【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第7分科会 ワークショップ「自治研」 楽しく学ぶ自治研活動

 我孫子市職員組合が新たな自治研活動として2010年から始めた「手賀沼ふれあい清掃」への参加について、取り組みの経緯や現状、課題、今後の展開について報告する



「手賀沼ふれあい清掃」への参加をきっかけに、
まちづくりへの参加を
―― 我孫子市職員組合の自治研活動の取り組みの経緯と
今後の課題・展望 ――

千葉県本部/我孫子市職員組合・自治研部

1. はじめに

(1) 我孫子市職員組合が新たな自治研活動に取り組んだ背景
図1 我孫子市の概略地図
 
 千葉県の北西部、都心からJR常磐線快速電車で約35分の位置にある我孫子市は、東京近郊のベットタウンとして発達した人口約13万4千人のまちである(図1)。この我孫子のまちに職員組合が設立されたのは市制施行以前の1955年。当時の旧我孫子町・湖北村・布佐町が合併し、新たな我孫子町が誕生した頃である。
 設立以降、我孫子市職員組合(以下、当組合)は職員の労働条件の向上のための運動に取り組んできたが、それとともに、自衛隊下総基地の米軍機訓練基地化阻止問題への取り組み、組合員が市内の原爆被爆者に取材して作った「聞き書きヒロシマ・メモリー」の刊行、毎年5月に開催される「憲法を考える市民の集い」の実行委員会への参画など、市民と連携したさまざまな取り組みを行ってきた。また、我孫子市のシンボルでもある手賀沼の水質汚濁問題に関しては、水質浄化のためのせっけん利用推進運動に関わり、手賀沼に関わる市民団体等の連合組織である「美しい手賀沼を愛する市民の連合会」にも組合として加盟している。ただし、当組合のスタンスとして、各種の運動の前面に出ることは敢えてしてこなかった。それは、市民活動が活発であった我孫子市においては、市民とともに活動する上で当組合が前面に出ない方が良いとの判断があったためである。
 このような理由で、特に自治研部活動と銘打った組合独自の取り組みは行ってこなかった。しかしながら2010年の第33回地方自治研究全国集会(名古屋市)に当組合の自治研部担当者が参加した際、全国の自治研活動の発表を見聞し、自治研活動に関わる人々の熱い思いに触れたことがきっかけで、改めて「自分達にも何か始められることはないか」と考えるようになった。これが新たなテーマで当組合の自治研部活動を立ち上げようという機運につながった。

(2) 具体的な取り組みテーマの選定
 新たなテーマで自治研活動を始めることについて当組合の執行委員会は前向きであったため、取り組みを開始すること自体には大きな問題はなく、むしろ課題となったのは活動のテーマ選定をどうするか、であった。
 自治研活動を新たに始めるにあたって、自治研担当者が考えたのは、市の職員はもっと自分たちのまちに関心を持ち、主体的にまちづくりを考える機会を持つべきではないか、ということであった。そのためには、業務以外の場面で、まちづくりの活動に何らかの形で参加することがいいと考えた。
 では、より多くの組合員が業務以外でまちづくりに関わろうとする機運を高めるためには何を活動テーマに据えればよいのか。しかも取り組みを一過性ではなく、継続的に行っていくためには、参加者がそのテーマに共感し「やってみたら面白かった」と感じて、次回も参加しようと思ってもらう必要があると考えた。まちおこしの活動か、調査研究のようなものか、なかなか考えが定まらなかったが、ある時ふと、担当者が以前携わったことのある「手賀沼ふれあい清掃」に思いあたった。
 手賀沼は我孫子市の南側に広がる面積約6.5平方kmの湖沼である(写真1)。かつてはウナギの名産地として知られ、漁師は船から湖水を掬って飲んだといわれるほど清澄な水域であったが、高度経済成長期に流域で宅地開発が進んで生活雑排水が大量に流入し、1974年から27年間連続で全国の湖沼の水質ワースト1となってしまった。国の北千葉導水事業により2001年度に全国ワースト1は脱出したものの、かつての水質と生態系は未だ取り戻せていない。
 この手賀沼の水質浄化の取り組みには国や千葉県、流域の市町村のほか、流域住民も共に参加してきた。その一つが「手賀沼ふれあい清掃」で、手賀沼浄化に関わる市民団体や関係業界の組合、我孫子市などが実行委員会を組み、毎年12月に市民数百人が参加して行われている(写真2)。
 前述したように、手賀沼浄化は当組合が深く関わってきたテーマである。「手賀沼ふれあい清掃に参加して我孫子のシンボル手賀沼をキレイにしよう」―これなら組合員の共感を得られるのではないかと考えた。組合員が市民と一緒になって汗を流せる絶好の機会でもある。既存の清掃活動への参加のため独自性とインパクトには欠けるが、当組合の負担は小さく"はじめの一歩"としては最適と考えた。早速、執行委員会の了承を得て、正式に当組合の自治研活動として取り組むことにした。

