆種は、農家や農協などに提供することによってこのプロジェクトは終了する。
 しかし、今回の事業では、2010年度から2012年度の3年間にわたって、京都府オリジナルの「京白丹波」を使用した農林水産省の競争的研究事業費補助金事業である「極大粒・良食味の白大豆新品種の育成と普及展開による地域産業の活性化」をテーマに、京都府農林水産センターと中小食品加工業者と京都府立大学が農商工連携事業を実施した。農産物の育種・栽培を目的とする京都府農林水産技術センターが、食品マーケットである加工食品を担う中小食品加工業者と連携する新しいスタートとなった。
 京都府農林水産技術センターは、新品種の育成、産地化技術の確立、京都府立大学は、新品種の食品加工適正・評価、京都府食品産業協会は、新品種の実需評価・販売展開とそれぞれ役割を担った。

2. 三年間にわたる補助事業

 事業の初年度は、栽培上の課題、大豆の外観上の特徴、調理特性、加工者試事業の初年度は、栽培上の課題、大豆の外観上の特徴、調理特性、加工者試作品の特性などについて分析や食品の試作品作りとアンケート調査によって、基礎的な事業の積み重ねを行った。
 2年目は、大豆新品種「京白丹波」の栽培、機械化への対応、圃場準備、京白丹波の特徴を生かした加工食品が生まれた。
 京都には多くの京ブランド商品があります。京都産素材を使っていながら、「売り下手」、「PR下手」「人手不足」などの経営資源が弱いことが原因で思うような販売実績が上がらない。
 「豆腐」、「湯葉」、「おそうざい」、「納豆」、「生菓子」、「あられ」、「洋菓子」、「そば」、「かまぼこ」などの多くの食品が試作され、そのうち、「豆腐」、「湯葉」、「納豆」、「かまぼこ」等は、大手スーパーや百貨店で販売されている。
 まだ多くの生産農家が取り組むところまでには至っていないので、販売量が限定されているが、こだわり食品として好評を得ている。

 豆腐は、業界が協議を行って、その中から数名が販売開始を予定している。ある事業者は、その場で「京白丹波」を噛んで、「豆腐にはむかない。特徴がない」と言われ、即座に判断する職人魂を感じた。なかなか業界で取り組むには課題が多いと感じた。「豆腐」は、大型小売店では、価格はおよそ100円前後で販売されているが、町の豆腐屋さんは200円前後になる。しかし、京都産「京白丹波」と丹後の「にがり」を使って100%にし、京ブランド商品に認定された。ホームページを開設し、ネット販売し、着実にファンを獲得している。
 京白丹波を使った「豆ごはんの素」も認定食品になり、全国のイベント会場にて販売を実施しているが、まだ認知度が低く売り上げは思うように伸びていない。
 また、かまぼこは大手百貨店にて販売を開始し、順調に売り上げを伸ばしている。
 他に、商品は完成したが、包装デザインやネーミングまで支援を行ったものもあり、専門デザイナーにパッケージデザインを依頼したが、予算の関係から箱は既存のものを使用したので中途半端なものとなった。販売先も店舗での販売となっている。
 しかし、生産量は5トン程度であり、各業界で使うには不足している。農家とJAとの関係を密にしながら、生産量を伸ばしていきたい。

 また、京都産大豆ということから他府県生協が取り上げている事例もある。かまぼこは季節限定として、納豆は7月10日のイベント日のみと様々な工夫を凝らし販売を行った。糖質、タンパク質などの成分の分析や破断分析などの大豆の特徴の分析を化学的に行った。
 菓子事業者の製品開発を行ったが、特徴がないとの意見が出され、「あんこ」として使うには手間がかるとの意見であった。
 大豆栽培においては、様々な出来事もあった。大豆が青いまま畑で枯れる「青枯れ」、台風による被害、大豆の病気である「紫斑病」など多くの困難に直面した。また、鹿、サル、猪などの獣被害もある。農家の方々の苦労が理解できるものとなった。食品加工業者は、農家に農作物の安定供給や低価格供給を要求するが、いかに難しいことかがわかった。
 普及事業では、豆腐専門店では、学校からの要請によって、手作り教室を開催している。家庭の食卓に出る豆腐がどのように作られたのか、生徒たちには、初めての体験となった。また、外国人生徒も参加している。
 一般府民を対象に生産現場を訪ね、茎の豆さやを数えたり、葉の付き具合や周辺の環境などを直接観察することができた。帰りには、京白丹波の枝豆をお土産にした。「きょうと食の安心・安全フォーラム」に参加し、ゆば製造、京惣菜の食品加工事業者が一般消費者と意見交換する場を活用し、京白丹波の普及やPRの場を設定した。

3. 新たな事業の展開、生かし広める会の誕生

 2013年度は、産学公連携事業を取り組んだ。事業者と京都府立大学と京都府食品産業協会の産学公事業によって、名称を「京白丹波を生かし広める会」として、各種事業に取り組んだ。豆腐の事業者は本格的に組合事業として開始している。お菓子に関しては、様々な事業者が取り組んでいる。
 農家の刈り取り時には、現地に行って収穫状況などを確認した。現地では天候や病気の心配、品質などの様々な課題がある。大豆の価格も国内産大豆が2倍近くに値上がり、京白丹波大豆と変わらない値段となった。作物は自然との係りがあり、供給量などは安定しませんが、農家と連携が、如何に重要か、はっきりしてきた。
 食品物流の軌道に乗せるには、農協、大豆の卸売業などの事業者と関係をきっちり取り組まなければならない。また、物流関係の難しさもある。
 2014年度は、マカロン、ケーキなどお菓子の事業者と農家による商品開発を連携し、台湾などへの海外展開をはかる京都府の「きょうと農商工連携事業」として取り組む予定である。
 引き続き、「京白丹波」の普及をはかり、京都産大豆として成長させたい。