【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第8分科会 男女がともにつくる、私たちのまち

 質の高い地域公共サービスの構築には、市民、NPO等の連携が不可欠です。自治労西東京市職員労働組合は、「市民の多様なニーズに応える良質な公共サービスに向け、市民との協働を強めよう。」という方針を掲げ、福祉、環境、子育て、被災地支援等の活動を展開してきました。この活動は、市民の力に依拠した自治体改革、市民とともに学び活動する人材育成が求められているという問題意識からです。以下、私たちの根ざす自治研運動を提起します。



地域の活動の中で生まれた絆と生命を守る力
―― 市民協働と交流がまちづくりを活性化し、人を繋ぐ ――

東京都本部/自治労西東京市職員労働組合・執行委員長 後藤 紀行

1. 公民館を中心に継続的に取り組まれている市民同士の交流

(1) 公民館を通じた「しんちまち生涯学習フェスティバル」の活動
 新地町と西東京市の交流の始まりは、東日本大震災直後の4月に開始された自治労の復興支援活動からです。避難所の運営、被災者の健康相談等に多くの組合員が汗を流しました。360度見渡す限り瓦礫の山という想像を絶する被災状況。厳しい状況の中でも住民同士で助け合っている住民と支え合う地域の強い絆。住民から信頼を得て、避難所としての機能と住民を繋ぐ地域の拠点としての機能を担っていた公民館、不眠不休で住民と連携し、公共サービスを守る職員の姿に感動しました。このまちの住民、職員と結びついていたいという支援活動をした組合員の思いから、公民館活動を通じた交流を開始しました。
 2011年11月に開催された西東京市芝久保公民館まつりでは実行委員会が、支援バザーを実施しました。翌年から「しんちまち生涯学習フェスティバル」の「復興支援カフェ」の運営支援等の活動が開始、2013年には、西東京市田無公民館まつり実行委員会も支援に加わり、市民と組合員が新地町へ訪問、大豆雛を仮設住宅の皆さんにお届けする活動、「えほんうたライブ」を図書館、児童館、保育園で実施し交流を深めました。
 2014年は、1月25日、26日の「しんちまち生涯学習フェスティバル」に公民館の組合員、市民、総勢50人で参加。「絆音楽交流会」では、ウインズパストラーレ吹奏楽団、江戸前かっぽれ西東京道場の皆さんが笑顔と涙の感動的なステージを演出、新地町民と西東京市民の交流が、双方の生きていく力になっているのを感じました。
 また、2013年には、新地町斉藤生涯学習課長、2014年には、村上美保子さん(語り部・被災した新地町旅館「朝日館」女将)に西東京市に来ていただき、防災についての講演と紙芝居をして頂きました。
 交流の輪は広がり、交流の絆は私たちの財産となっています。西東京市にあるクリスマスローズ農場ふみやさんから、毎年寄贈頂いているクリスマスローズは、仮設住宅、駒ヶ嶺公民館等の地に根を張り、毎年、東日本大震災の発生した3月頃花を咲かせています。市職労の活動から公民館活動を通じた交流に発展しました。
 この取り組みを通じ、災害時の避難所としての公民館、地域のコミュニティーを再生する拠点としての公民館、そこで働く公務労働の意義を再認識することができました。
【「しんちまち生涯学習フェステバル」での絆コンサート】
【寄せ書きコーナー】

(2) 産業支援のかりんとう誕生
 新地町の仮設住宅の皆さんと和やかな時間が過ごせればと西東京市に本社のある「旭製菓」のかりん糖をお土産に訪問したのがきっかけで始まった「しんちまち生涯学習フェスティバル」での「復興支援カフェ」と旭製菓の寄贈による「かりん糖大抽選会」。
 交流の中で、「風評被害に負けず、雇用と産業が元気になるよう特産品をつくりたい」と新地町加藤町長、農協関係者等から意見が出されたことを契機に、JAそうま新地支部、旭製菓守下社長等関係者の熱い思いでニラ、トマト、りんご、ネギ味噌、ごぼう人参、いちご、そばといった新地町産の特産品が、「復興応援キリン絆プロジェクト」の助成を受け、旭製菓とJAそうま新地支部で共同開発され、販売されるようになりました。市民交流から、雇用、産業づくりに発展した好事例だと思います。

