【要請レポート】

第35回佐賀自治研集会
第7分科会 ワークショップ「自治研」 楽しく学ぶ自治研活動

 「自治研」とは……地方自治研究の略で労働組合が主体的に地方行政や自治研政策、自らの仕事のあり方について研究し、実践していくこと。
 ひょんなことからスタートした私たちの自治研活動。右も左も分からないまま、「まずは実践」と取り組んで、5年目を迎えました。「自治研って何?」と疑問を持ちながら、実践してきた活動も早5年。自分たちの活動方針に沿って、歩んできた軌跡と課題を報告し、将来に向けての指針にしたいと思います。



自治研って何? 楽しむ自治研、実施中


石川県本部/七尾市職員労働組合・自治研対策部

1. 自治研活動の始まり

 2010年4月に石川県本部で開催された学習会で自治研活動の強化が提案されました。そこに七尾市職労の自治研対策部長が参加していたところから私たちの自治研活動が始まりました。「自治研活動を活発に」と言われたものの何をどうしたらいいのか? 悩んでいても始まらないとのことで、メンバーを募集。総勢8人のメンバーが集まりました。「自治研活動って??」と疑問を持ちながらの意見交換を繰り返しながら、「職場や七尾市に関するフリートークの中から実際に職場に導入できるもの、市民のためにできることなど、近い将来実現可能な試みをリストアップし、実践する」という目標を設定し、様々な意見の中から活動方針を決め「自分たちのまちをもっと知る」、「まちをもっと良くしよう」を合言葉に動き始めました。
 1年目は「石川県自治研集会」や「愛知自治研集会(第33回地方自治研究全国集会)」に参加し、全国の組合員の活動報告を聞き、大きな刺激を受けた後、「第1回レクリエーション大会」を企画し、開催しました。当市は、2004年5月に4つの自治体が合併したことにより、庁舎の分散化、職員数の増大、コミュニケーション機会の減少など職場環境の悪化が懸念されていました。そこで、「組合員全員が参加できる場の創出」が大切だと考え、競技種目にも工夫を凝らし、レクリエーション大会を開催したところ、予想を超える250人の参加を得て、成功裏に終えることができました。

2. 自治研活動の軌跡

 2年目以降、私たちは1年目に決めた活動方針に従ってどのような取り組みをすればよいのかなど、自治研メンバーで語り合いました。どうすれば多くの方に参加してもらえるのか、地域に関心をより持ってもらえるのか、など。取り組み自体がカタすぎてもダメ、柔らかすぎると「遊び」にしか思ってもらえない……苦闘は続きました。
 しかし、私たちは考えすぎず、決めました。背伸びしすぎず、「やりたいことをやろう」と。それ以降、活動方針に従い、取り組みを行う中で、自分たちも地域を知るきっかけになるとともに、参加者にも楽しんでもらえるような企画を立てました。これまで行った取り組みをご紹介します。

 

発表会の様子

(1) メンバーの業務内容を知る発表会の開催 【開催日】2011年3月~6月
 自分たちの担当業務や課題などを発表し、それに対するメンバー間の意見交換をしました。同じ職場にいながら、多種多様な業務内容に驚きました。情報の共有や公共サービスの向上を図るため、自治研ワーキンググループとして活動できるものがあると認識しました。

 


 

七尾城跡本丸付近で解説を聞くメンバー

(2) 日本五大山城 七尾城跡ハイキングウォーキング 【開催日】2011年5月
 七尾市の代表的な歴史遺産である七尾城を知るため、車ではなく、旧道という昔の道から本丸をめざして登りました。
 七尾城山の麓にある「七尾城史資料館」で事前学習をした後に、本丸まで40分かけて山を登り、上杉謙信も苦しんだ難攻不落の堅固なつくりに一同仰天。地域の歴史や文化を知ることの大切さを改めて認識しました。


(3) 七尾自治研集会(第26回石川県自治研集会) 【開催日】2011年9月
 県本部のご理解とご協力の下、市内の和倉温泉を会場に開催。まちづくりをテーマに「花嫁のれん」で有名な一本杉通りの視察。参加者からも様々な感想を聞き、地元の魅力を再確認しました。私たちが自治研活動に取り組む中、自分たちの街でこのような大会が開催され、自分たちの取り組みを発表する機会を得たことは、私たちメンバーにとっても大きな力になったとともに、県内各地の取り組みを知り、大変参考になりました。

(4) 第2回レクリエーション大会 【開催日】2011年11月
 競技種目を工夫し、組合員だけではなく、その家族でも参加しやすくするなど、競技を通して親睦が一層深まりました。

