1. 伊万里市民図書館の概要
(1) 現状とサービス
伊万里市民図書館が開館したのは、1995(平成7)年7月7日、7が3つ並ぶ珍しくもあり、覚えやすい日である。延床面積が4,000㎡を超え、平屋建(一部3階)の建物は、人口約5万7千人の地方都市にしては規模の大きな図書館である。窓口はよくあるカウンター方式を改め、デスク方式を採用。机を低くすることで職員と利用者との敷居を下げ、直接本棚まで案内できるように工夫されている。さらに窓口を分散させ、図書館の中央に総合受付用及び一般書用のデスク、そして児童書コーナー、視聴覚資料コーナー、レファレンス(調査・相談業務)にそれぞれデスクを配置し、専門的知識を持った司書が常駐している。視聴覚資料に関しては特定のデスクでの借り受けとなるが、図書や雑誌については、どのデスクででも借受・返却・予約受付・所蔵場所の案内を受けることができるように利便性を高めている。
この図書館で働くスタッフは22人。4~6時間のパート職員2人と自動車図書館の運転手(委託)2人を除く18人が常駐のスタッフで、うち司書有資格者は13人である。しかしながら、市役所の正規職員は6人しかおらず、図書館長を含む8人は嘱託職員、4人は臨時職員である。図書館の規模に比べて、スタッフの人数が少ないが、後述する図書館ボランティアとの協働によって、様々なイベントや事業に取り組み、人数以上の働きを見せて図書館運営を行っている。
伊万里市民図書館の大きな魅力として、建物の独特の作り方が挙げられる。開架室の中央に立っている大きな木は一般向けの書架と児童コーナーを区切っている。やきものを焼くための登り窯をモチーフとしたおはなしの部屋もあり、書架の間にある座席や書斎をイメージした読書席、十進分類法と異なるテーマでグルーピングした書棚など、利用者目線での配慮が行き渡っている。さらに、図書館独自で集会室や会議室など、市民やボランティアが作業を行ったり、活動を発表するための施設を有している。公民館や文化ホールとの複合施設と異なり、館内全ての施設を直接図書館が管理することで、図書館資料とボランティアが結びつくような幅広い多様な活動が可能となっている。定期的に行っているイベントには、月1回程度開催している名画上映会、子ども向けのおはなし会、3ヶ月児検診の時に絵本をプレゼントするブックスタート、そのフォローアップとして開催している乳幼児向けの「おはなし012」がある。
2013年(平成25年度)の図書館の実績としては、蔵書冊数:38万2千冊(自動車図書館を含む)、貸出点数:50万9千冊である。これは、全国の同規模自治体で比べても高い数値となっている。また、年間決算額は約7千9百万円(正規職員の人件費を除く)。資料購入費は約1千8百万円である。
視察者も毎年多く、全国各地から伊万里の地を訪れている。開館してからはずっと年間200~300人の方が来館している。昨年4月に隣接する武雄市の図書館がリニューアルオープンしたことや、ちくま新書の『つながる図書館』(猪谷千香/著)での紹介が影響したのか、これまで以上に視察者は急増した。2012年(平成24年度)は31団体、315人が来館したのに対し、2013年(平成25年度)は159団体、900人の視察を受け入れた。もちろん、これについては車で約30分と距離の近い武雄市図書館の影響が大きいが、両方の図書館で視察を行った方々に話を聞いてみると、「武雄市まで図書館を見に行くのであれば、伊万里も見てきた方が良い」というアドバイスを受けたと言う。武雄だけでなく伊万里もコースに入れ、セットで視察を行っているとの話を聞くと、伊万里市民図書館の知名度が想像以上に全国に広がっているのを実感する。また、通常行政視察に来るメンバーといえば、市役所などの行政職員や図書館職員、そして議員の視察が比較的多いが、それだけにとどまらず、図書館建設を応援する市民団体や図書館でボランティアを行っているグループの視察も多いことが特徴である。
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伊万里市民図書館の天井が高い開架室。大きな木が一般
向けのコーナーと児童コーナーを区切っている |
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書棚が並ぶ一般向けのコーナー。書棚の間には座席があ
り、裏側には本のテーマ展示ができる |
(2) 新図書館建設までの過程
伊万里市民図書館が1995年に開館するまでは、市立図書館が中央公民館(現:生涯学習センター)の2階に設置されていた。1954年からすでに開館していたが、1967年に大水害による被害を受けたことで移転を余儀なくされ、1970年から公民館の一画を借りる形で運営されていた。当時の図書館の延床面積は216㎡で現在の約20分の1、蔵書冊数は約2万点で約18分の1であった。このように小さな図書館であったため、利用が少ないのも仕方のない話であった。