【「しんちまち生涯学習フェスティバル」での「復興支援カフェ」と「お楽しみ大抽選会」】

2. NPO法人年輪との協働活動から災害を想定した地域づくりを学ぶ

(1) 復興支援活動を通じ、災害時支援体制、地域包括ケアを学ぶ
 「いつまでも地域で暮らし続けるために」をキャッチフレーズに地域の中で365日、24時間のサービスの必要性を発信、デイサービス、訪問介護、グループホーム等介護保険事業および配食事業等の活動を展開、今年20年目となるNPO法人サポートハウス年輪と協力し、東日本大震災支援活動を展開してきました。
 バザー、メーデー等での被災地の物販販売、災害時の体制づくりを学ぶための講演会の開催、連合の制度政策集会への参加、宮城県石巻市、石巻市社会福祉協議会、福島県相馬市のグループホームなどの福祉施設へ共に出向き、義援金等を届け、現地の職員等と学習と交流を深めてきました。
 災害時は、想定外のことが多く発生します。特に高齢者等福祉施設では、生命に関わることが次から次に起きてきます。想定外を想定内にする平時からの災害協定や訓練等の重要性、市、社会福祉協議会、企業、NPO、市民との連携、地域づくりの必要性を学ぶことができました。
 2014年6月、政府は、防災白書を策定しました。白書では、東日本大震災など過去の大規模災害で、行政機能に限界があることが明らかになったとして、「地域コミュニティーの力を効果的に活用していくことが不可欠」と指摘し、住民や地元企業との連携強化を訴えています。「一般的な地域関係の活性化が防災力の強化にもつながる」とし、行政がコミュニティーづくり体制や地区ごとの防災計画策定体制の構築を促すべきと提言しています。
【年輪と市職労合同での石巻市社会福祉協議会への視察】
 私たちは、これまでの活動を踏まえ、春闘、連合の政策、制度要求等で地域防災ネットワークの強化、具体的な地域防災計画の策定等を要求してきました。また、地域の一員としての活動の必要性を再認識し、市職労としても、「災害ボランティアサポートチーム」を結成、また、高齢者の地域の見守り活動をする「ささえ合いネットワーク」の登録団体にも登録しました。
 現在、福祉分野では、要介護者等の増加が見込まれる2025年以降を見据え、「地域包括ケアシステム」の構築が課題となっています。「地域包括ケアシステム」の実現には、「自助」「共助」そして「公助」へのつなぎ役を担う地域の中に根ざす住民主体の地域の問題発見、見守り、声かけシステムなどの活動が重要と言われています。
 この間の活動の中で学んできた災害時を想定した地域づくりと地域包括ケアシステム構築のための地域づくりは、共通の部分も多くあります。そのことを踏まえ、現在、NPO法人、市民等と連携し、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みを進めています。
 2月24日(日) 市民会館において「東日本大震災から2年を前にして」シンポジウムが開催されました。介護事業所NPO法人サポートハウス年輪の主催で、被災地の介護事業所の方をお招きして、その時何が起こり、どう動いたかを伺いました。西東京市職労では、ロビーにおいて被災地の物販をしました。
【お話しいただいた方】
相馬市 グループホーム「えくせる」団体
石巻市社会福祉協議会団体    
山田町「まちまどギャラリー」団体
※当日の資料がご希望の方は組合事務所まで連絡をください

「3・11の現実そして、私たちはこの町にきた」が、ジェフリーから発行されました。西東京市に避難されている方からの避難体験の聞き書きをまとめたものです。組合事務所で購入できます。

【自治労西東京市職労ニュースより「私たちは忘れない3・11」】

(2) 夏フェスタインそうま、佐藤健作「不二プロジェクト」相馬公演
 福島県相馬市では、原発事故の影響もありスタッフ不足は深刻で、結果として閉鎖に追い込まれる施設も出てきています。2012年2月に西東京市民会館で年輪主催で開催された「震災から2年を前にして」のシンポジュウムで、講師であるグループホームの職員から深刻な人手不足について報告されました。その上で、当日ゲスト参加した和太鼓奏者「佐藤健作」さんの祈りの太鼓を「是非相馬市で実施してほしい」という要望が出されました。被災地で過酷な中でがんばっている職員、住民を支援したいという気持ちで、福島の復興を祈念し、祈りの太鼓を演じる佐藤健作さんの太鼓講演の実現に向けた活動を相馬市職等の協力で展開、2014年8月には、「夏フェスタインそうま」へ佐藤健作さんが出演することになりました。その後、多くの皆さんの協力の中、佐藤健作「不二プロジェクト」を4月12日に、相馬市民会館大ホールの公演を実現することができました。
 公演後、現地のグループホームの職員からメールを頂きました。「昨日は、ありがとう。よかった、前を向いていけます等の声を頂いています。間違いなく相馬の方々の心に響いています」という内容でした。
 当日の様子が、地元新聞、広報そうまの表紙にも掲載、予想を超える反響を頂きました。佐藤健作さんはじめ「不二プロジェクト」の皆さん、相馬市の社会福祉協議会はじめ各種団体、相馬市職等NPO法人年輪等多くの皆さんの連携があったからこそ、相乗効果も生れ成功できた復興支援事業だと思います。
 今後も現地の皆さんとの交流を継続するとともに、介護職場の人材不足については、改善に向け様々な政策提言等の活動を展開したいと議論しています。
 
