【自主レポート】

第35回佐賀自治研集会
第12分科会 地域包括ケアシステムの構築

 大阪市職員労働組合環境保健支部(以下環保支部)では、公衆衛生にこだわった取り組みを行っている。
 本レポートでは、2007年から環保支部で取り組んできたイベントについて、当時の記録をもとに紹介したい。健康づくりという課題は範囲が大きく、細部が多様化しているので、最初の入り口部分を多様な主体と分担することや身の丈に合った活動を提供するということが、ポイントとして浮かび上がってきた。



公衆衛生ってなに?
健康づくり……NPO・団体・民間企業との連携で学んだもの

大阪府本部/大阪市職員労働組合・環境保健支部 平子 一彦

1. はじめに

 環保支部では、2007年度から支部諮問委員会などでの議論を踏まえ組織結集の軸を、「公衆衛生闘争の確立」「支部組合員の交流」として活動を進めることになった。
 公衆衛生闘争の確立にむけた具体的な取り組みとして、2009年4月に大阪市健康増進計画「すこやか大阪21」の「すこやかパートナー」に登録されたことを契機として、以下のとおり、民間・企業・団体などと連携も視野に入れた取り組みを開始した。これは、異なる組織との協働の経験およびそこで得られた人的ネットワークが、自治体の公衆衛生職場で「地域におけるコーディネーター」としての力量を高めることにもつながると考えたからでもある。

① 2009年6月27日(土) カゴメ(株)大阪支店と「支部健康づくり広場」を開催した。
② 2010年1月23日(土) カゴメ(株)大阪支店、ランナーズプラスの協力を得て「すこやか健康ジョギング・10kmラン」を長居公園周回道路で開催。(下記の写真は、すこやか健康ジョギング・10㎞ラン)
③ 2010年10月16日(土) 大阪府公衆浴場業生活衛生同業組合、(社)日本ウォーキング協会近畿本部の協力を得て、「すこやか街歩きウォーキング」を長居公園周辺で開催。
④ 2011年4月23日(土) 長居公園ウォーク実行委員会を立ち上げ、「すこやかパートナー協働事業長居公園ウォーク」として開催。しかしながら、3月11日東日本大震災が起こり、開催そのものを検討したが、被災地の復興を願い微力ながら支援することを実行委員会で確認して開催。
⑤ 2011年8月1日(月)から8月31日(水) ホテルヴィアーレ大阪・料理長に協力をいただき、「すこやかパートナー協働事業 Myおべんとう選手権(予選会)」と、その選手権を2011年10月8日(土)開催の大阪ヘルスジャンボリーの参加者の方に投票で決めてもらう、「すこやかパートナー協働事業 Myおべんとう選手権(決勝戦)」を大阪ビジネスパークで開催。
⑥ 2012年10月20日(土) 「10年後にちょっと気になる健康づくりと環境のパネル展示」・「加納ひろみミニコンサート・イン・大阪ヘルスジャンボリー2012」を長居公園で開催。
⑦ 2014年3月1日(土) 大阪市職駅伝大会において、カゴメ(株)大阪支店と協働で、「トマトのチカラで快走サポート プラス 野菜の上手な摂り方」を開催し、参加者の方に健康づくりのグッズの提供、健康づくりセミナーでは組合員・家族の健康づくりの気づきをはかった。

2. まずはやってみよう ~活動の紹介

(1) すこやか街歩きウォーキング
 まず、2010年10月16日(土)開催の「すこやか街歩きウォーキング」での大阪府公衆浴場業生活衛生同業組合との協働を紹介したい。
 きっかけは、「すこやかパートナー」の会議で、大阪府公衆浴場業生活衛生同業組合のアピールを聴く機会があったことである。そこでの意見交換で、銭湯をスタート地点にして、着替えて荷物を置き、ウォーキングやジョギングをして、銭湯にゴールして、お風呂に入ってサッパリして帰る、というプランを話していただいた。ウォーキングやジョギングをした後に、大きなお風呂に入って汗を流すことができるという、一挙両得の健康づくりのアイデアに感心した。
 労働組合の健康づくり活動と銭湯の取り組みという、まったく異なる活動がコラボできることに驚き、即座に「やってみます」と申し出た。
 この会議がきっかけで、公衆浴場組合から長居公園付近の銭湯紹介をしていただき、集合場所と歩くコースを考えて一番適した銭湯(つるがおか温泉)が決まった。

 

 当日は、日本ウォーキング協会の方にコースを作っていただき、先導もしていただきながら組合員がウォーキングを楽しんだ。


(2) すこやかパートナー協働事業長居公園ウォーク
 2011年4月23日(土)には「すこやかパートナー協働事業長居公園ウォーク」を開催した。
 当初は、組合員が長居公園の中をウォーキングできれば、という軽い気持ちでのスタートだった。
 ところが、実際に検討してみると、公園の利用や募集方法などかなりの負担が生じることが明らかになった。そこで、さまざまな団体とつながりを持ちながら、最終的には長居公園ウォーク実行委員会(参加団体:長居公園スポーツみどり振興グループ(長居競技場)、(財)大阪市スポーツ・みどり振興協会、セレッソ大阪、大阪市職・環境保健支部、(社)日本ウォーキング協会近畿本部、大阪府公衆浴場業生活衛生同業組合、NPO法人海・空・太陽、カゴメ(株)大阪支店、ランナーズプラス、ミズノ(株))という大きな団体が立ち上がることになった。
 実行委員会の活動は順調に動き出し、長居陸上競技場に本拠地を置くセレッソ大阪の協力で、試合会場に長居公園ウォークのチラシを配布することができることになった。チラシは2試合で配布させていただけることになったので、急きょ2万枚のチラシを印刷した。着々と準備をしていると、3月11日に東日本を襲った大震災が発生した。
 一時は、イベントそのものも中止した方がいいのではないかという空気になったが、実行委員会を開催して、協議をした結果、長居公園ウォークの開催は、東日本大震災直後でもあり、震災復興の一助になればと協賛いただいた企業・団体の方々との総意の元、参加費を震災復興の寄附にすることにし、大阪から元気を届けるというチャリティ・ウォーキングとして開催することとなった。
 開催当日は、土砂降りの雨だったが、300人の応募者のうち3分の2近くの方が参加していただけた。協賛していただいた方々とともに、多くのことを経験させていただけたイベントになった。