その後、1986年には「母と子の読書会」の会員やOBを中心として、『図書館づくりを進める会』が結成されて、「伊万里に図書館を」と市民運動を展開した。「自分の子どもや孫の世代に、こんな小さな図書館で良いのか」という思いを胸に、自費で当時の先進図書館を見に行くツアーを開催するなど、熱心な活動を行っていた。その成果が実り、1990年に当時の市長が新図書館の建設を決意。ついに図書館建設準備室が開設され、室長と職員が2人配属となり、図書館で働いていた3人と合わせて、計6人のスタッフで新図書館づくりがスタートした。
建設用地の選定から始まり、用地交渉を行って、コンペ方式による選定を経て、図書館を建設する業者が決定した。新図書館の設計者は、当初から市民と共に作り上げる気持ちを持った意欲的な人物で、市民と行政(図書館)と設計者との三者で意見を交わしながら、新図書館の設計が進められた。図書館建設懇話会では市民団体の代表が必ず入るようにして、図書館職員と話し合い、それぞれの意見を交わしながら協議を続けていった。実際に取り上げられた意見の中には次のものが挙げられる。
布作品製作グループからは「ミシンやアイロンをたくさん使うのでコンセントを多くして、作品の置く場所もほしい」→コンセントの差込口を多くし、納戸を備えて、出来上がった作品や道具を置くことができる。
朗読ボランティアグループからは「録音室には最低5人が入れる部屋が必要である」→6人が入ることができ、録音機器を備えた防音室を設置。
その他の意見として「採光のいい、中庭などのある図書館が欲しい。」→天窓を作り、書棚の場所に明るい空間を作りだした。「自分の家にはないので、書斎を作ってほしい。」→広めの机に電気スタンドを備え付け、コンセントの差込口も用意し、窓の外に緑が眺められる席を設置した。
また、市民に対しては「図書館づくり伊万里塾」と銘打った公開講座を開催し、設計者を始め、大学教授や先進的な図書館の館長などを招いて講義を行った。このように市民も図書館の機能や役割などを学ぶことのできる機会を作って、一緒に新しい図書館を作り上げていく意識を高めていった。
図書館を建設する前に、本当に利用されるのかどうか、と心配する声も上がっていた。そこで、東京都日野市の事例を参考にして、新図書館建設の前に自動車図書館を導入し、市内を巡回させることになった。伊万里市は市域が約255㎡と広く、平成の大合併以前は佐賀県で最も面積の広い自治体だったこともあり、全域平等のサービスを行うためには、自動車図書館の導入は必要不可欠でもあった。
1991年、市民からの公募により「ぶっくん」と名付けられた自動車図書館が走り始め、関係者の心配をよそに順調に利用を伸ばしていった。2年後には「ぶっくん2号」が導入されて、2台体制で66ヶ所のステーションを交互に巡回するようになり、小さな本館での貸出冊数と同じくらい利用されるようになった。このことから本を借りられる環境を整えると、市民が大いに利用することが判明し、新図書館建設に弾みがつくこととなった。
図書館が完成するまでの間に、市民が大きく関わる出来事が2つあった。1つ目は1994年2月の起工式である。一般的には行政と建設業者などの関係者のみで行われる起工式に『図書館づくりをすすめる会』の会員を始め、一般市民が200人参加した。式典の後、設計者は更地に縄張りの線が引かれた場所を市民に説明しながら案内していった。また、市長が甘党であったことから、市民が炊き出しでぜんざいを作り、参加者全員にふるまった。新図書館の芽生えとも言えるこの起工式の日をいつまでも忘れまいという思いから、その後も「図書館めばえの日」のイベントとして、毎年2月に来館者にぜんざいをふるまうイベントを継続している。
もう1つは10月に開催された中間見学会である。建物が出来上がり、内装工事に取りかかる前に市民も参加できる見学会を開催した。安全対策のためにヘルメットをかぶり、建物の中を設計者が案内していった。参加者の中には赤ちゃんを連れた母親の姿や、着物姿にヘルメットを着用して参加した日本舞踊の師匠である女性の姿もあった。図書館を完成前から見てみたいと、市民の誰もが関心を持っていて、それに応えるように行政や設計者からは計画や進捗状況などの情報を公開していた。これは市民にとっても嬉しいことであり、我が町の図書館を大切に育てていこうとする気持ちが生まれてくる要因となった。
この他にも市民の協力は続いていた。自動車図書館に積載するために発注した大量の本に、透明のブックカバーやバーコードを貼付する装備の作業は、職員だけではとても追いつかなかった。そこで、連日ボランティアの市民が加勢して、作業が進められた。また、4月に建物が完成した後、旧来の図書館から段ボール箱に入れられた蔵書や新刊書を新しい図書館に運び、本棚に並べるという作業にも、市民や学生が約200人ボランティアで参加した。職員の指示に従い、段ボールを仕分けし、本を並べていく作業に協力した。