【「不二プロジェクト」相馬公演】
【相馬市訪問】


3. 男女平等の推進から地域のパパクラブ結成、子育ちを地域で支える

(1) 東京市ワークライフバランス労使宣言
 西東京市では、労使でワークライフバランス(以下「WLB」という。)を推進し、2010年3月31日労使で「ワークライフバランス労使宣言」を締結、「WLB」の推進を労使で宣言しました。労使の取り組みとして、子育て支援の取り組みに力をいれ、男性の育休取得推進に向け研修充実の取り組み等の活動を展開してきました。
 「男性職員の育児参加への取り組み」として始まった男性職員研修では、育児中の男性職員を対象とし、WLBの説明、育児休業取得体験談を始め、保育士による絵本の読み聞かせ、手遊びパパへの意識付けに関する臨床心理士によるプログラムなどの子育てに欠かせないスキルを実際に体験しました。子育て中の男性職員の語らいの場を提供、先輩パパとして市長を講師に招いて子育てについてエールをいただく等の活動でモチベーションの向上を図りました。その効果として、男性職員同士が繋がり、スキルをあげる機会が増加するとともに、職場の中で子どもに関すること、育児に関することが日常会話のなかに当たり前にでてくる職場風土の醸成は、所属長およびまわりの職員の理解の広がりという効果を生み出しました。
【読売新聞掲載記事】


(2) 地域に広がるパパ向け講座等市民との協働
 「労使宣言」では、「市民全体へ、そして社会全体へWLB理念の普及をめざします。」と宣言しています。私たちは、職員研修等で学んだ内容を、市民全体に発信する取り組みを実施しています。
 現在、市の事業として市民向けに行っているファミリー学級(第1子を授かったプレパパ・プレママを対象にした、出産・育児を安心して迎えるための教室)で、男性職員が先輩パパとして体験談やアドバイスを行う講師を務めています。2009年から2014年まで延べ102回98人の男性職員を派遣しています。
 また、職員研修を契機に、男性の育児参加を進める市民向け講座が企画され、その後、講座参加者を中心に男の子育て座談会、広報活動等を実施、それは地域でのパパクラブの発足へと発展しました。
 WLBの第1人者である渥美由喜氏に、西東京市男女平等参画推進委員長に就任頂くとともに、介護従事者向けの「WLB」講座の実施等市民全体、そして社会全体へWLB理念の普及をする活動が市内で飛躍的に前進するという効果もでている。現在は、パパクラブが「西東京市パパスクール」を開催しています。労使で始めた活動が、地域に広がり活性化していくという効果がでています。
 
【西東京市パパスクールの様子】
 


4. 環境、子育て、福祉、様々な課題を市民と協働で取り組む

 私たち西東京市職労は、市民との協働事業を大切に活動を展開してきました。
 毎年、新春旗開きには、共に活動している多くの市民団体の皆さんに参加していただきます。
 前述した取り組み以外にも、環境、子育て、被災地支援、福祉、平和等の課題に対して市民協働で取り組んでいます。環境問題では、多くの市民団体とともにアースデイを毎年開催、今年度は保育園、児童館、学童クラブの職員が中心となり、エコ工作、けん玉等むかし遊びコーナーを担当、地域の子どもたちに大盛況でした。
 障害者福祉をすすめる会の「スポーツを楽しむ集い」も毎年参加しています。

【2014三多摩メーデー】
【アースディ西東京inフェアー】

5. 市民とともに市職労が活動し学んだこと

 市民協働の活動を通じ、多くのことを学びました。
 第1に現場を知り、絶えず現場の声を大切することの大切さです。
 被災地でのニーズも、西東京市内の市民のニーズも日々変化します。「行政は、地域の中で暮らす住民のニーズに敏感になってほしい。そしてそのニーズに迅速に対応してほしい。」と言われました。
 日々変化するニーズを把握することの必要性を活動の中で再認識しました。
 行政改革の名のもと、現業職場等住民に近い職場の民間委託、指定管理者制度の導入が進んでいます。現業職場、公民館、保育、児童館等現場の再前線職場を直営で堅持することの必要性を改めて感じるとともに現場を守る活動を強めなくてはいけないと組合員と意志統一しています。
 第2に市民協働の実践の中で、市民と職員が繋がり、成長するということです。
 私自身、前述した市民との活動の中で、生活感覚、多様性の受容、コーディネート能力といったスキルを学ぶことができたと感じています。
 第3に今行政に求められる役割についてです。市民ニーズを実現していくためには、様々な機関が有機的に連携していくことが必要となります。行政には、コーディネート役が求められます。災害時は、特に日常的に培った能力が問われると思います。質の高い公共サービスの実現に向け、人をどう繋げていくのか、そのための、感性と能力を高めていく必要があると思います。
 職員が現場で汗をかき共に議論し考え、「地域の力」「人の力」を繋げていくという協働のまちづくりの実践を重ねていくことが「最後まで地域で暮らしたい」と感じるまちづくりにつながるということを学びました。


6. 西東京自治研センター設立へ

 以上のような効果を踏まえ、これまでの活動を継続的に実施する基盤整備のため、市職労としては、定期大会で、「西東京自治研センター」の設立を決定しました。
 この間の活動の中で見えてきた様々な課題を解決していくために、私たちは、政策提言できる能力、地域の中で責任を持って地域づくりに参加していく能力を高めていく必要があります。
 そのためには、継続的に学び、活動していく組織が必要です。そのために、現在、西東京自治研センター発足にむけ、準備を進めています。
 福祉、子育て、環境、生活支援、被災地支援、産業振興、平和等様々な課題を市民とともに学び、活動し、「住んでよかった。」と思える西東京市を市民とともに創っていく拠点としての自治研センターにしていきます。