 

紅白玉入れの様子

(5) ぴっかぴっかのななおプロジェクト2012 【開催日】2012年4月
 5月3・4・5日に七尾市街地で催される「青柏祭」(青い柏の葉に神饌を供えたことから命名。高さ12m、車輪の直径2m、重さ20トンの「でか山」と呼ばれる曳山3台が曳き回されます。国指定重要無形民俗文化財)の前に、市内中心部の清掃活動を実施しました。

(6) 第3回レクリエーション大会 【開催日】2012年6月
 これまでの開催時期(11月)を変更し、6月に開催。時期を変更したことで、様々な行事と重なってしまいましたが、初参加者も多く、時期を変えての開催の必要性と、継続開催の必要性を実感しました。


 

市街地でのごみ拾い

(7) ぴっかぴっかのまちプロジェクト2013 【開催日】2013年5月
 「青柏祭」終了後の街なかのごみ拾いを輪島市職14人の仲間と共に実施。単なるごみ拾いではなく『清掃中』と称してゲーム感覚で行い、チーム対抗として【ミッション:①「前田利家とまつ像」or「長谷川等伯像」を撮影せよ! ②七尾のおすすめスポットを撮影せよ ③解体中のでか山を撮影せよ】をクリアし、さらにはごみをも拾ってくるというものです。写真の構図・笑顔・美化活動(ごみの量)・タイムの総合点で順位を決定しました
 ⇒市街地の街並み、祭り、人とのふれあい等パンフレットでは伝わらない魅力を実感。


 

特設ステージで七尾市をPR

(8) 金沢城リレーマラソン 【開催日】2013年5月
 職員の健康親睦と七尾のPRを目的に参加。駅伝型式の仮装パフォーマンスが有名な大会で、Tシャツ表に「THE EVENT OF NANAO」と表記し、背中には月ごとの七尾のイベントを貼り沿道の皆さんにPR。さらに、応援団に「とうはくん」、「能登カッキー」のゆるキャラや「ブリの被り物」を被ったランナーが花を添え、大いに七尾をPRできました。

(9) 白米千枚田 結婚式&稲刈り&BBQ in輪島 【開催日】2013年9月
 世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」でも象徴的な景観として知られる輪島市の「白米千枚田」での稲刈りと、そこで行われる伝統結婚式にスタッフとして参加。日本海を眼前に稲刈りと花嫁道中のお手伝い。稲刈りという貴重な体験と併せ、輪島市の歴史文化に触れたことは、大変貴重であり、終了後、地酒と鮑を肴に輪島市職と行った懇親会は盛り上がりました。

(10) 青柏祭でか山 人形見ツアー 【開催日】2014年5月
 青柏祭に先立って開催される「人形見(※1)」の魅力を体感し、観光資源としての有効性を確認しました。3年間の自治研活動を通して、でか山の組立・解体・人形見など本祭以外の魅力を実感。地域の歴史と文化を知り、七尾の営業マンとしてこれからしっかりと発信します

 

定置網漁「ひき網」の様子

(11) 崎山半島里山里海巡り 【開催日】2014年6月
 世界農業遺産「能登の里山里海(※2)」に象徴される「里山里海」が今に息づく、七尾市崎山地区の様々な地域資源を巡るミニツアーを実施しました。私たちにとっては何気ない農漁村ですが、旅行雑誌関係者がこの地域を訪れた際、ここに住む人たちの努力や将来への意気込みに惚れたというほど、隠れた資源が多い地域です。私たちは、(株)鹿渡島定置(※3)さんの定置網体験や湯川町(※4)の鉄砲ぐり調査などを通して、地域の方々と交流を行いました。将来的には、旅行商品となるようなミニ体験コースになればと思っており、観光関係者との連携も今後行っていきたいと考えています。
 この調査をもとに、パンフレットを作成し、市内外の方に知っていただけるよう取り組んでいきたいと思います。