このように市民参加による図書館づくりを経て、1995(平成7)年7月7日、市民が期待に胸を膨らませていた伊万里市民図書館がいよいよ開館を迎えることとなった。
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起工式には200人の市民が集まった。2月の寒い時期で
もあり、全員にぜんざいが振る舞われた |
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ヘルメットを被って市民が中間見学会に参加。この時も
設計者が説明し、新図書館への期待が高まった |
2. 市民との協働
(1) 図書館友の会の活動
建物が建ってからが本当の図書館づくりの始まりである。市民活動として熱心に活動を続けてきた『図書館づくりをすすめる会』だが、図書館が開館した後で会員にアンケートを行い、引き続き活動を希望した者が残って『図書館フレンズいまり』を結成した「協力と提言」を合言葉に結成された、いわゆる「図書館友の会」である。プロ野球のファンクラブやサッカーJリーグのサポータークラブのように、有志が集まって支援するという団体の図書館版であるが、欧米の図書館では当たり前のように存在しても、日本ではまだまだ馴染みがない。
この活動のポイントは自立・自活することで、図書館や行政からの助成金を当てにして活動するのではなく、資金を自分達で稼いで活動を続けることが重要である。そして、図書館フレンズいまりは現在まで安定した運営を続けている。お金を生み出す秘訣は会員の多さとその手法にある。現在の会員は400人を超えており、1,000円の年会費には「お金だけでも支援したい」という会員達の気持ちが込められている。また、古本市を開催して、寄贈された本や図書館から除籍された本を譲り受けて安く市民へ販売している。さらに、図書館内に設置されている自動販売機の利益も図書館フレンズの収入源である。図書館には一定の電気料を支払っているが、それを差し引いても十分な収入がある。
この他にも、図書館を支える会として発足してから、「協力と提言」をモットーとして様々な活動を続けている。図書館を支援することはもちろんのこと、図書館のために活動しているボランティア団体へ助成金を支給するなどの支援も行っている。また、市民のネットワークを生かし、口コミを活用した広報活動もイベント告知などでは強力な支援となる。さらに、月1回開催している役員会には図書館長を招き、情報伝達や意見交換を欠かさないようにしている。活動の拠点は図書館内にあるフレンズコーナーで、その場所は玄関から入ってすぐの、いわば一等地にあり、これは設計者の意向で配置されたという。
現在は5つの委員会を結成し、それぞれ必要に応じて独自の活動を展開している。①グッズの販売などを担当するフレンズコーナー委員会、②見学者の対応や学習会などを企画するインフォメーション委員会、③プランターの花苗を入れ替えたり、図書館職員の手が届かない所までも掃除する美化委員会、④フレンズの活動を年4回、会報を発行して紹介する広報委員会、⑤寄贈された本の整理・販売を行う古本市など、様々な行事を開催するイベント委員会。なお、図書館フレンズが主催するイベントには委員会の枠を超えて役員全員で取り組むようにして、企画・準備・片付けまでを自分達の力で行っている。前述の古本市は年に4回開催され、図書館☆(ほし)まつりの中で表彰式を行う「俳句まつり」には一般の方だけでなく市内の小・中・高校にも呼びかけ、3,000句以上が集まり、選定に協力している俳句の先生からは羨ましく思われている。正月には子ども達を集めての新春かるた会を開催し、そして2月には「めばえの日」のぜんざい会がある。この日は毎年無料でぜんざいを来館者に振る舞っているが、昨年は300杯分を準備されたものの、予定の時間よりも早くに配りきったとの話であった。
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年4回開催される図書館フレンズいまり主催の古本
市。市民から寄贈された本を安価で販売 |
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図書館☆まつりで行われた俳句まつりの表彰式。
小学生から大人まで、世代別に賞状が渡される |
(2) ボランティアの活動
このような図書館フレンズの活動の他にも、読み語り(読み聞かせ)で子ども達に物語の楽しさを紹介したり、大きな布の作品を共同で制作したり、草刈機を背負って月に一度、庭の草刈を行うなどのボランティアに参加している市民グループもいる。さらに、図書館専属の合唱団を創設し、最近ではあまり聴かれなくなった童謡や唱歌を後世に歌い継いでいこうと週に一度、練習している方達もいる。他のボランティアグループも合わせると、計12団体が図書館で活動している。メンバーは高齢者の方が多いが、それぞれに「やりがい」や「生きがい」を持って活動に従事しているため、長い期間活動を続けている方も多く見受けられる。図書館フレンズにも入会して掛け持ちしたり、いずれかの活動のみに集中したりと、自分達が望む方法でボランティア活動に参画している。