 
写真1 現在の手賀沼の湖面   写真2 ふれあい手賀沼清掃開会式の様子

 

2. これまでの取り組み概要

(1) 初年度の取り組み
 「手賀沼ふれあい清掃に参加しよう」と組合ニュースで初めて組合員に参加呼びかけを行ったのは2010年冬である。当初は組合員からどのくらい反応があるか全く自信がなかったが、当組合の現業評議会から8人の申し込みがあり、自治研担当者等をあわせて全部で12人の組合員が参加した。清掃当日には市民500人以上が集まり、我孫子駅近くの手賀沼公園から約2kmの範囲の沼沿いの歩道や湖岸のアシ原で清掃を行った。当組合員も長靴を履いてアシ原に入り、ペットボトルや空き缶、ビン、レジ袋に入れられた弁当容器、金属片だけでなく、タイヤやビニールシート、布団などの粗大ごみも引き上げた(写真3)。この日の清掃活動全体では、不燃・可燃あわせて1,360kgのごみが回収された。
 なお、清掃終了後には現業評議会メンバーが、清掃参加者(市民)に花の種を配布して、組合の活動PRも行った(写真4)。

 
写真3 回収作業のようす   写真4 花の種を配布して組合活動をPR

(2) その後の経過
 続く2011年には独自のポスター(図2)も作って募集を行った。その効果か、この年には入庁1~2年目の若手組合員3人が参加し、現業評議会メンバーを含め前年より微増の14人の参加を得た。その後、2012年には10人、2013年には20人の参加者があった。最近は組合員だけでなくその家族(子どもたち)も参加してくれるようになり、活動の輪が徐々に広がっているのを感じている(写真5)。
 なお、いずれの年も自治研担当者たちがそれぞれ趣向を凝らした福袋を準備し、参加賞として参加してくれた人に配っている。これは参加してくれた組合員に「行ってみたらちょっと面白かった」と思ってもらえばと考えたからだ。「業務外でまちづくりや社会貢献活動に参加しよう」などと大きな看板を掲げると誰も参加しないので、"遊び"の要素というか、「ちょっと暇だから行くか……」と思ってもらえるくらいの気軽な雰囲気作りを心がけている。

図2 組合員に参加を呼び掛ける独自ポスター    
 
    写真5 清掃後に全員で集合写真(2013年)

3. 課題と今後の展望について

(1) 参加者増に向けて
 年を追うごとに取り組みに対する組合員の認知も進み、徐々に参加人数も増えてきた。実績としては極めてささやかだが、「とにかくアクションを起こそう」という第一段階の目的は達せられたと考えている。滑り出しに成功した要因の一つは、現業評議会のメンバーが毎年積極的に関わり活動を支える力になってくれたことだ。一定数の参加者が定常的に参加してくれたことで活動の基盤が築かれたと感謝している。
 一方で、ターゲットである若手の事務職の組合員をほとんど取り込めていないことは課題である。最近の若い世代はボランタリーな活動に関心を持っていると思われるが、この層の参加が増えない。主な原因はPR不足だが、単に組合ニュースやチラシ・ポスターだけでは参加を増やすことは難しい。このため担当の執行委員が中心となって、自分のまわりの組合員一人ひとりに口コミで参加呼びかけを粘り強く続けていこうと考えている。また当組合で最も人数が多く活発な青年部の活動とも連携を図りたい。さらには2013年秋に設立された当組合の退職者会にも呼び掛けて参加者を募り、世代を超えたつながりを作っていきたいとも考えている。

(2) より主体的・発展的な取り組みへ
 「手賀沼ふれあい清掃」への参加は、当組合自治研部の具体的なアクションとしてこれからも続けていく予定である。これまでは当日清掃活動へ参加するだけであったが、今後はもう一歩踏み込んだ形での参加も考えている。
 一例を紹介すると、給食調理員が多くいる現業評議会からは「当日、自分たちが温かい飲み物か、豚汁を作るから参加した市民に振る舞ってはどうか」という意見が寄せられている。準備不足のため、いまだ実現できていないが、今年度はぜひ実現すべく、手賀沼ふれあい清掃実行委員会に当組合から提案を出す予定である。
 また、せっかくたくさんの市民団体や地域の組織の人たちと顔を合わせる機会でもあるので、それぞれの団体がバラバラに作業をするのでなく、清掃をきっかけにお互いが知り合えるような仕掛けができないか、具体的なアイデアも提示してみたい。そのようなちょっとした工夫で、当組合とこれまで付き合いのなかった市民団体ともつながりが出来れば、当組合の自治研活動もさらに活性化され、清掃活動以外の新しい展開も見えてくると思う。そんな発展を夢見ながら、これからも地道な活動を続けたい。