3. これからの公務員

 これまでの私たちの活動は、本来の自治研活動と言えないかもしれません。しかし、人員削減のため、業務量が増大し、余裕のなくなっている職場環境の中で、活動を通じて顔を合わせ、会話を交わすことができる仲間は貴重な存在ではないでしょうか。地域のコミュニティの低下が叫ばれていますが、それは地域だけではなく職場でも同様で、人間関係が希薄になっている現実があります。その中で孤立せずにいつでも相談できる仲間作りの機会の創出は職場環境の改善、ひいては市民サービスの向上に繋がると思います。
 前回、前々回の全国自治研集会でもこれからの公務員がめざすべき方向性が示されていました。《①職員が地域に溶け込むこと》、《②これからの組合のあり方》が論点となっていました。日常業務に加え、地域では一市民としての役割もあるだろうし、しかし、都会と地方、国・県・市町村では状況は異なり、田舎に行けば行くほど、公務員が地域に果たしている役割が相対的に大きく、その点では大きな格差が存在します。地域に貢献することで、住民の不満だけでなく、ニーズ、そして信頼をも得ることができます。何でもかんでも地域の役を公務員がするのは、いささか問題があると思われますが、むしろ内側から組織を活性する役割を担うことができるのではないでしょうか。
 組合のあり方については、旧態依然としたイメージを払拭すべく、また景気低迷による公務員バッシングの回避もあってか、傾向として地域のために住民とともに行う活動が多く感じました。地域に飛び出して活動する点は、直接住民の声を聞く機会にもなり、活動を実施している姿はきっと伝わっていると思います。

4. 最後に

 自治体職員、職員労働組合員として、また一市民として、自治研活動を積極的に進めるため、以下の課題をしっかりと克服しながら、前に向かっていきます。

1)職場での人間関係の向上と結束力の強化
2)地域の現状を把握し、求められているものを理解
3)それに対し、自治研として何ができるのかを検討
4)できることからコツコツと着実に取り組みを実施
5)地域と共に取り組みを実施

1)自治研活動の発信
  私たち自治研の活動は未熟なものですが、やはりその活動に関する組合員への周知、地域への周知がまだまだ不足しています。今後も活動を発信することで、仲間同士のつながり、NPOや民間団体・地域と連携しながら活動を進めます。
2)仲間・スキルアップ・継続は力なり
  活動のPR不足もあり、私たちの活動の認知度が低い状況です。しかし、仕事の熱意・地域への思いを持っている組合員はとても多いのも事実です。彼らと共に、ステキな自治研活動ができるよう持続性のある活動を地道にやっていきます。
3)地域と共に
  自治研活動3年目でようやく地域で活動しましたが、今後はこのような機会を増やすことで、どんな小さなことでも地域と連携し、貢献していきます。姿の「見える活動」を進めていきます。
4)他の自治研との交流
  情報交換や情報共有などを目的として、市内外の自治研グループとの交流もとても大切だと考えます。地方自治研究全国集会でも全国各地の事例発表がなされており、大変刺激になりました。このような機会をどんどん増やすことで、私たちの自治研活動のレベル向上につなげ、元気な七尾をめざします。

 2015年春には、能越自動車道が七尾まで、北陸新幹線が金沢まで延伸します。金沢駅から列車で1時間の距離にある交流体感都市七尾市へ、これまで以上に多くの皆様にお越しいただけるよう魅力ある街づくりをしなければなりません。私たちは、市職員としてはもちろん、自治研メンバーとしても七尾の魅力づくりとその発信に積極的に携わっていきたいと思います。




※1 人形見:
   でか山の舞台には、歌舞伎や歴史物語の場面が表された人形が飾られるが、祭りの前夜に人形宿と呼ばれる慶祝のあった町屋に飾られ披露される。人形は工夫を凝らした庭園や贅を尽くした部屋のしつらえを背景に飾られる。そぞろ歩きをしながら9軒の宿を巡り、祭り前の高揚感を感じる行事。
※2 世界農業遺産「能登の里山里海」:
   能登という自然環境にあった昔ながらの伝統農法・漁法や景観、現在の生活そのものが評価され、先進国では佐渡市と共に初めて認定されました。現在では、他に静岡県掛川地域、熊本県阿蘇地域、大分県国東地域が認定され、国内認定地は5地域です。
※3 (株)鹿渡島定置:
   人口減少が著しく、第1次産業従事者が減少している中、平均年齢30代前半の若者が活躍する会社。個性派揃いの面々は獲れたばかりの魚に神経の生け〆を施し、より新鮮に出荷したり、加工所を作り、製造・加工・販売の6次産業化を図ったり、イベントに出かけて新鮮な海の幸を使った地元グルメを店頭販売したりと積極的な営業販売を実施しています。
※4 湯川町:
   崎山半島の中山間部に位置し、耕作地が少なく、水源の確保も困難な地域であり、先人は水田に水を引くため、鉄砲ぐり(ホーダツ)と呼ばれる用水路を掘削し、水田を潤しました。現在は用水路も整備されましたが、今でも一部は使用されています。これは先人が苦心の末完成させた農業土木遺産であり、この実態把握を目的に実地調査を行いました。