活動をしている時は図書館業務の下請けをするという意識は全くなく、自発的に図書館の清掃や草刈りを行って美しくしたり、行事の内容を盛り上げたり、様々な場面で協力している。また、冷房が効きすぎるということで膝掛けを作り、自分の分だけでなく他の来館者の分までついでに数枚制作して、それを寄附したボランティアの方もいる。
(3) 職員とボランティアの関係
図書館職員は協働のスタンスを保ちながら、日々の業務に従事しているが、必要に応じて、ボランティア活動のサポートを行っている。これまで紹介してきたボランティア活動や図書館フレンズの取り組みの中には、図書館の業務は一切入らない。あくまでも必要な業務は職員が行うものであり、ボランティアが肩代わりするものではない。なので、窓口業務や排架作業、書架整理、選書などは全て職員が行っている。特に窓口での業務は利用者のプライバシーに関わるものが多いので、ボランティアが入る場所とはならない。
もちろん、この原則を図書館フレンズの会員やボランティアがきちんと理解して、一線を越えないことを認識していることも重要である。実際にボランティア自身が、自分達の活動範囲の中で協力していることも、協働がうまく進んでいる要因である。特に、フレンズとの関係は「車の両輪」に例えられる。お互いが適度な距離を置いて、同じ方向を向いていればきちんと前に進むことができる。しかしながら、仲良くなりすぎて車輪の距離が短くなると一輪車となってしまい、バランスを崩すした時に倒れてしまう。また、距離が離れすぎたり、違う方向を向いてしまうとうまく前へ進むことができなくなってしまう。この程良い間隔こそが、市民との協働の秘訣と言えるのかもしれない。
3. 子どもの読書活動の推進
(1) 自動車図書館の役割
「子どもたちが本を読まない社会、国に未来はない。」子どもの読書を進めていくことも図書館の役割である。市域が広い伊万里市では、自ら図書館へ出かけることができない子どもの方が多い。もちろん、保護者や家族に連れられて来館する子どももいるが、児童数全体と比べると少ないのが実情である。小・中学校であればそれぞれに学校図書館が設置されているので、本を読んだり、借りたりと利用することはできる。しかしながら、未就学児の頃から絵本や物語を好きになってもらうことが、読書習慣につながることから、伊万里市内の幼稚園・保育園に自動車図書館が訪問し、大人と同じように本の貸出を行っている。1991年の巡回開始以来、2週間に一度巡回してくる自動車図書館「ぶっくん」は、子ども達のお気に入りとなった。また、同乗する司書が出前おはなし会として子ども達に絵本や紙芝居の読み語りを行い、本だけでなく物語を届けることで、さらに親しみが湧いているようである。
幼稚園や保育園を卒園した子ども達はそれぞれ小学校へ入学するが、そこにも自動車図書館は巡回している。すでに本を借りることに慣れている新入生は違和感なく、自分達の読みたい本を探し、借りていく。また、小学校では学級ごとに本を貸し出す「学級貸出」にも取り組んでいる。係になっている児童が巡回に合わせてコンテナを持ってきて、自分達の読みたい本をどんどん選んでいき、学級の人数分の本を借りていく。コンテナに詰められた本をそのまま教室へ運んでいき、休み時間や「朝の読書」の時間には自由に読むことができる。学校図書館がなかなか整備できない現状を少しでも改善するべく、学校の先生と図書館職員が話し合い、実践を繰り返しながら考え出した一つの団体貸出である。
(2) 「家読」の推進
10年前に隣県で小学生女子が学校で同級生を殺傷するという事件を受けて、市長が子ども達の健全育成と安全を守るために「いじめなし都市宣言」を発表した。そこで、子ども達の心と体の健康を取り戻すための具体策として挙げられたのが「家読」である。体の健康については、ちょうど「食育」ブームが起きてきたことから実践につなげられたが、当時は心の健康についての具体策を持っていなかった。
ある日、市長から図書館へ電話があり、自分が本を読んでいたら「家読」という一つの家庭読書のスタイルが紹介されていたので、それを図書館でできないだろうかという相談があった。早速、市内の黒川町をモデル地区と定めて、試行錯誤しながら家庭での読書に取り組んでいった。元々、地域ボランティアが盛んな地区であったことから家読に関しても協力的で、公民館が中心となり、学校・家庭・地域が連携して様々な取り組みを通じて子ども達の読書推進を図っていった。
