② ワンコイン・シルバーパス事業
高齢者の外出支援を目的に、従来の無料の敬老パス制度を変更し、2004年度から一部受益者負担を取り入れた制度に変更した。この制度は、75歳以上の佐賀市民は年間16,000円のワンコインシルバーパスを自己負担1,000円で購入し、1乗車あたり100円(ワンコイン)で市営バス全路線に乗車できるものである。
2014年4月からは、対象年齢が拡充され70歳以上となり、市営バス利用者の約3割を占めるようになった。
③ 高齢者運転免許証自主返納支援事業
65歳以上の高齢者が運転免許証を自主返納した場合に、市営バスの全路線が1乗車あたり半額で利用できる「高齢者ノリのりパス」を発行することで、高齢者のバス利用への転換と交通事故防止を目的としたもので、2014年10月から実施予定である。
(2) 環境施策との連携
① ノーマイカーデー割引の実施
佐賀市は、毎週水曜日は「エコアクションデー」として通勤時のマイカー抑制などの環境に配慮した行動を行っている。市営バスもその運動に呼応して、毎週水曜日は運転免許証を提示した場合は、市営バスの全路線が半額で乗車できる「ノーマイカーデー割引」を実施しており、環境意識の啓発とバス利用の促進を目的としている。
② バイオディーゼル100%燃料の路線バス
佐賀市は、2010年2月に「環境都市宣言」を行い地球温暖化対策の中で、家庭などから出る廃食用油をバイオディーゼル燃料とするリサイクル事業を実施している。市営バスでも環境部門と連携し、現在3台の路線バスにバイオディーゼル100%燃料を使用しており、環境保全と市民意識の啓発に取り組んでいる。
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【バイオディーゼル使用車両】 |
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【バイオディーゼル燃料】 |
(3) 子育て施策との連携
① 小中高生ノリのりきっぷの発売
中高生を対象に夏休み、冬休み期間中に一定額で市営バスが乗り放題になる「ノリのりきっぷ」を発売し、保護者の子育て費用の負担軽減と新たなバス利用者の掘り起こしに取り組んでいる。2014年度からは小学生も対象とすることで、利用の拡大を図っている。
② 学生デー割引の実施
毎週水曜日は学生証を提示することで、市営バスの全路線が半額で乗車できる新たな割引制度「学生デー」を2014年9月から実施しており、水曜日の「ノーマイカーデー」との相乗効果を図っている。
4. まとめ
公営バス事業は、自治体の行財政改革等により事業廃止や民営化が急速に進んでおり、最近10年間で10団体が公営バス事業を廃止し、現在では24団体となっている。地方都市は、圧倒的に高齢者の利用が多く、バス路線がなくなれば外出そのものができなくなり、生活に支障をきたしている市民も多いと聞く。マイカーが第一の移動手段である地方都市にとっては、バス事業の経営は容易でなく、財政負担がなければ事業経営が成り立たないことも現実である。
佐賀市の公営バス事業も、行財政改革により民営化の議論はなされていたが、紆余曲折はあったものの、最終的には公営バスとして維持する方針が出され、現在に至っている。
公営バスは単なる移動交通手段ではなく、市民サービスの一部であることを理解していただく必要がある。そのためには市の施策と連携した取り組みを積極的に行うことが重要であり、また自治体の街づくりのツールとして公営バスを活用することができれば、自治体が公営バスを経営する意義を見出すことが可能となり、ひいては市民サービスの向上につながるものと考える。 |