2. なぜ私たちの職場には在日コリアンの仲間がいるのか
「朝鮮人強制連行・強制労働」の歴史を学ぶ
(1) 人権学習「松代大本営跡」へのフィールドワークへ
まず私たちは、被害にあった当事者の立場(気持ち)を考え、この問題を真摯に受け止めた上で人権問題に関する取り組みを強化するためにも、"なぜ私たちの職場には在日コリアンの仲間がいるのか"という視点から、在日コリアンの歴史的背景を学び、「朝鮮人強制連行・強制労働」を"肌で感じてみる"ということが必要であるという考えから、2012年5月13日(日)~5月14日(月)にかけ長野県長野市松代町にある「松代大本営跡」へのフィールドワークを開催することにしました。
事前準備として清掃支部執行委員を対象に「在日コリアンのルーツの一端を知るために」とする学習会を開催しました。NPO法人在日外国人教育生活相談センター・信愛塾(*3)の理事でかながわみんとうれん幹事の大石文雄さんを講師に招いて「松代大本営と在日コリアンの歴史を考える」と題しての学習会としました。大石さんは歴史を振り返りながら「在日コリアン(韓国・朝鮮人)は、日本と朝鮮との近現代史の中での植民地支配の結果であり、松代大本営地下壕は戦時下の朝鮮人強制連行(募集・館斡旋・徴用等)による労務動員によって造られた。このような歴史的背景を踏まえた上で、在日コリアンとともに生きる社会を築かなければいけない」と語り、講師の大石さんの在日コリアンとの出会いや、これまでの活動などについても語ってくれました。
(2) 5月13日(日)長野県松代へ
フィールドワークのガイドを長野市議会議員の布目裕喜雄さん、松代大本営ガイドクラブ代表の原山茂夫さんに依頼し、案内をしていただきました。
原山さんからの説明のなかで「この地下壕は朝鮮人の強制連行によって掘られている。日本の侵略と加害の負の歴史をたどることができる貴重な戦争遺跡だと考えています。しかし地元の皆さんにとってみると、朝鮮人差別が歴然として残っていて、30年前から15年ぐらい前までは"朝鮮人の方々を語り継ぐのはいかがなものか"という空気が非常に強くありました。いろいろな証言を集め、証言集を残す中でようやく地元の皆さんにも保存運動に一定の理解が得られるようになってきましたが、いまだに朝鮮人差別というのがこの地下壕を通じて、現代の問題として私たちに問いかけている」とも話されていました。
(3) フィールドワーク終了後の意見交換(以下は参加者の意見・感想です。)
・朝鮮人を強制連行し地下壕を掘らせてまでも、天皇を守らなければいけなかった(国体護持)という当時の状況を感じることができた。
・フィールドワークであらためて強制連行(労働)の過酷さが伝わり、現地に来ることに意味があると思った。自分だったらとても働けないと思った。
・戦争時における労働力(強制)を朝鮮に求めたことや、強制退去をさせられた地元住民に対して、差別されていたと非常に感じた。今後の松代はどのように反映していくのかと考えさせられた。
・強制連行(労働)の爪痕を見ていると、当時の劣悪な環境だったことをひしひしと感じた。現在でも近隣住民の中には、松代大本営を保存していくことに反対している人がいることに差別を感じた。
・「軍隊は国(天皇制)を守るが国民は守らない」という原山さんの話がとても印象に残りました。当時の技術(人力)で劣悪な状況下でこの地下壕を掘ったと思うと、圧倒された見学でした。
・被害者意識、加害者意識の双方をきちんと考えなければいけない。
・戦争に対しての謝罪・反省・補償はしないといけない。従軍慰安婦問題も事実を見ることが必要だと思った。
・松代大本営を保存する運動を、地元の高校生が始めたことは意味があることだと思う。
・自分の祖父も、ここで働いていたかもしれないと思うと感慨深いものがある。「天皇を守る」ためには、人を犠牲にすることが当たり前という考えは理解できない。地元住民にも差別意識があることは勉強になった。
・沖縄の方がイメージとしては悪かったが、松代は風化した所から掘り起こし、この問題を再び風化させないという気持ちが伝わってきた。
・このフィールドワークを通じて、知らないことは聴く。聴くことができるようにならないといけないと思った。
・「差別投書」が投函されてからも在日韓国・朝鮮人差別について知らない人はいましたが、フィールドワークを通じて知ることができたと思います。 |