(3) Myおべんとう選手権
 2011年10月8日には、「Myおべんとう選手権」を大阪城ホールで開催した。
 ここでは、ヴィアーレ大阪が受付窓口になっていただいた。
 Myおべんとう選手権は、8月から募集をはじめた。当初、集まり具合が良くなく心配したが、募集期間の後半には多くのエントリーをいただき、Myおべんとう選手権を開催することができた。
 選手権は、健康と自然を楽しむ市民参加イベントである「大阪ヘルスジャンボリー2011」の会場で、来場者の方に投票をしていただき、投票結果を発表するもの。会場での投票総数は316件も投票をしていただいた。
 初めて開催することもあって、右往左往したが、ヴィアーレ大阪、カゴメ(株)大阪支店、NPO法人海・空・太陽の協力を得て、募集・選抜・投票・発表と選手権を無事に成功することができた。この選手権は、単におべんとうの優劣を競うことを目標にしているのではなく、食べること・作ることを通じて、食生活の改善など健康づくりのことを、改めて考えてもらうことが目的であり、参加者の反応も良好だった。

(4) 加納ひろみミニコンサート・イン・大阪ヘルスジャンボリー2012
 2012年10月20日(土)には「大阪ヘルスジャンボリー2012」(主催・大阪市、すきやねん大阪市民運動推進委員会)が、長居公園の自然史博物館などで開催された。
 環保支部は「すこやかパートナー」として2011年に引き続き大阪ヘルスジャンボリーに参加し、加納ひろみさんと田中ジョーさんのミニコンサートを開催することになった。
 特にステージを設けず、聴衆が公園の通路から聴くという、演奏場所としては、かなり厳しいものがあったので、コンサート開始当初は聴衆がほとんど集まらなかった。しかし、通りがかりの人びとが立ち止まるようになり、最終的には200人近くの聴衆が集まった。
 また、「10年後にちょっと気になる健康づくりと環境のパネル展示」と題して、原発事故に伴う放射能汚染による健康被害についてのパネル展示を行った。


(5) トマトのチカラで快走サポート プラス 野菜の上手な摂り方
 2014年3月1日(土)第6回市職駅伝大会で、支部のワークショップとしてカゴメ(株)大阪支店と協働で、健康応援セミナー「トマトのチカラで快走サポート プラス 野菜の上手な摂り方」を開催した。
 健康づくりのセミナーではなく、駅伝大会の中でのセミナーの開催で、走る選手や大会の日程との関係で、健康応援セミナーとしての条件は厳しかった。
 しかし、健康応援セミナーの出発点として、組合員とその家族の健康のサポートができればいいということでは、選手に参加賞として「かけるトマト295g」を提供して、セミナーを開催することやパネルなどで紹介することができたのは、大きな収穫だと考えている。
 環保支部はこの駅伝大会に、カゴメ(株)大阪支店とコラボして組合員向けの健康セミナーを開催した。カゴメ(株)大阪支店から、参加者に参加賞の提供があり、健康をサポートしているところをアピールしていただいた。

3. まとめ

 以上のように、環保支部では健康づくりを軸に、ランニング、ウォーキング、食べること、歌という様々なアイテムを駆使して取り組んできた。
 取り組みを通じて民間企業や各種団体、NPOと多くのつながりが持てたことが大きな成果となった。組合の支部レベルでの取り組みは人的・財政的にも限界があるが、このようなつながりができることによって、その限界を越えることができる。
 例えば、長居公園ウォークでは新聞広告、チラシの作製を行ったが、その印刷経費の負担などは、すこやかパートナーとして、原稿の企画・立案、印刷会社、配布方法などを分担して負担することで、公平感を保つというルールを作ることができた。それぞれの団体の特徴をお互いに知ることと、そのうえで協働できたことが、開催に向けた大きなモチベーションとなった。
 今後の課題として、イベントであれば一回限りのものになってしまうのだが、一回限りであっても、参加者に対して健康づくりをサポートするという骨格を持ったイベントづくりやターゲットを設定していれば、このイベントをきっかけにして参加者との交流やパートナーとのつながりを深め、労働組合内外の人的なネットワークをつくることと相まって、継続的な活動の受け皿となることを期待している。
 環保支部では、今後も健康づくりのイベントを続けていこうと考えている。健康づくりのすべてではなくとも、最初の入り口の部分を分担するのだという意識を持てば、参加者がここからスタートして次のステージに向けて進もうとする「身の丈に合った活動」を提供できるのではないかと考えている。
 すこやかパートナーで知り合った人たちは、それぞれの健康の分野でも思い入れが強く、スペシャリスト的な人たちであった。こうした大きなイベントが開催できたのも、やはり「人と人」とのつながりだと思っており、素敵な人たちと出会えたことが一番の収穫だった。健康づくりを通じて生まれた人的ネットワークは、今後の労働組合としての公衆衛生の取り組みはもとより、地域保健の業務においても広く活用できるのではないだろうか。