2009年には、家読を最初に取り組み始めた3つの自治体から首長が集まり、「第1回家読サミット」を伊万里で開催した。そこで、黒川町民が作った家読のテーマソング「こころつないで」が発表されている。その後も伊万里市内の各地域で家読の取り組みは進んでいき、黒川町の他にも地域ぐるみのイベントである「家読フェスティバル」を開催する地区も出てきている。いまや家読は伊万里から全国に広がっており、「朝の読書」に次ぐ全国共通の読書推進活動へと徐々に浸透してきている。ちなみに、伊万里市では第3日曜日が家庭の日であることから、市長がこの日を「家読の日」と定め、学校や家庭でも家読の取り組みを進めている。
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自動車図書館の巡回に合わせて行っている学級貸出。
係の児童が学級の人数分の本を選んで借りていく |
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家読のテーマソング「こころつないで」は全国で
開催される家読イベントで歌われるようになった |
4. 地域教育へのチャレンジ
(1) 住民の知的欲求に応える
図書館本来の役割として、あらゆる分野の資料を収集し、保存しながら、住民の知的欲求に対応するべく的確に資料を提供することがある。本と人を結びつけながら、この役割を支えているのが図書館司書である。しかしながら、時代の変化に伴い、図書館のあり方も変化してきている。これまでの読書推進だけでなく、社会人のための課題解決やビジネス支援のために、レファレンス(調査・相談業務)に力を入れて、図書館が住民の役に立つようなサービスを展開している。
過去には、やきもので万華鏡や万年筆を作ることに成功して、新たに起業した方や、小型の水力発電や風力発電を開発して、自分で特許を申請し、事業所を立ち上げた方が現れたりしている。また、「織田信長の絵を探している」という要望に対して、様々な種類の信長の絵を図書館資料から提供すると、数ヶ月後に自ら描いた信長の絵が岐阜市のコンテストで入賞し、表彰式に出席してきたと報告された方もいた。
このようなレファレンスの事例については、国立国会図書館が提供している「レファレンス協同データベース」に参加することで、住民から相談を受けた様々な課題や質問に対し、資料を使って回答した事例をインターネット上に紹介している。こちらに情報を多く寄せることで、全国からアクセスが高まったということで、国立国会図書館からお礼状をいただいたこともあった。徐々にではあるが、図書館が生活や仕事の役に立つという評価が上がってきていることが感じられている。
(2) ひとづくり・まちづくりを支える図書館
「すべての人の成長(自立・自律)と成熟、自己実現を支える教育施設こそが図書館である。」
これは、現在掲げている図書館のミッションである。つまり、図書館はひとづくり・まちづくりを支え、自らも成長する施設であることを謳っている。読書推進や課題解決は一つの手段であるが、本を使って人の成長を支えることこそ図書館の使命であると考えている。実は図書館を建設した時に改めた設置条例の中にも、このことについて記している。
伊万里市民図書館設置条例 第1条
伊万里市は、すべての市民の知的自由を確保し、文化的かつ民主的
な地方自治の発展のため、自由で公平な資料と情報を提供する生涯
学習の拠点として、伊万里市民図書館を設置する。
地方自治体では公共サービスの一環として図書館運営を行っているが、その目的や使命が明確にされていなければ、活動の軸がぶれてしまう。地域教育こそ地方自治体が主体性を持ち、住民を支えていくために必要である。だからこそ公共サービスとして行われるべきであり、その大きな役割を図書館や司書が担っていると考えながら、日々の業務に従事しているところである。
伊万里市民図書館 過去3年間の統計 |
項 目 |
2011年度 |
2012年度 |
2013年度 |
伊万里市の人口 |
57,440人 |
57,386人 |
57,096人 |
登録者 |
36,742人 |
37,776人 |
38,799人 |
登録率 |
64.0% |
65.8% |
68.0% |
利用人数 |
95,434人 |
98,032人 |
109,205人 |
貸出点数 |
507,596点 |
515,161点 |
509,641点 |
市民1人あたり貸出点数 |
8.84点 |
8.98点 |
8.93点 |
ぶっくんのおはなし会 |
499回 |
446回 |
505回 |
予約・リクエスト |
8,252件 |
9,081件 |
9,010件 |
レファレンス |
1,069件 |
424件 |
635件 |
視察人数 |
44件
365人 |
31件
315人 |
159件
900人 |
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伊万里市教育委員会「2012年度~2014年度 伊万里市の教育」 |
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