【論文】 |
第35回佐賀自治研集会 第12分科会 地域包括ケアシステムの構築 |
民間病院や民間企業の福祉サービス事業の参入が乏しい過疎化の進む地域において、公立病院の果たす役割は多岐に渡り、医療のみならず福祉・保健分野でも地域住民から大きな期待を寄せられている。公立八鹿病院職員組合では、1990年代より訪問看護ステーション、老人保健施設を開設し高齢化を見据えた地域医療に取り組んできた。今回、但馬地域の現状から当組合のこれまでの取り組み、今後の展望・課題について提言する。 |
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1. はじめに 但馬地域は、兵庫県の北部に位置し、豊岡市、養父市、朝来市、香美町、新温泉町の3市2町から構成され、管内の面積は2,133.5km2と県土の4分の1を占め、その83%を山林が占める過疎化の進む山間の地域である。但馬圏域においては、病院勤務医師等の減少により地域の医療提供体制の維持が危ぶまれており、但馬全体で継続的かつ安定的に医療を確保するため、各病院の機能分担や診療所、開業医との連携を地域全体でシステムとして取り組んでいく必要性から、2007年2月「但馬の医療確保対策協議会」の基本的方向性を打ち出し、効率的な診療と医療資源の有効活用に向けて取り組まれている。但馬全体で継続的かつ安定的に医療を確保するため、各病院の機能分担や診療所との連携についてシステムとして取り組んでいく必要がある。 2. 但馬地域の現状 (1) 但馬の市町別人口分布
(2) 一人暮らし高齢者(65歳以上)数と要介護認定者数
(3) 但馬の公立病院配置状況と医療の現状
但馬圏域には、9つの公立病院が開設されており、2007年2月「但馬の医療確保対策協議会」の基本的方向性として、但馬全体の医療を急性期2病院(豊岡病院・八鹿病院)と慢性期7病院(日高医療センター・出石医療センター・梁瀬医療センター・和田山医療センター・香住病院・浜坂病院・村岡病院)に分けて再編し、医師の集約を行っている。また、各病院において総合診療体制を採り、住民にも「かかりつけ医」をつくるなど啓蒙活動を行いながら医療資源が有効に活用できるよう取り組んでいるが、病院勤務医師の減少が顕著となり、診療科の休止や廃止、受け入れ患者数の制限など、地域住民への医療提供に支障をきたしているのが現状である。また、救急医療体制充実の必要性から、2010年度に兵庫県・京都府・鳥取県が共同運航する公立豊岡病院のドクターヘリ事業が開始され、2011年より全国初の試みとして関西広域連合に移管され、広い但馬地域を中心に半径50km圏内の救急医療を担っている。 |
(4) 但馬地域の訪問看護センター設置状況と現状
3. 公立八鹿病院組合の地域医療・福祉への取り組み (1) 取り組み概要
各事業所の2012年度の実績は以下の通りである。サービス日数、利用者数からもサービス提供側のマンパワー不足がうかがえる状況となっている。特に訪問看護においては、広い但馬地域を訪問する為、1日の移動距離が多い時で100㎞と移動時間を費やしてしまい訪問実績に結び付かない問題から、広い但馬地域を効率的に訪問できるようにステーション、サテライトを展開している最中である。 (2) 事業所別実績(2012年度) |
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4. 2025年に向けた但馬地域の包括的ケアシステムの課題 但馬地域では厚生労働省が目標とする、団塊の世代が75歳を迎える2025年に向けた地域包括ケアシステムを構築するとしているが、高齢化が進み、人口減少に歯止めがかからない状況からも、たとえ地域包括ケアシステムが構築されたとしても、需要と供給のバランスを保つことが困難な状況が但馬地域の現状から伺える。
5. 引用、参考資料 1)一般社団法人兵庫県訪問看護ステーション連絡協議会。 |