4. 『山形らしさ』ワークショップ
(1) 開催の概要
① 日時場所参加者、協力体制
2014年2月と3月の2回、平日の19時から開催しました。参加対象は山形市のほか隣接2市2町の自治労組合員とし、各単組あて参加を要請したほか、県本部村山総支部の協力を得ました。その結果、山形市職労8人に加え、上山市職労と中山町職労から計3人の参加をいただき開催しました。
② 会議のルール
ワークショップはそれぞれ5人または6人の2班に分かれて行いました。他の参加者の意見を否定せず、意見の出やすい雰囲気づくりに参加者全員が協力すること、現実に囚われ過ぎず豊かな発想を広げることをルールとして進めました。
(2) 議論の経過
① 第1回「山形のいいところ、悪いところ」
1回目のワークショップでは、まず現状把握として、参加者が山形市について思いつくことを付箋紙に記入しました。議論の途中では、前述の統計調査や、県外単組へのアンケート結果なども参考にしながらさらに議論を進め、山形市のいいところ、悪いところが次第に明確になっていきました。
良いところは、やはり蔵王や山寺のような自然や文化、サクランボに代表される豊富な果物や、全国一、二を争う消費量のラーメン、芋煮などの食べ物が挙げられました。
逆に悪いところとしては、宣伝が下手で知名度が低い、狭い範囲で足を引っ張りあっている、クルマが必須で水道代が高いなど生活にお金がかかることや、事業実施についてあまり発想が感じられないことなどが出されました。
○山形市の良いところ
・田舎と街のバランスがよい
・突出しない
・医師が多い
・災害が少ない
・果実が豊富(さくらんぼ、ブドウ、ラフランスなど)
・食べ物がおいしい(ラーメン、芋煮、蕎麦など)
・蔵王、山寺などの自然、歴史がある
・温泉が身近にある
・人情深い |
○山形市の悪いところ
・夏暑く、冬寒い
・水道代が高い
・交通が不便で、車がないと生活できない
・買い物、レジャーなど行く先が限られる
・雪が多い
・宣伝が下手
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② 第2回「問題意識と具体的アイデアの創出」
2回目のワークショップでは、前回出された魅力や問題点をもとに課題を設定し、その解決策を提案することとしました。
班ごとに「蔵王を売りこむ企画の提案」、「宣伝ベタからの脱出」という課題を出し、議論に入りました。議論が進む中で共通の問題意識として浮かび上がったのが、豊富な資源を活用しながら、独自の文化の中から新たな魅力を見つけ出す必要があるということでした。この問題意識を元に各班から2つ具体的なアイデアが出されました。
1つ目は、『夏の蔵王を売り込め』。蔵王は全国的な知名度を持つ観光地ですが、夏は比較的に閑散期となります。この夏の蔵王で、「新たなスポーツの創出」「スイーツ屋台村」「蔵王ご当地ラーメン」「温泉でつくる温水プール」「冷やし温泉」など、新たな名物によりテーマパーク化しようというアイデアです。
2つ目は、『山形フルコース』。突出したものがなく、「山形イコールこれ」というイメージがないことを逆手にとり、バランスの良さをいかして観光や食をまとめてフルコースとしてパッケージングしてPRしてしまおうというアイデアです。
(3) 結 論
ワークショップを通し、「山形と言えばコレ」という具体的な結論には至っていません。これは、良いものがないからではなく、様々な魅力に溢れているがゆえに特定が難しいとも言えます。このような視点に立てば、あえて何かに特化せず、これまで培った魅力をフルコースで体験できる仕組みをつくることが『山形らしさ』につながるとも考えられます。
また、新たな魅力を創出するには、これまでの山形の食や観光を捉え直すことも重要と考えられます。例えば、ワークショップを通して得られたキーワード「冷やし」をテーマに、「冷やしシャンプー」に続く「冷やし○○」のようなものを新たな形で提供していくことが『山形らしさ』の明確化に繋がるのではないでしょうか。
5. まとめと今後にむけて
(1) 研究の成果
① 研究方法の学習
素朴な疑問からスタートした『山形らしさ』研究でしたが、文献や統計の調査、県外単組へのアンケート、近隣単組も参加してのワークショップ開催と、研究として一定の成果を得ることができました。
研究を進める中で、文献調査や統計分析の方法、アンケートの手法、ファシリテーション技術など、多くを学びスキルアップを図ることができました。
② 具体的アイデアの創出
ワークショップでは、課題の共有だけではなく、「冷やし」をキーワードにしてアイデアを具体化するという、問題解決型の議論を行うことができました。
③ 自治研だからできること
部員は様々な分野で高い知識を持っており、それらを結集することで議論が深まっていきました。このようにして自治研活動が発展していくことを実感しました。また、ワークショップで職員としての立場ではなかなか言えない思い切った発想で議論ができたことは、自治研だからこその成果だと考えています。
(2) 『山形らしさ』として見えてきた「冷やし文化」
山形市は盆地に位置し山々に囲まれていることから夏は暑く、2007年まで国内最高気温40.8℃という記録を持っていました。冷やしラーメンは全国的に有名ですが、1995年に市内の理容店が始めた冷やしシャンプーも知名度があります。その他、冷たい玉こんにゃく、冷やしシェービングも山形市が発祥です。
暑い気候風土だからこそ「冷やす」という発想が自然に生まれ、それが長い時間をかけて市民に共通の価値観となり、文化として定着したものと考えられます。
現在の最高気温記録を持つ埼玉県熊谷市は「あついぞ! 熊谷」で地域活性化に取り組んでいますが、山形市のキャッチフレーズは「山形を冷やせ!」ではどうでしょうか。
(3) 課題と今後の方向性
① 課 題
情宣紙や部報「自治研情報」を用いて部員やワークショップ参加者を募集しましたが、部員の2人増加にとどまりました。いわゆる「組合の活動」と受け止められているのかもしれません。市政やまちづくりについて意識の高い職員が増えてきている中で、自治研をどう浸透させていくかが課題です。
アンケートやワークショップは手探りで進めており、まだまだ改良の余地があります。また、問題にアプローチする方法には、私たちが気づいていないものがあるはずです。全国自治研成果に学びながら、より良い研究にしていく必要があります。
② 今後の方向性
『山形らしさ』を考えるには、市外・県外など、より多くの意見を聞きたい、というのが部員の考えでした。出された具体的アイデアが実現できるものなのか空論なのか、私たちには何ができるのかを考えるには、民間職場のなかまや地域の人々など、より多くの人々と一緒に研究を進めることが不可欠です。研究を進める中で、私たちは自治研の本質に気づいたとも言えます。今後の方向性を部会で決めていくにあたっては、このような視点で「どうすればできるか」を考え、結果を形にしていくことで『山形らしさ』研究を継続・発展させていきたいと考えています。 |