1. はじめに
群馬県における結核・感染症対策は、医師、保健師、診療放射線技師、臨床検査技師及び事務が係わっているが、それぞれが技師会を組織しており、各技師会での研修や研究発表会等の取り組みは活発に行われてきたものの、職種間の交流や合同の勉強会は開催されてこなかった。
また、中核市保健所の担当は若く経験も少ないが、結核の発生件数は県内でも多く、その他の感染症についても中核市保健所管内では、希少な疾患の発生があり、経験不足に相まって対応が困難な事例が見受けられる。
そこで、保健所に勤務する結核・感染症担当者としてのスキルアップを図ることを目的として、県内で発生する感染症事例を基に勉強会を開催し、そこから得られた知見を基に研修会等で使用するスライド資料を作成したので報告する。
2. 内 容
(1) 国内の状況
結核は、戦中戦後、国内で大まん延し亡国病と恐れられた。その後の衛生状態の改善や結核対策、新たな抗結核薬の開発により劇的に減少したものの、昭和50年代に入るとり患率の減少傾向の鈍化や集団感染事例の報告等が問題となった。
(2) 県内の状況
平成24年における新登録結核患者数は、232人で前年の224人と比較し増加している。
近年の新登録患者数の推移(図2)を見ると、平成21年の214人を底に3年連続で増加している。
重症の肺結核患者である塗抹陽性肺結核患者(痰に結核菌が出ている状態)の推移(図1)は、増加傾向にあり、検査精度の向上もあると考えられるが、診断の遅れが示唆される結果である。
(3) 勉強会から得られたこと
結核以外の感染症においては、その種類も多く、よく見聞きするインフルエンザや風疹、食中毒等の報道によりメディアへの露出が多いO-157やノロウイルスについては、一定の知識はある。
それに対して結核は、発生件数が昔に比べると少なくなってきていること、メディアへの露出が少ないことから、県民は過去の蔓延のことは知っているものの、現在の発生は稀で終わった病気だと思っているのではないか。(資料1)
図1 新登録患者数-塗抹陽性肺結核患者割合年次推移 |
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図2 罹患率-塗抹陽性肺結核罹患率年次推移 |
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資料1 |
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(4) 研修会資料(スライド)の作成
多くの保健所のスタッフが当研究会に参加していることから、社会福祉施設等の研修会で使用する際の統一した研修会資料(スライド)を作成できないかとの意見を基に各保健所で使用しているスライドを持ち寄り統一したスライドを作成した。
今回、作成するスライドの趣旨を、聞いた者がその感染症及び感染機序を理解し、感染予防のための行動に移せること、また仮に感染、発病した場合には他者への感染を最大限防止することができることとした。
感染症の中でも、先ず結核から作成することとした。
(5) スライド(抜粋)
3. まとめ
近年、各担当者間の意見交換の機会が少なく、全体としての見解の統一が図られないままに放置されている実態がある。そのことにより、担当者の認識や知識の差が大きくなっているように思われる。今回、職種、自治体を越えて問題や情報の共有を行いながら、勉強会を行ってきた。その中で、知識、情報の共有を図り、その成果の一つとして統一した研修会資料(スライド)を作成した。
今後は、対応する感染症の種類を増やしていくとともに一般向けリーフレットを作成する予定である。
また、作成した研修会資料(スライド)を使い社会福祉施設や県民を対象とした研修会を請け負っていきたいと考えている。 |