【自主レポート】 |
第35回佐賀自治研集会 第13分科会 自治体からはじまる地域教育へのチャレンジ |
私たち給食調理師は、調理施設での業務となり地域住民との接点はほとんどありません。しかし、調理師だからといって調理だけすれば良い時代ではありません。公共サービスの担い手として、給食を通じた食育はもちろんのこと、調理施設の外で生産者や地域住民との交流を進めることにより、子どもたちに安全でおいしい地元の食材を使った給食を提供することが必要だと考えています。 |
|
1. はじめに 津和野町の小学校・中学校・保育園の給食調理業務は、町の職員が行う「直営方式」により運営されています。学校給食を提供する施設は「津和野町学校給食センター」と「日原共同調理場」の2施設で5つの小学校と2つの中学校の子どもたちに給食を提供しており、保育園給食は4つの保育園でそれぞれ給食調理業務を行っています。 2. 夏祭りを通じた地域住民との交流
調理師部会では、部会の活動について話し合っているときに、今までは「田舎ではありえない」と思っていた給食調理場の統合、民間委託、PFI、指定管理者制度の導入などの実態を聞き、「ありえない話ではない」ということを再認識しました。自分たちの職場でも起こり得る身近な問題としてとらえ「どのようにしたら自分たちの仕事を理解してもらい、職場を守ることが出来るのか。」幾度となく話し合いを重ねる中で、普段の業務のほとんどは施設の中で行うため、地域住民との交流がないことが問題として上がってきました。そこで、毎年開催される「町の夏祭りに出店してみては?」という意見があり、「地域住民との交流」「給食のアピール」の2つをテーマに調理師部会として夏祭りの出店に取り組むことにしました。また、合併してから交流が少なかった津和野町給食職員労働組合にも取り組みの趣旨を説明し、協力していただけることになり、この機会に2つの組合が初めて一緒に活動することになりました。 この間の取り組みで得た収益は、町内の図書館や保育園さらには東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市の小学校などに寄付することとしました。寄付に当たっては直接現地に行って品物を手渡し僕たちの思いを伝え、津和野町出身の安野光雅先生の絵本と学校で自由に使いやすい図書カードを寄贈しました。被災地の様子や被災された小学校の先生のお話など組合員に報告すると「今後も被災地のためにできる限りのことをしたい」とみんなが口にし、来年以降も被災地に寄付をしていくことを確認しました。 |
3. 地域と子どもたちのために 津和野町の学校給食では「地産地消」に取り組んでいますが、保育園の給食ではその取り組みが行われていませんでした。そこで、私が働く保育園では子どもたちのために安全で新鮮な食材を給食に取り入れておいしい給食の提供に取り組むことにしました。さらに農家の方の「やりがい」に繋げていければとの思いから農家の方に直接お話しをし、地元の新鮮な食材を納めていただくことができました。昨年の後半から試験的に行い始めた取り組みですが、現在では3軒の農家のご協力により子どもたちに毎日新鮮な野菜を使用した給食を提供しています。また、毎朝届いた食材を写真に撮り、生産者の名前と食材の掲示も行っています。給食を食べる前には子ども達に写真を見せて、「今日給食で使用した食材は、○○さんの○○です」と報告しています。今では子どもたちは、生産者の名前や食材の名前を覚え、生産者の方が納入するときには「いつもありがとう」や「今日の野菜は何?」と声をかけ話をしています。生産者の方も声をかけられてとてもうれしそうに話しておられます。このような取り組みが地域に根ざした公共サービスにつながると確信しました。 4. 食育の取り組み 津和野町の食育活動は県内でも進んでいるとはいえません。しかし、町内で飲食店を経営されている方々は「子どもたちに食の大切さ、生産者の気持ちを知ってもらいたい」という思いからでボランティアで食育の授業を行っています。現在津和野町内で授業を行っている方は5人おり、その中で私も一緒に活動を行っています。 5. 課 題 現在は津和野町公企現業労働組合単独の活動になっていますが、津和野町給食職員労働組合と協力して活動できるように取り組んでいかなければいけません。しかし、雇用体系の違いや、賃金、労働条件の違いなどさまざまな課題があり、連携した取り組みに至っていません。給食調理業務に携わる者として、地域の子どもたちにより良い給食を提供したいという気持ちは同じだと思います。時間はかかるかもしれませんが、2つの組織が一丸となって地域貢献に取り組んでいくことで、給食の良さをアピールすることにつながり、さらには、自分たちの働く職場を守ることにもつながると考えています。 |